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「それでは、いつ終わるか不明瞭な今日に――――乾杯」
「乾杯ッ!」
ガツン、と大理石で作られたジョッキを勢いよくぶつける。その際に飛び散った飛沫が俺とアシュラを濡らす。
大理石の凹凸により生まれたきめ細かな泡、麦酒ならではの渋みが五臓六腑に染み渡る。ワインのように味わうのでは無く喉に流し込む感覚は、ワインとはまた違った爽快感がある。
「――――貴族最高!!」
飲み終えたジョッキを木製のテーブルに叩き付け、天幕内部に控えている給仕さんに代わりを催促する。
本来……というか例年通りであれば、今頃俺はクソせっまい支給されたテントで、むさ苦しい男共と身体を密着させながら仮眠を取る、若しくは寝ずに周囲を警戒する見張りでもしていただろう。しかし。しかし、だ。今の俺の待遇は正に貴族。魔法が使える事、学園に通っている事、アシュラの学友である事。それらの原因が複雑に絡み合い、最終的にアシュラの厚意により俺は本陣である天幕に客人として呼ばれていた。本当にアシュラ様々だ。
「ありがとう」
再びなみなみと注がれたジョッキを持って来た給仕さんに礼を言い、アシュラの方に向き直る。
「んで、今回の戦争はいつ頃に終わりそう?」
久方振りの(と言っても、前回の戦から二年しか経っていないが)戦争である。敵さんの軍備もそれなりに万全であると思われるし、恐らく俺が居る間に一度くらいは会戦するだろう。
税もきちんと納めているルーズベルト家の徴兵期間はたったの一ヶ月であるため、さほど危険は無さそうだ。そもそも、銃弾が飛び交わないこの世界の戦争は死人が少ない。生け捕れば身代金が取れるとか、全身を鎧で固めているから死ににくいとか理由は様々だが、取り敢えず何気に安全性は高い。
「そうだな……取り敢えず言えるのは、今回我が軍の兵力は六千だって事くらいか」
「六千!?」
前回の戦争、もとい睨み合いの時は互いの兵力が約三千だった。単純に考えてその倍であるため、敗北は無い。敵は迂闊に手が出せないだろうから…………戦は早急に終わるか、かなり長期化するかの二択だろう。
フィーに二月で帰るって言ったのはいいが、場合によっては無理そうだな。俺の徴兵期間は一ヶ月だが、無論敵と戦っている最中は帰らせて貰えない。
…………まぁ、裏技として俺が指揮官を狙撃すれば、敵軍は瓦解してあっという間に戦争は終了するだろう。烏合の集となった暴徒が賊に――――というのはよくあるパターンだが、そこら辺はアシュラの父上が上手くやってくれるだろう。辺境伯としてそういった腕前は、他の追随を許さない程度には優秀だ。
「今回の戦争は楽そうだな」
そう呟く俺に「油断は禁物だが、全くの同意だ」と言ってアシュラはジョッキを掲げる。
「「乾杯!」」
本日二度目の乾杯を交わして中身を一気に流し込む。
――――夜明けはまだ遠く、俺たちはテキトーな話題を肴に語り合った。…………戦争は、近い。
※※
「今日も敵さんは現れず――――敵が攻めて来てるって、誰かの虚言じゃねえの?」
徴兵されてから十日が経った。未だに敵軍の『て』の字も見えず、見て分かる程我が軍の士気は下がっていた。
俺のやる気の無い物言いにすらアシュラは反論しない。一応この軍の中で二番目に偉いため不用意な発言に気を付けているようだが、この場合無言は肯定とも言える。
「…………父上も余裕があると見たのか、一旦家に帰られた」
…………何というか、フリーダムだな。いや、往復して間に合わない位置に敵が居ないのだから、一応正しいのか? しかし士気とかあるだろうに。少なくとも俺には死亡フラグにしか思えないんだが。
「そういえば、人間を長距離で転送する魔法とかあんの?」
ふと思い浮かんだ疑問。それならば問題なく移動が出来る。
魔力量にも限界があり、大部隊を移動させるのは困難だろう。となると敵に先手を取られても悠々と反撃する事が可能だ。
「長距離の転送? 不可能だな。そんな魔力を人体に浴びせてみろ。魔力同士が反発して木っ端微塵だ」
まぁ、普通にそうだな。
転送先の座標を間違えて空中ダイブとか生き埋めとか、悲惨な結果しか思い付かない。第一、僅かでも魔法での転送が可能ならば、国はより大きく(繋がりはあるが)閉鎖的になるだろう。商人たちの仕事も減るし、魔法が使えない平民には死活問題となりそうだ。
銀等の魔法と相性の良い貴金属ならば転送は可能かも知れないが…………まぁ、今ここでそれについて考えるのは無意味だし、頭を切り替える。
万が一のため、敵が来てアシュラの父上が間に合わなかった時の対策を考えよう。――――そう、アシュラに話を持ちかける直前、一人の男が慌ただしく天幕の中に入って来た。
「ほ、報告しますッ! 約ニキロ先にて敵影を確認。数は目算で――――約一万です!!」
――――おい。
言いたい事は幾つかある。取り敢えず、ニキロ先って何だ? 俺たちが布陣しているこの場所は、見渡す限り草原。つまり平地。隠れる場所が皆無なこの場所で、何故そこまで近付かれたのに気が付かなかった?
