エピローグ

 こんにちは親愛なる読者のみなさま。私です。ワンダーランドの紳士にして新人探検家のハルです。


 師匠の真似をして、私も記録をつけてみることにしました。と言っても日記のようなものですけど、でもこうしていれば師匠に近づけるような気がするので頑張ります。


 さて、大魔道祭りから一週間が立ちました。私が眠っている間にとんでもないことが起こっていたようです。何でも師匠の国から悪魔がやってきたとか。怖いですね。そいつは師匠がやっつけてくれたのでみんな無事でしたが、肝心な時に寝ているなんて恥ずかしいです。次こそはばっちりと目を覚まして、自慢のバリツで敵をやっつけられるように毎日特訓です。


 それとそんな悪魔が来たので、優勝者の名誉。メナスとの対決は流れてしまいました。でも不思議と悔しさはありません。きっといつかあの言葉を言える日が来る。そんな気がするんです。


 あの後王の区域からスカウトがかかりました。私のほかにはカリンちゃんやシズネちゃんにもお誘いがあったようです。


 せっかくのありがたいお話だったんですけど、私は断りました。だって王の区域には師匠がいませんし、それってとってもさみしいことですから。そう言ったらシズネちゃんも断ると言いました。彼女とは今もいっしょに暮らしています。


 カリンちゃんは……わかりません。もともとスカウトをめあてにしていた様子はなかったので、受けても断ってもおかしくないようなきがします。

 ただ、私としてはちょっとだけ断ってほしいなという思いがあります。せっかくあの試合で、カリンちゃんの笑顔が好きだって気づけたので、これからはもっと近くで仲良くしたいんです。


 あの試合は私たちの長い長いお付き合いの最初の一回に過ぎなくて、これから先ずっと戦うことになるのかな、なんて根拠もなく思っていたりもします。そうだったとしたら強力なライバルです。次は勝てるかどうかわかりません。


 師匠も言っていました。あの時私が勝てたのはカリンちゃんが天才にまかせて技を知らなかったからだと。そして私に負けた今、彼女は技を得て、今よりもっと手が付けられないほど強くなっているだろうと。私は楽しみです。次に会ったカリンちゃんはずっとずっと強くて素敵な人になってると思うから。


 日記ですから今のこともかかないといけませんね。


 私と師匠は今ワンダーランドをでた魔獣区域の一画にやってきています。

 イギリスの悪魔が来て以来、師匠は旅行者について調べはじめました。なんでもワンダーランドでも気づいていない時空の穴があるのかもしれない、と。今回もその調査のいっかんです。

 私にはむずかしいことはわからないので、とりあえず師匠の背中を追いかけています。師匠のサポートをするのは弟子の使命ですから。


 日差しはあたたかく、風は土のにおいがします。

 これまで危ないといわれてなかなかこられなかった場所でも、師匠と一緒ならば怖くありません。師匠と会う前まで、学園の授業で来たときはとても心細かったのに。さすが師匠です。


「おおい、ハル。こっちに来てくれたまえ。そろそろ休憩にしよう。シズネのサンドイッチの用意を頼む」


 師匠の呼ぶ声がします。日記はここで一度中断させてもらいますね。


 では読者のみなさま。またどこかでお会いしましょう。

 

 私と師匠の冒険はまだはじまったばかりです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バリツ・イン・ワンダーランド @berie

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