7-7.ルール通りに
「なんのデザインですか?」
「屋上庭園のだよ」
じゃん、と小宮山唯子がボードを取り出す。
「うちの屋上ってちゃんと人が出ても安全なように考慮されてるんですって。なのに今、出入り禁止じゃない? 開放の要望をいくら出しても教頭がうんて言わなくてさ。だから屋上庭園作成案を出したわけ」
「そしたら許可が出たんですか」
「生徒の手による緑化活動だって話題になるものね」
にこりと美登利は腹黒く微笑む。
「ちょっと話が大きくなっちゃって園芸部には苦労をかけるけど」
「いいよ、いいよ、楽しそうだし。なにより、これで花の苗や土やピンコロを好きに買えると思うとありがたいくらいだよ」
「もう、じゃんじゃん買っちゃって。予算最優先だよ」
にこにこにこにこ。腹黒中央委員長に負けず劣らず笑顔な小宮山唯子を見て、正人はがっくりする。ああ、癒しの園芸部が……。
「作業は僕も手伝うからね。これって文化事業でしょう」
「ダメだよ、澤村くん。手とか怪我したらどうするの?」
「大丈夫だよ」
「ダメだって。ねえ、美登利さん」
うーんと美登利は眉根を寄せる。澤村の申し出を断るのも申し訳ないという風だ。
「いいよね、みどちゃん。たまには変わったことをやってみたいんだ」
「ええと、まあ、臨機応変にということで」
どうとでも取れる返答をして美登利はその場を無理やり締めた。
綾小路がこだわる公式ルール通りに両チーム合わせて二十四名の参加者が集まり試合に漕ぎつけたのは、それから二週間後のことだった。
三大巨頭の謎の権力で体育館の使用まで決めてしまった綾小路は、出場者へのレクチャーまで半強制的に行った。小学生の公式大会の動画を何度となく見せられフォーメーションまで叩き込まれたメンバーは、それはそれでモチベーションを上げていたりして、
「オトコって単純」
女性陣を呆れさせた。
ラインテープで正式なコートが作られる。出場メンバー全員で設営作業を終えた後はいよいよチーム分けだ。
「安西がいなけりゃ、どんな顔ぶれでもかまわないさ」
白石渉が心底ほっとしたように言う。
前回ゲームを混乱に陥れた安西、一ノ瀬、綾小路の三名は今回出場禁止扱いだ。綾小路はそもそも主審をやる気満々だし、誠はぬるい笑みを浮かべただけ、安西に至っては姿も現さないから反応は謎のままだ。
「今回は遺恨は一切なし。純粋に楽しもうぜ」
そもそもの始まりは当麻の執念からだというのに、本人がさわやかにのたまうから誰もなにも突っ込まない。
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