数もおかしい。前回は三千で、今回はその三倍以上。そもそも一万って、歴史を紐解いても上位に食い込む数。…………何故いきなりそんな数を派遣した?
疑問は幾つも浮上する。ただ確実に分かるのは、『敵が本気で攻めてきた』という事だけ。
…………何かどうしても戦争を起こさなければならない理由があったか?
「アシュラッ!」
「…………っ、分かっているッ!!」
アシュラの父上が居ない以上、全軍を指揮出来るのはアシュラだけだ。アシュラには全力で部隊の編成に当たってもらう。
今現在出来る俺の役目は参謀だ。考えるしかない。以前の俺ならまだしも、前世の知識がある俺ならば有効な戦略が思い付く可能性がある。
無論それは偉人の策をパクるだけの付け焼き刃だが、しかしこの世界でそれは十分に通用する。理由は簡単で、この世界の貴族は世襲制だからだ。軍隊を指揮する人間はただ親の七光でその地位に着任しただけで、残念ながら全体を上手く指揮する能力も策を巡らせる頭脳も無い。
目指せ現世の孔明! …………って、孔明って内政は得意だけど戦は苦手だっけ? となると竹中半兵衛を目指そう。日本人だし。今は違うけど。
まず考えるのは敵が突然現れた理由というか、方法だ。見晴らしが良い場所であるため、流石に気が付かなかったは無理がある。転送……は無理だよな。仮に出来るとして、何でそんな微妙な位置に出て来たって話。安全性を考慮したとしても、背後に移動すれば援軍の妨害も出来るだろうし。
いきなり手詰まり…………いや、認識阻害系の魔法か? 光学迷彩とかそんな感じで…………って事は、敵さんはかなり魔法部隊に力を入れているな。
取り敢えず敵の動きを見るため外に出る。
「うわー…………これはまたスゲーなおい」
二倍近い敵が行軍する様は筆舌しがたい。騎士たちは馬に乗っているが、所謂フルアーマーであるため速度はそれ程でも無い。しかし迫力は十分だ。十分なのだが…………味方の離脱が殆ど見られない。いや、何気に俺らの軍凄くね? 俺なんかアシュラが居なかったらとっくに逃走している…………って、アシュラが居るからか。貴族なのに傲らず腕も立つ。長期休暇は領内を見回る。そりゃあ好かれるよな。
突如現れた敵さんに士気が下がるのでは無く、天幕から出て来て指揮を執るアシュラを見て士気が上がる。…………こいつら、訓練され過ぎだろう。色々な意味で。
だがまぁ、士気が高くて悪い事は無い。むしろ好都合。
俺は忙しく命令を下すアシュラに近付き、作戦内容を披露した。
「…………そんな話は聞いた事無いが――――確かに、上手くいけば効果はありそうだ。無論、微々たる物だが」
余計な一言を付与しつつ、アシュラは俺の作戦に乗ってくれるようだ。この作戦の要はアシュラであるため、アシュラさえ賛同してくれれば成功に導くのは容易い。
アシュラが言ったように作戦は戦術であり戦略では無い――――が、水滴も集まれば夕立になる(塵も積もれば山となる)と言うように、戦術を積み重ねればそれが戦略となる。そもそも両軍を足して二万にならない兵力のぶつかり合いなら、僅かな結果しか生まない戦術が十分に戦略となる。
「伝令! 全軍の編成、完了しましたッ!」
「よし! 全軍突撃――――」
「止めいっ!」
いきなり突撃しようとする馬鹿の頭を叩き、号令を中断させる。倍近い数の敵に突っ込んで、何を根拠に勝てると思っているんだかこいつは。ある意味大物だよ。
しかし俺は、風俗に行っても博打はしない主義だ。安全…………では無いが、比較的安全な策でいかせて貰う。
用いる陣は鶴翼では無く魚鱗。鶴翼の陣は耐え、攻撃に移行する陣であるため数で劣る場合は不利となる。広げた両翼の間に敵軍が入れば包囲する事が出来るが、しかしそれだと本陣が持たない。
故に魚鱗…………なのだが、やはりこの兵力差で勝とうとするからには死地に飛び込ばざるを得ない。
相手の出方によって陣や作戦は変わるが、取り敢えずは魚鱗を保持する。因みに陣形は絵でアシュラに説明し、魔法による遠話を用いて全体を動かして貰った。アシュラの魔力量は普通に毛が生えた程度だが、もちろん俺にそんな芸当は出来ない。泣けるね。
