現の境（うつつ の さかい）

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「もしもし、どうしたの？」

「あ、今井さん。ゴメン、こんな時間に。今、大丈夫？」

「全然良いよ。珍しいじゃん、ユッチから電話して来るなんて」

「ああ、うん、ゴメン」

「良いって。で、どうしたの？ 放課後した部活の相談？ あ、何なら恋愛の方でも良いよ～」

「いや、そうじゃなくて、その・・・」

「？」

「かなり前の話しなんだけどさ」

「うん」

「オレが、その、盗撮を疑われた時、有ったじゃん」

「え？ ああ、うん、まあ」

「あの時――あの時さ、だいぶ前から噂になってたらしいけど、それって、今井さんも知ってた？」

「・・・・・・うん。何か、そんな話をしてるの、聞いた事が有った。でも、絶対そんなのオカシイって思って」

「うん」

「やっぱ、あの時、早めにユッチの耳に入れといた方が良かった？」

「あ、いや、それはどうだろう。聞いてても、どうせオレなんか、どうしよう無かったと思うし」

「でも――」

「それよりなんだけど、オレが疑われてた時、今井さんはよく助けに来てくれたよね」

「ああ、うん。友達が、ユッチが騒ぎに巻き込まれてるって教えてくれて、それで行かなきゃって思って」

「あれ、スゲエ助かったし、嬉しかった」

「それは――良かったけど、どうしたの急に？」

「いや、ふと思ってさ。あの時の礼を言って無かったなって。だから――ありがとう」

「う、うん。どういたしまして――あは、何かめっちゃ変な感じ」

「そうかな？ そうかもね」

「はははは」

「今井さんは、俺の事、信じてくれてたんだよね」

「そりゃあね。だって、ユッチがそんな事する訳ないじゃんって思ってたよ。あ、ただ・・・」

「ただ？」

「・・・・・・」

「？」

「ゴメン、ユッチ」

「え、あ。な、何？」

「本当に、百パーって言われると、そうじゃ無かったかも知れない。もし、万が一って、思っちゃって、ちょっと不安になった。でも、その自分が許せなくて。それが、今までずっと気になってた。だから――だから、ゴメン」

「・・・・・・」

「・・・ユ、ユッチ？」

「あ、ああ、うん。でも、大丈夫だから。全然、そんなの気にしないし」

「うん、でも」

「オレは、今井さんが来てくれただけで有難かったんだ。だから大丈夫。ありがとう」

「・・・ゴメンね」

「良いって。あ、まあオレが聞きたかったのってそれだけだから」

「あ、うん」

「もう遅いし、そろそろ寝るよ」

「そう？ そっか。じゃあ、オヤスミ」

「うん。オヤスミ、なっちゃん」