クラスメイトの妹に「死んでください」と言われてしまいました。。。。

第49話 提示された選択肢から、どれを選ぶのか。

「とりあえずは、聞きたいことある？」

「何で、明るくなったのですか」

「いい質問だね」

　リタは口元を綻ばすと、おもむろに顔を上げた。

「一言で言えば、暗かったからかな」

「理由にしては、単純過ぎる理由ですね」

「何をするにしても、とりあえず、何か理由がないと」

「理由があれば、またここを真っ暗にしたりできるということですか」

「そう、だね」

　リタの返事に、明日香はため息をつく。

「あなたは、どう思いますか」

「僕？」

「そうです。それ以外に誰がいるんですか」

　明日香に顔を向けられ、僕はどう応じればいいか戸惑う。

「いいんじゃないかな」

「適当な答えですね」

「適当って、まあ、適当と言われれば、適当だけど……」

「否定しないんですね」

　明日香に問いかけられ、僕は間を置いてから、「まあ、ね」と声をこぼす。

「前に、君から、明るくしてほしいとかの要望があったから、明るくしてみたんだけど」

「えっ？　僕が」

「そう」

　リタの言葉に、僕は以前、暗い空間にいた時を思い出す。確かに言ったかもしれないけど、今のはまるで、僕が口にしたから仕方なくといった感じ。リタ本人は特に望んでいたわけじゃないということなのだろうか。

「あなたがそういうことを言ったんですね」

「もしかして、褒めてたりする？」

「そんなわけありません」

　明日香はじっと見ていた僕の方から視線を逸らしてしまった。

　相変わらず、僕は彼女から嫌われているらしい。

「君は」

「はい」

「何か、聞きたいことある？」

「僕はどうなるんですか？」

「選択肢は、残り二つだね」

「二つってその……」

「『あの世に行く』か、『異世界に転生する』だね」

「何ですか、その選択肢は」

　リタの答えに対して、明日香が言葉をぶつけてくる。

「あっ、ちなみに、君は今の以外に後二つ、選択肢があるから」

「どういうことですか」

「これから、君がどうしたいか、選んでほしいということ」

「意味がわかりません」

　ぶっきらぼうな調子の明日香に、僕は顔を向ける。

「あのう、一応、彼女は死神だから……」

「それが、どうしたのですか」

「一応っていう言い方は、死神のわたしに対して、失礼だと思うけど」

「ごめんなさい」

　僕はすぐ、リタに頭を下げた。

「死神が怖いんですか」

「そう言う君は怖くないんだ」

「怖がっても、特に得することとかないですから」

　明日香は淡々と口にする。

「へえー。わたし的には、君は変わってるかなって思ってたけど、本当に変わってるんだね」

「それはわたしに対する悪口ですか」

「悪口じゃないよ。どちらかと言うと、褒め言葉かな」

「何だか、嘘くさいです」

「死神だから」

「あのう、それって、死神だからっていう理由になりますか？」

「痛いところを突いてくるね、君の方は」

　リタは僕に言うなり、何かを思いついたのか、両手を叩いた。

「おもしろいことを考えたんだけど」

「何だか、嫌な予感がします」

「奇遇だね。僕も同じ気持ちなんだけど」

「そういうところは気が合うみたいだね」

「今のは、褒められても嬉しくないです」

　不機嫌そうに声をこぼす明日香。

　にしても、リタはどういうことが頭に浮かんだのだろうか。

　僕はリタと目を合わせた。

「ちなみに、何ですか？」

「二人とも、一緒に同じ選択肢をするのはどうかなって」

「だから、その選択肢と言うのは何なんですか」

「まあまあ。ちゃんと説明はするから」

　リタの返事に対して、僕は既に面倒なことになりそうだと感じ始めていた。

　明日香には、リタから次に挙げる、四つの選択肢が示された。

　一つ目の選択肢は「あの世に行く」

二つ目の選択肢は「異世界に転生する」

三つ目の選択肢は「過去に戻る」

四つ目の選択肢は「生き返る」

「ちなみに、どれがいい？」

「どれも、何かトラップがありそうなものばかりです」

「鋭いね」

「誰だって、そう思います」

「でも、隣の彼は、特にそう思っていなさそうだったけど？」

「ちょっと待ってください。それじゃあ、まるで、僕がバカみたいな人間に見えます」

「わたしは納得です」

「納得されると困るんだけど」

「わたしは困りません」

「そうですか……」

「まあまあ。とりあえず、どれがいい？」

　リタの問いかけに、明日香は両腕を組んで、うーんと唸る。当たり前だ。ここですぐに選べるほど、簡単そうな問題ではない。何せ、自分の今後を決めることになるからだ。

「『生き返る』という選択肢は、すごい安易な気がします。というより、何かトラップがあるとしか思えません」

「慎重だね」

「当たり前です」

「ちなみに、おすすめは……」

「そういう助言はいらないです」

　明日香はきっぱりと言う。もしかしたら、リタは彼女の反応を楽しんでいるのかもしれない。

　一方、僕は明日香がどの選択肢を取るのか、気になって仕方がなかった。