「焦るなよ? 釣りと一緒で、焦ったら負けだ」
小さい頃のおやつは山で採れる山菜や木の実、川で釣れる魚だった。だから釣りは好きだったりする。
釣りで浮きが揺れるのは魚がつついているだけで、まだ獲物はかかっちゃいない。浮きが沈んで初めて竿を引くんだ。
…………だがまぁ、焦るなと言っておいて一番俺が焦っている。時速十数キロ程度とはいえ、フルアーマーな騎士さんたちが突っ込んで来るんだ。並の神経じゃ耐えられない。周りの人間は戦だからかアドレナリンの大放出により精神が昂り、怖いという感情が麻痺している様子。だがしかし、何故か俺にはそれが無い。
銃がある所為か、ただ鈍いのか。どちらかかは分からないが、事実目の前で起こっている事がどこか他人事のようにしか思えない。
推測するに、前世と現世の常識や価値観がぶつかり合い反発し、摩擦を起こしながら摩耗しているような感じなのだろう。前世が夢なのか現世が夢なのか…………俺には分からない。
「槍ぶすまを作れッ!!」
俺(アシュラ経由)の命令に従い、突撃して来る騎兵隊を迎撃せんと歩兵が槍を並べる。
隙間無く広がる槍ぶすまに馬を、関節を貫かれた敵が落馬する。後続の部隊はそれを踏み越え、僅かに空いた隙間をこじ開けるように突撃する。
「第一陣、突破されましたッ!」
「付け入る隙を与えるなッ! 第二陣構えろッ!!」
敵は中央の一点突破を狙っているのか、中央に殆どの戦力を割いている。味方は左右に散り散りとなり、第一陣は既に機能していない。現在は二陣が六メートル程の槍を持って待機している。
普通なら整然と並べられた歩兵を突っ切るのはのは至難の技だ。しかし敵は物量に物を言わせ、甚大な被害を受ける事を厭わずに突っ込んで来る。
単調な策ではあるが手堅い。ただでさえ兵数で劣るというのに、一点突破されたら防げるはずが無い。突き破られ後ろを取られ、後は瓦解するだけだ。――――それが、防御なら。
「右翼・左翼、反転だ。敵を根絶やしにしろッ!」
アシュラの命令に反応し、両翼が包囲を狭める。散り散りとなっていた一陣は二陣に組み込まれ、槍の層が厚くなる。
遠話があるため使う予定の無かったラッパや銅鑼を鳴らし、味方を煽り敵の戦意を更に低下させる。突撃して来た騎兵は既に退路を断たれた。となると、次の動きは決まっている。前に進むしか無い。
敵が魚鱗の陣形から、中央が後退して鶴翼の陣になっていたのに気が付いたら危なかった。…………まぁ、それに気が付く司令官だったら、最初から俺らに勝目は無い。
「――――ッ! 持ち堪えられません! 正面突破されますッ!!」
遠話は戦で最も大事な指揮をリアルタイムで伝えられるという利点があるが、一方的な命令であるためにマイナスになる危険性を孕んでいる。そのため前線の情報を速く、的確に伝えられるよう伝令兵は我が軍の中でもトップクラスに優秀な者を選んでいる。故にその優秀な兵が持ち堪えられ無いと言ったのだから、事実持たないのだろう。
だからアシュラに次の動きを伝え――――それをアシュラが実行する前に、僅かに崩れた中央を敵が突っ切って来た。
ぱっと見数は十人程。しかし一度破れた穴はそう簡単に直せない。その穴を広げるように敵が殺到する。
「――――やべっ」
アシュラの元に殆どの敵が行き、俺には一人だけ。しかし十分に致命的。
詠唱は間に合わないため腰の短剣を抜き、反射的に斬りかかる。無論その刃は相手を傷付けるどころか、敵が軽く振った長剣とぶつかり彼方へと飛んでいく。
だがそんな事は理解していた。だからこそ
「ぐっ!」
短剣を振ると同時に構えていた種子島の引き金を引く――――が、丁度相手の二撃目が種子島に当たり、弾は検討違いの方に飛んでいく。
「助かった!」
偶然弾がアシュラを狙っていた敵兵を鎧ごと貫く。それによりアシュラは助かったが、俺は馬上という不安定な場所で剣を受けた所為で見事に落馬した。
