【番外編】マグリナ様による魔蟲種解説

 さて、そろそろ物語も終盤になってきたな。

 ここから先は様々な魔蟲種アラクニドが一気に登場し、大激戦が繰り広げられる予定だ。

 私も腕が鳴る。読者も私の活躍に期待しておけ。


 それに先立って、今回はここまでに登場した魔蟲種を再確認するぞ。魔蟲種は種類が多いからな、どんなヤツがいたか忘れかけている読者もいるかもしれん。


 私から読者に向けての特別サービスだ。

 メモの用意はいいか?






     * * *


 まずは、小鬼蟲ゴブリンセクト系魔蟲種の説明からしようか。

 あらゆる環境に適応した魔蟲種群で、森林から荒野まで様々な場所に生息している。

 エメラルドみたいな複眼がこいつらに共通する特徴だな。


小鬼蟲兵士ゴブリンセクト・ポーン

 小鬼蟲のなかで集団的に人間を狩るヤツらだな。何十匹もの群れを形成して行動する。我々を見つけると取り囲み、全方位から同時に飛びかかってくる。弱いヤツらが考えそうな戦法だ。

 ヤツらの主な武器は手足に生えた鋭利な爪。

 あちこちに生息しているから農民や商人からの被害報告が多い。

 名前の由来は昔のおとぎ話に登場するゴブリンという肌が緑色の小人から来ているらしい。小鬼蟲のエメラルドみたいな目玉がそいつらを連想させたんだろうな。


小鬼蟲騎士ゴブリンセクト・ナイト

 兵士よりも筋力が優れていて、ガッチリとした成人男性ほどの大きさがある。

 背中の甲殻の形状が騎士のマントに似ていることから名付けられた。

 魔蟲種にしては珍しく、人間のように武器を扱うのが特徴だな。槍、剣、斧……なかにはボウガンを扱うヤツまでいるから要注意だ。


小鬼蟲戦車ゴブリンセクト・ルーク

 飛行するタイプの敵だな。太った蝿のような体格で、空中で腹から光球フォトンをバンバン撃って来る。対空兵器を装備していない状態で出会うと厄介極まりない。

 ここまでくるとゴブリンでも何でもない別の生物のような気がするが、複眼はエメラルド色なので小鬼蟲に分類されている。


 余談だが、別作品の設定だと戦車ルークは仲間をほぼ無限に呼び出すテレポーター的な存在だったのだがな、この作品では色々と調整が入ったんだ。


小鬼蟲女王ゴブリンセクト・クイーン

 小鬼蟲系魔蟲種の中では最も強い。甲殻が厚く、怪力も凄まじい。自重の倍以上ある岩石も持ち上げる姿も報告されている。巨人のような化け物だ。

 とにかく狂暴で、あちこちに甚大な被害を与えている。確認されている個体数こそ少ないが、一度暴れ始めると手を付けられない。並みの兵士では傷一つ与えることはできないだろう。


 ちなみに、チェスの駒のように【小鬼蟲僧侶ゴブリンセクト・ビショップ】と【小鬼蟲猛王ゴブリンセクト・キング】というヤツもいるのだが、こいつらは特に出番が思いつかなくてボツになった。







     * * *


 その次、環境適応型魔蟲種だ。

 生息区域が限られており、その環境に特化した戦法で相手を追い詰める敵だ。


蚯蚓災蛇ワームヒュドラ

 ミミズ型の巨大魔蟲種。乾燥した大地に生息し、地中を凄まじい速度で移動する。

 獲物を捕食する際に首から上を地上に持ち上げて、蛇のように裂けた口で噛み付く。聴覚が発達しており、遠くからでも敵の振動を察知できる。


粘体蛞蝓スライムスラッグ

 ナメクジみたいな小さいヤツだ。体の表面は粘液でヌメヌメしており、甲殻も爪もない。移動速度は亀よりも遅い。魔蟲種の中では最弱ともいえる。湿度の高い場所にしか生息できず、乾燥した場所ではカラカラに干からびて死んでしまう。

