箸休め 勇者爆誕

 この世界には〈魔海〉と呼ばれるアビス海を取り囲むようにして四つの大陸がある。東のアルマンデ、西のベシャメラ、南のヴルート、北のエスパネイルだ。


 世界の中心、絶海の真ん中に『城』を構えた魔族は、そこから各地に手勢を派遣し、本格的な侵略行為を開始した。


 その勢いはすさまじく、攻め入られた街や国は為す術もなく征服されていった。

『暇潰し』などというふざけた理由で戦争をする魔族とは話し合いも通じず、このままでは大陸全土が侵略者の手に落ちるのも時間の問題……。


 ――そう思われていたときである。


 この世界に旧くよりおわす神霊、六大元素の精霊たちを束ねる〈精霊王〉カレイムが持てる力を結集し、一振りの『剣』を創造。


 邪悪なる魔を打ち払い、世界に光をもたらさんとする神の剣を、たった一人の人間に託した。


 聖暦一八九三年、六の月八日。


 並み居る候補者の中から精霊王より選ばれし、類稀たぐいまれなる才を持つ若者。

 世界に平和を取り戻すべく誕生した『救世主』のことを、人々はこう呼んで讃えた。強大なる侵略者に対し、臆せず立ち向かう勇敢な者――


 即ち〈勇者〉と。

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