第37話 運命を変えるのは難しい。
夜。
薄暗い住宅街の路地を、僕はひとりで歩いていた。母親から夕飯の買い物を頼まれ、近所のスーパーに向かっている。献立はクリームシチューで必要な牛乳が目的だ。冷蔵庫にあるかと思ったが、なかったのだ。
で、僕はスマホ片手に、夜道を進んでいた。といっても、所々電柱の灯があるので、真っ暗というわけではない。
「これは、前と同じなんだ……」
僕は口にすると、頭上の夜空を見た。曇りがちで、星は数えるくらいしかわからなかった。
前回の今日であれば、しばらくして、明日香が現れるはずだ。ナイフを持って。で、僕に襲いかかろうとしたところで、妹の美々に助けられる。そして、明日香から逃げるものの、車に撥ねられて。
「でも、今回は違うはず」
僕は自分に言い聞かせ、スマホを握り締めた。
なぜなら、放課後に一度、明日香と別の場所で会っている。校門前でなく、神社の境内でだ。
で、明日香は僕を殺そうとしなかった。呆れて、ナイフを刺そうとすらしなかった。
だから、今夜、出てこないのではないかと思い始めていた。リタから、「99%で君は死ぬ」と言われていても、運命を自分の力で変えたのではないか。
と、僕は気楽に考えていた。
「ん?」
手にしていたスマホが震えたので、僕は何気なく画面を開いた。
見れば、麻耶香からのSNS通知だった。告白を受け入れた後、教室でSNSのアカウントをお互いに交換し合っていた。買い物に行く前では、家にいる時に、麻耶香とメッセージのやり取りをしていた。といっても、学校のこととかだ。明日香と放課後に会ったことは特に話していない。
で、通知はとあるURLのリンクが貼られていた。クリックしてみれば、地図のアプリが開き、とある位置にアイコンがあった。指で広げれば、僕がいるところから近くだ。
「何だろう?」
僕が首を傾げていると、再び、麻耶香から、SNSのメッセージが届いた。
目にするなり、僕は足を思わず止めてしまった。
「ここで待ってます 間戸宮明日香」
メッセージの意味は、考える必要がなかった。
僕は急いで、スーパーとは逆の方向へ走り出した。
SNSにあった、URLの地図が示していた場所へ。
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