 人間の食料庫を荒らすことしかできないような敵で、小さな子どもでも楽に倒せる。小遣い稼ぎにチマチマ殺しているような人間もいるらしい。


 ちなみに、寒冷地のみに生息する魔蟲種【凍喰鬼蟷螂ヴェンディゴマンティス】というヤツもいるのだが、こいつも出番が思い付かないのでボツになった。






     * * *


 続いては、蝿の王ベルゼブブ系の紹介だな。

 他の魔蟲種を操る能力を持つタイプだ。希少なうえに強いから、こいつらを倒せた例は少ない。


蝿の王ベルゼブブ騎兵トルーパー

 カミリヤが初めて勇者召喚を行った際に戦った魔蟲種だ。高さ100メートルを超える化け物で、その巨躯は歩くだけで街を壊滅させる。

 こいつの死体の発見が帝国内部でカミリヤの存在を脅威として認めるきっかけになる。私もこの死体を見るまでは女神が使う魔術『勇者召喚』など噂に過ぎないと考えていた。

 こいつは『物語を動かした存在』とも言えるだろう。もしこいつがいなければ私もカミリヤを帝国内に誘拐しなかったし、レイグも彼女と出会うことはなかった。


蝿の王ベルゼブブ刈者リーパー

 背中に虫の薄羽が生えた人型魔蟲種だ。羽から生まれる黒い粒子を撒き散らし、空気中を媒介させて他の魔蟲種を操る。

 次々と他個体を呼び寄せるから厄介だな。こいつだけは優先的に排除したいところだが、空中での動きが速すぎてなかなか攻撃を与えられない。

 まあ、レイグはカミリヤを餌に倒せたみたいだがな。






     * * *


 続いては、半魔蟲種ハーフアラクニドを紹介する。

 元々人間だったヤツが魔術で魔蟲種と化した連中だ。強靭な肉体と、人間としての知性を併せ持つから厄介だぞ。


蛇女百足ラミアピード

 女神教団主教であるルイゼラ・ハーベドガスターが魔神ヘレスの宝玉を体内に取り込み、巨大百足のような半魔蟲種ハーフアラクニドへ変化したものだ。彼女が抱える憎しみと反応したのか、宝玉に込められた膨大なエネルギーが暴走したんだろう。

 こいつの能力は……ネタバレになるから明かせないな。


 ちなみに読者の諸君は、カミリヤが半魔蟲種になりかけたシーンを覚えているか? 紅い腕が彼女を包もうとした場面だ。

 当時は私がアルビナスに彼女の意識を奪わせることで半魔蟲種になるのを回避できたが、もしあのままカミリヤが魔蟲種になっていたらこの物語はどうなっていたのだろう?

 カミリヤは半魔蟲種と化して街で暴れ、レイグは彼女を殺さなければならない。そして深い喪失感のなか、彼は骸鬼とも対峙して圧倒的戦力差に破れる……というバッドエンド一直線になっていただろうな。

 いやいや。カミリヤを眠らせたのはナイス判断だったな、私。


【エルシィ】

 前に【登場人物解説】で説明した。

 同じ説明をするのは面倒くさいので、エルシィがどういう人物かを見直したい場合は下記のページへ戻ってくれ。

 ↓ ↓ ↓

【番外編】マグリナ様による登場人物解説

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882818711/episodes/1177354054885379117







     * * *


 そして、例のアイツの説明だ。


闘神蟻兵アヌビスアント骸鬼ヘカトロン

 現在、帝国が総力をあげて調査中の魔蟲種だ。

 砲弾も通じない甲殻を持ち、体の周囲から放出するビームで敵を一掃する。他にもまだ能力を隠し持っていそうなのが恐いな。四つの紅い瞳と、骸骨のような腕が六本ある。

 魔蟲種の親玉であるエルシィがカミリヤの勇者召喚に対抗して作ったらしい。蝿の王ベルゼブブ騎兵トルーパーから得た戦闘データを基に、勇者に勝てるよう設計されている。『対勇者用魔蟲種』とでも表現すべきか。

 名前の由来は、たくさんの腕を持つ巨人『ヘカトンケイル』と、骸骨を意味する『スケルトン』を併せたものだ。

 ちなみに、この作品のラスボスだぞ。






     * * *


 これで魔蟲種の解説は終了だ。

 読者諸君、私の活躍にも注目してくれよな?

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