衝撃で肺の中の空気が全て外に出る。息が詰まり、必死に酸素を取り入れようとするが上手くいかない。この場から即座に離れるべきだと理性が警鐘を鳴らすが、身体はくの字に折られ咳き込む事しか出来ない。
涙で滲む視界の中何とか敵の方を見上げると、長剣を振りかざす敵が居た。
「あ」
呆けた声が口から出る。逃げられない。避けられない。受け止められない。
痛みはリアルなのに、目前に迫る剣はリアルじゃない。
気が付いたら戦争が始まって、気が付いたら全軍を指揮していて、気が付いたら殺されそうになっている。…………だというのに、欠片も臨場感が無い。演出下手で描写不足なB級映画を見ているような、俯瞰的で客観的な現状。自分視点という一人称であるはずなのに、どこか世界がズレている。
嗚呼、予想以上に心が摩耗していた。自分の死に無頓着になる程度には磨り減っている。
――――だって、死にそうなのに怖く無い。
ぐるぐると色々な言葉が頭の中を流れる。生を諦めた本能に、理性が抗うかの如く現状を打破する方法が思い浮かぶ。一秒が二秒に、二秒が六秒に、六秒が二十四秒に――――加速する思考の中、思い浮かんだ方法の結果は総じて死。
その策を破棄、または過程を修正して脳内でシミュレートする。…………無論、結果は死。
そもそも、武器が無く動けない状況で出来る事など高が知れている。
本能が諦め、理性もようやく死を悟る。
二十四秒が六秒に、六秒が二秒に、二秒が一秒に――――そして。正しい時間軸を取り戻した世界の中で敵は長剣を振り下ろし、
「危ないッ!!」
しかし何者かの体当たりにより剣が描くはずの軌跡は大幅にずれ、俺と同様に落馬する。しかし俺がレザーメイル装備なのに対して、敵はプレートメイルである。頭から落ちた敵兵は自重により自身の首が折れてしまったのか、びくりと痙攣するとそのまま動かなくなった。
「…………悪い、助かった」
安堵すると視界が広がった。どこか遠かった音の違和感も無くなり、少しずつ自分が戦争をしているという実感が湧く。
「気を付けて下さい、参謀殿。ここが正念場です」
そう俺に告げた人物は伝令兵だった。流石、優秀な人間は違う。…………って、それよりも俺、参謀なんだ。いや、違いは無いけど。
まぁ、取り敢えずは参謀と名乗る事にしよう。その方が後々楽そうだ。
俺は伝令君が奪った敵の馬に乗り、戦場全体を見渡した。敵軍は歩兵を前に出したまま動かず、騎兵を助ける素振りは見せない。しかし騎兵が裏を取ればいつでも突撃が出来る体勢になっている。
二千程居た騎兵は散り散りとなり既に半数以上が討たれ、または捕まったようだ。だが包囲を抜けて完全にこちらが後ろを取られた。こちらを挟撃出来る敵はかなり疲弊しているだろうが指揮は高い。勝ちを確信しているのだろう。…………だが、甘い。
「――――全軍、反転」
呟きに似たその言葉を伝令君が拾い、即座にアシュラへと伝える。そしてアシュラを通して俺の言葉は各中隊・小隊の隊長へと伝わり――――瞬く間に部隊は反転した。
こちらは確かに数で劣るが、アシュラを頭に据えた分指揮が高い。多少の錬度の低さは補える。
そしてその声が遠話で、皆とは言えずともある程度上の人間(前世で言えば尉官か准士官以上)には届いているんだ。並の軍勢では叶わない速度で展開する事が出来る。事実我が軍は敵に背を向ける事を物ともせず、見事に逆包囲を完成させた。
こうも綺麗に包囲されればいくら騎兵といえども戦意は無くなるのだろう。向けられた槍を払う事すらせず、自らの武器を手放した。
勝鬨が上がる。士気はこれ以上無いくらい高揚しているため、これから行うややこしく面倒な動きも問題無くやってくれるだろう。
問題は指揮が高くなり過ぎて収拾が付かなくなる事だ。勝手に突撃されると困る。ここは先程使わずに温存していた弓隊を使って――――
「全軍突撃ぃッ!!」
「…………は?」
反転していた部隊が反転し、元に戻る。それはいい。それはいい…………が、何故こいつらは突撃しているんだ?
…………いや、答えは分かっている。アシュラが突撃の号令をかけたからだ。間違っちゃいない。普通は突撃だ。そもそもこの世界、部隊が相対した場合の戦略は突撃以外存在しないと言っても過言では無い。だから突撃。間違いなく正しい。
だけどそれはこの世界を基準にした場合だ。前世の知識がある俺にとっては下策でしか無い。
第一アレだ。世襲制だから大将が戦い方を知らないって理屈は分かる。だけどおかしいだろ。こうすれば良いんじゃないかとか試行錯誤しないのか? 貴族の伝統とか誇りってやつ? それこそ馬鹿だろ。それは誇りじゃなくて驕りだ。
敵は歩兵密集隊形ファランクスという有名な陣形を取っている。歩兵密集隊形とは左手に盾、右手に槍を持って密集隊形を作る陣形で、有名所だとスパルタンの兵士が狭い谷間でこれを用い、圧倒的大多数の敵に数日もの間戦った。
守りに適した陣形だが包囲に弱いという欠点があるため、こちらの騎兵隊を左右に投入すれば決着はつく。
…………しかし、あろう事かアシュラたちはその騎兵で包囲するのでは無く中心部に向けて突撃した。これはもう笑うしか無い。
「銅鑼を鳴らせッ! 弓隊構え……撃てッ!」
伝令君に一斉射撃を意味する銅鑼を鳴らさせ、敵方向に種子島を全力で降り下ろし全体に命令を出す。士気が高いだけあって俺の命令もすんなりといき、突撃した味方を援護せんと無数の矢が空を覆う。
弧を描き飛ぶ矢は敵の盾を貫き槍を弾き、無慈悲に命を奪っていく。そして……その動揺が収まる前に味方の騎兵が敵と接触する。
槍に刺され、何十もの味方が落馬する。運良く助かった人間も鎧ごと身体を味方に踏まれ圧死する。しかし勢いは止まらない。正に破竹の勢いで敵軍に殺到する。
正直これは予想外な展開だ。味方の士気の高揚、敵の士気の低下。それらの要素を加味してもいかんせん敵が脆過ぎる。これは罠か? だが逆包囲をするような雰囲気じゃ無い。勢いに押し切られた…………ってな感じでも無いな。
用意した魔法部隊で味方ごと殲滅…………有り得るかも知れないが、初戦からわざわざ兵を無駄にするか? 王都を攻略するような雌雄を決する最終戦ならともかく、これは国境にすら届いていない戦だ。
何を――――と、遠くを見据え、同時に馬の腹を力一杯蹴る。
味方は敵軍の第一陣を突破し、乱戦状態になっている。槍を投げ、剣を振るっている。
敵は――――構えていた。俺が背中に背負っている物と同じ型の…………銃を。
確かに覚えている。あの胡散臭い商人は『南で試験的に使われている』と言っていた。…………予想出来たはずだ。そもそも鎧がここまで発達したのは、銃弾を防ぐためだと歴史の先生が言っていた。銃が発達して鎧じゃ銃弾が防げなくなり、今のような軽装備に変わったんだと。
初期の銃じゃ五十メートルも離れれば鎧で十分防げるだろうし、まず当たらない。連射すれば命中率の悪さは誤魔化せるだろうが、残念ながらそんな連射力は無い。彼の有名な信長の『三交替斉射』を試みている様子は無いし、実質そこまで害は被らないだろう。
問題を挙げるとしたら――――音だ。
何十、何百という数の銃声に馬は堪えられない。もちろん銃の存在を知らない人間もだ。だから確実に多くの人間が落馬する。大きな隙だ。しかし騎兵が居なくて銃に慣れている敵軍は恐慌状態に陥らない。
…………まさか、騎兵が足を引っ張るなんて誰が思うだろうか。歩兵にとって騎兵は脅威でしか無いため、俺が即座に降りろと言ったって実行するやつは極少数だろう。
となると俺が取る行動は一つだけ。
「アシュラァーッ! 伏せろおおおおッ!!」
馬上からアシュラを掴んで地面に落とす。いきなりの事で唖然とするアシュラと周囲の人間を華麗にスルーして俺もそれに続き――――刹那、雷鳴にも似た爆音を辺りに響かせながら、敵の銃弾が一斉掃射された。
馬が嘶き、乗り手を落として一目散に逃走する。軍馬とはいいがたい脆弱さだが、しかし銃声に堪える訓練をしていないのだから仕方が無いか。
しかし――――アシュラ自慢の栗毛色の馬は、逃げるどころか主を守るように堂々と立っていた。…………俺、助けた意味無かった。
「…………ッ!?」
味方はバラバラで軍として機能しておらず、一旦退くために立ち上がり――――そのまま前転をする羽目になる。
何事かと思わず言う事を聞かない自分の足を見やると、赤い染みが一つ。弾が貫通しているのは幸いかも知れない…………なんて思っている間にも血がにじみ滴り落ちる。
独特な熱さと刺すような痛みに思わず顔を顰めつつ、種子島を杖にして立ち上がる。
痛みには慣れている。痛くて辛くて叫びたくなるが、言い換えればそれだけだ。焦点をずらすような感覚で痛みを意識の隅に追いやる。
一人称ではなく三人称。主観的ではなく客観的に自分を動かす。自分は一個の存在で、肉の塊でしかない。
「――――ルカッ! 大丈夫か!?」
――――大丈夫だ。
その簡単な言葉すら今の俺は発する事が出来ない。いくら厨二な事を言ってみても痛いものは痛い。
言葉を返せないため行動で無事をアピールしようとするが、脚は震えて立つ以上の事が出来ない。堅く食い縛った歯は耐久値を越えて今にも割れそうだ。
「くそッ! 取り敢えず掴まれ!」
「…………ぅあ」
痛みに情けない声を漏らしながらも、アシュラに引っ張って貰い同じ馬に乗る。
くそ、脚を撃たれた程度で死ぬわけが無いと思いたい。だが痛い。撃ったやつマジで殺す。っていうか出血やばくね? ゲームだと脚撃たれた程度じゃ死なないが…………現実だとどうなるんだろうか。やはり動脈だとか撃たれたらやばいとか? うん、やばいだろうな。何かそんな気がしてきた。死ぬよこれは。痛みで過呼吸になってきたし。でも何だろう凄く――――気持ち良い。
「ルカッ!」
「うわッ!?」
危ねえ! 今何か確実にトリップしてた。酸素が頭に行き渡らなくて、どんどん意識が薄くなるわ、だけど思考は止まらずぐるぐる廻って…………本当にやばい事になるところだった。
「一応止血はしておいたが、無理はするなよ? これ以上の処置は俺には無理だ」
「悪い、助かった」
見たところ患部はそのまま放置だが痛みは薄れ血も止まっている。簡単な回復魔法をかけてくれたのだろう。
まだ痛む脚に顔を引き攣らせながらも、馬に付けてあるポーチからポーションを取り出す。よくよく考えるとこれはアシュラのポーションであるため、許可を貰ってからコルクを取り、瓶を傾けて直接患部にぶっかける。
「ザッヅァッ!?」
奇妙な言語が口から漏れる。
じゅっ、と熱した鍋に水を落としたような音と同時に、何とも言えない痛みが俺を襲う。傷口に消毒薬を塗った時とは比にならない痛み。酒をぶっかけた時も尋常じゃなく痛かったが、それが可愛く思える痛み。幸いなのはその痛みが一瞬にして消えた事か。
流石に貴族御用達なだけあって効果が高い。若干の痛みと違和感はあるものの、ぱっと見傷は見当たらない。これなら、多少の引っかかりを我慢すれば問題なく銃を撃てる。
幸い、コストの問題か鉄砲隊の数は少ない。敵は一斉に射撃し、装填中は槍隊が前を固め、装填が完了したら再び一斉射撃――――をひたすらに繰り返している。一度でも突撃に成功すれば崩せるが…………問題は、歩兵でそれが可能かどうかだ。
「アシュラ、突撃するぞ。タイミングを合わせろ」
「は? たいみんぐ? いや、それより突撃って――――」
しん、と周囲の雑音が消える。本当は騒がしいなんてレベルでは無いのだろうけど、俺の世界からは音が消える。
あまりの静寂に堪えかねた空気が悲鳴を上げるが、俺の集中は途切れる事が無い。一層世界は俺色に染まり――――ついには、俺と一人の兵士を残して全てが消えた。
兵士――――否、将兵はどこかに、誰かに指示を飛ばしている。だけど、この世界に俺たち以外の存在は無い。虚ろで、空しい。だけどそれこそが狙撃手が居る世界。
馬に乗っているため視界は激しく上下に揺れる。だけどそれは特段気にすべき事じゃない。俺にとってそれは、ハンデになり得ない。
「…………アシュラ、突撃だ」
視界が上にずれ、下に戻るその刹那。止まった音の無い世界でただ引き金を引いた。
ぱすっ、と空気の抜けるような音。消音器サプレッサーを付けた時のようなごく小さい音を発して弾丸が放たれる。魔力で押し出されるそれは射手に殆ど反動を残さない。
俺は弾の行方を追う事なくアシュラの背に掴まる。見ずとも、撃った時点で弾丸の行方は分かっている。撃ったから当たるのでは無く、当たるから撃ったのだ。
「うおおおおッ!!」
アシュラは小剣を投げ道を作り、その精練された剣技を以て敵を屠る。
本来なら命令を下す人間が倒れた所為か敵は酷く混乱し、鉄砲隊を守るどころかその鉄砲隊が弾を詰めることすら忘れている。槍隊はもちろんの事、攻撃の要である鉄砲隊が機能していない今恐れる物は何も無い。
味方はアシュラの動きに鼓舞され、手近な得物を持って敵に突撃する。
もう、敵軍に数的有利は存在しなかった。完全に瓦解し、戦う兵より逃走する兵の方が多い。こうなってしまえば、あとは戦争では無くただの狩りだ。無論窮鼠猫を猫を噛むとか言うし、掃討戦もかなり危険だ。しかし追い詰めず、逃げ切れると思わせてじわじわとやれば手痛い反撃をくらう事無く敵を殲滅……とまではいかないが、甚大なダメージを与える事が出来る。
大事なのは自暴自棄にさせる事ではなく希望を持たせる事。俺はそれを念頭に、アシュラ経由で指示を下す。
「行くぜ、アシュラ。この戦いは俺たちの勝ちだ。あとは――――」
チカッ、と強い光が目に差す。まるで雲に隠れていた太陽が顔を出し、悪戯に光を乱反射させているかのようだ。
しかし、生憎今日は雲一つ無いと言っても過言では無い程の晴天。太陽はずっと俺たちを蒸し殺さんと、凶悪なまでに光を放っていた。…………だったら、この光は何なのだろうか。嫌な予感? 違う。これはただの悪寒だ。身体が震えて種子島を取り落としそうになる。
何が起こっているのか。俺は確かめるために上を見なければならない。誰よりも早くその原因に気付き、的確な判断の下命令を下さなければならない。仮にも参謀なのだから当たり前だ。
だけど――――本能がそれを拒絶していた。
見てしまったら全てが終わりそうで。この戦も、俺の人生も。総てが消えて、意味の無いモノになってしまいそうで。
恐怖。ごく普通に、当たり前に、一般的に。俺はその感情を抱いた。
だけど、上に立つのだから俺が見ないといけない。大丈夫だ、ただ上に存在するナニカを視界に収めるだけでいい。
――――そうして仰ぎ見た空には、大きな太陽が在った。
ガシャ、と俺の手から滑り落ちた種子島が音を立てて地面とぶつかる。拾う気はさらさら無かった。どちらにせよ、俺が種子島を拾うより太陽が落ちて来る方が速い。
「ルカッ! 伏せ――――」
爆音。爆ぜた地面が運良く助かった人間の身体を貫く。まるで散弾だ。近距離でショットガンを撃たれた人間のように、容易に身体が分離する。
感覚からして俺の身体は綺麗にくっついているが、熱気と砂埃の所為で目が開けられない。身体全体に感じる痛みは軽い火傷と打ち身だろうか。生きてはいるが、決して軽傷では無い。
「おい、大丈夫か?」
何とか薄目を開け、俺と一緒に飛ばされた恐らくアシュラであろう人間に声をかける。…………だが、返事は無い。不審に思ってよく見るとそれは、人の形をした黒い塊だった。
「…………ッ!?」
掴んだ肩が崩れる。完全に中身まで炭化している。…………これが、アシュラ? そんなの許容出来るわけが無い。人間というものは生き物であって、こんな炭の塊なんかじゃない。そもそも、可笑しいだろ。さっきまでピンピンしていたし、俺の方がよっぽど重傷だった。理解も許容も想定も出来ない。
…………いや、現実から逃げるわけにはいかない。まずはこの事態を引き起こしやがった、クソ野郎の息の根を止めるのが先だ。
俺なら出来る。太陽と見紛うような魔法を放つ敵が相手でも、俺なら負けない。一対一なら例え俺が機関銃を持っていようが戦車に乗っていようが確実に負けるだろう。しかし、それが狙撃銃だったら。…………負ける要素は一つも無い。殺される前に殺せるのなら、俺が負ける道理は無い。
科学が生み出した武器では絶対に魔法には勝てない。だけど、戦わなければ負ける事は無い。遠距離から気付かれる事なく一発の弾丸で仕留める事が出来るなら――――きっと俺は、誰よりも強く在れる。
だったら答えは簡単だ。種子島を構えて、引き金を引けばいい。
そう思って辺りを見渡すが、種子島は見当たらない。飛ばされた拍子にどこかに行ったか、はたまたぶっ壊れたか。どちらにせよ、新しく創造しなければいけない。
「――――εκκίνηση《起動》」
呪文を紡いでいく。創造するのは種子島なんて遅れた武器じゃない。
もっと疾く、もっと強く。
感覚を頼りに脳内にある銃を創造する。その作業は創るというより、既存のデータを手繰り寄せると言った方が正しい気がする。
気付かない振りをしていただけでずっと違和感があった。だけど今回はそれに感謝しておく。今詳しく知る必要は無い。ただあるがままの現象を受け止めればそれでいい。
「――――σπαθί《構築》」
両手には金属のずっしりとした重み。
――――
一キロどころか、二キロ先の人間を両断する程の威力を持つ狙撃銃。ケンタウロスでさえ容易に吹き飛ばしたそれを、ほんの数百メートル先の人間に使えばどうなるかは想像に易い。
俺は込み上げる笑いを抑え、枯渇した魔力を振り絞って一発の弾丸を創造する。
マジック・ポーションが無いため、いつもとは違い
俺は地面に伏せ持ち手付近にある二脚を組み立て、パッドを肩に当てて固定する。一発しか無いのでわざわざマガジンを抜かず、左手でボルトハンドルを手前に引き内部に直接弾丸を入れる。ハンドルから手を離すとそれは元の位置に勢いよく戻り、ガシャッ、と比較的大きな音を立てながら弾を装填する。
セイフティを外し、誤射を防ぐためにトリガーには指をかけないままスコープを覗く。視界の左が黒く映っており、それが消えるように少し顔を動かす。視界が綺麗に確保された事を確認すると、新たに魔法を詠唱している敵に照準線の中心を合わせる。頭を狙う必要は無いため狙いは胴体の中心だ。
あとはトリガーを引くだけ。そうすれば全てが終わる。…………だけど、もしも外したらどうなるか。音と光で確実にこちらの位置はばれるだろう。
幸いにして今俺が居る場所は死屍累々といった状態で、そんな場所に無駄に魔法をぶっ放す気は無いのか敵は全く違う場所を狙っている。
外せばせっかくのチャンスを逃すどころか、僥倖にも失わずに済んだ命を捨てる事になる。
「…………落ち着け、落ち着くんだ俺」
必死に自分に言い聞かせるが指の震えは収まらない。――――そもそも自分は、どうやって敵狙撃していたのか。
浮上する疑問。何故自分は触った事の無い実銃を扱え、しかも玄人でも難しい距離からの狙撃を成功したのか。一度ならまぐれ当たりかも知れない。しかし全てだ。何度撃っても狙って場所に着弾する。はっきり言って異常だ。そんな事が続くわけが無い。
だったらこれは俺の才能か、はたまた何らかの能力なのか。
仮に何かしらの能力だとすると、その発動条件は? 魔力切れの状態でも発動するのか?
…………考えれば考える程震えは大きくなる。指先の震えは身体全体に伝導し、視界が揺らぐ程になる。撃っても当たる気なんてしなかった。外した未来しか思い浮かばない。…………もう、逃げても良いよな。十分頑張った。第一想定外の敵戦力にここまで粘ったんだ。もう十分じゃないか。――――そう思った瞬間、俺の耳は小さな音を拾った。
「――――ルカァッ! 生きてるなら返事しろ! すぐに助けてやるッ!」
慣れ親しんだ友の声。――――間違い無く、アシュラの声だった。
逸る鼓動を押さえ付け、声のした方を向くとアシュラが死体を掻き分けながら懸命に叫んでいた。…………どうやらアシュラは、俺とは違う方向に飛ばされていたらしい。
「――――嗚呼」
安堵の溜め息を吐き、大きく息を吸ってスコープを覗いた。――――もう、外れる気はしなかった。
軽くトリガーを引く。その動作によって生まれた物とは思えない反動と轟音を辺りに響かせ、一発の弾丸が放たれる。
空となった薬莢が宙を舞い、噴射されたガスによって巻き上げられた砂塵が晴れた頃、敵は完全に消えていた。よく見ると敵が居た付近には人間の欠片が散らばっている。
「ルカ! ここに居たのか!」
駆け寄って来たアシュラに掴まり、立ち上がる。
敵も味方も、先程の魔法で壊滅状態だ。しかし放たれた魔法の位置的に敵軍の方が圧倒的に負傷者は少なく、また生きている人間の総数が多い。
相手もそれをキチンと把握しているのか、ばらばらではあるがキッチリと陣形を組み突撃して来る。
「せめて、敵に一泡吹かせてやろうじゃないか」
前を見たまま呟くアシュラに短く返事を返し、落ちていた剣を拾う。
マジック・ポーションがあればもう少しまともな援護が出来たのだが、無いのだから仕方が無い。近距離は弱い俺でも、アシュラと連携すれば一人か二人は殺れるかも知れない。
…………フィーたち怒るかなぁ、やっぱり。
ここで死ぬ覚悟は決めた。だけど、残される者は残される覚悟を決めたわけじゃない。帰るって言って帰らないのは、やっぱ裏切りだよな。…………まぁでも、この世界で生きてきたんだ。前世より死は身近な物だし、ある程度は覚悟出来ているだろう。
俺は勝手にそう判断して、アシュラを真似て剣を構えた。
「ルカ、行くぜ――――」
と。アシュラが激励の言葉を俺にかける前に無数の氷柱が敵軍を襲った。突然の事で敵は逃げる間も無く、あらゆる魔法によって駆逐されていく。
そうして地面に立つ敵が居なくなり、ようやく味方は姿を現した。
「父上!?」
味方はアシュラの父親だった。敵と同じように認識阻害の魔法で近付き、油断した隙を、文字通り氷柱で突いたわけだ。
…………何かこう、昂ったやる気とかその他諸々が消え去ったが、何にせよこれでフィーたちを裏切らなく済む。
色々あったが、往々にして人生とはこんな物だと悟った。
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