――夢見る乙女――
第28話 むくのアトリエ
――夢見る乙女――
□第28話□
□むくのアトリエ□
――翌年、三月一六日。むくのアトリエにて。
『私』は、むくです。
むくが描いた絵が沢山飾られて、まるでギャラリーの様です。
Aya様から三〇〇〇〇〇〇万円で、新居にレンタルしたいと言われた、『無垢の妖精』を快く渡しました。
だから、こちらにあるのは、その写真のパネルになっています。
お陰で、“
寅祐さんも泣かないでしょう。
よく、分からないのが、クリスマスツリーとオーナメント。
ウルフおじいちゃまの血が騒いだ奮発だそうです。
うふ。
だって、今日は、むくのお誕生日なのですよ。
♪ ハッピーバースデー、むーく。
♪ ハッピーバースデー、むーく。
♪ ハッピーバースデー、むくちゃーん。
♪ ハッピーバースデー、むーく。
「おめでとう! むくちゃん!」
「一六歳、おめでとう!」
「ありがとうございます。お誕生会、嬉しいです」
「良かったね、こんなに大きく育って。私も安心だわ」
「母さん、一五〇センチちょいだよ、むくちゃんは」
「美舞、マリアお義母さんは、身長の話をしていないって」
「儂は、元気であれば良し」
「そうね、ウルフ」
ウルフおじいちゃまの一目惚れとマリアおばあちゃまの恥ずかしがりやさんで結婚したと聞いていますが、おばあちゃまは嘘だと言っています。
大人は少し難しいです。
「むくちゃんは、ケーキのどこがいい? じいじが取るぞ」
「まーまだったら、プレートのホワイトチョコをあげるよ? むくちゃん」
「ちょっと、アレは? アレ!」
「アレですね、マリアお義母さん。ロウソクでふうー」
その二人の間に、美舞まーまが生まれ、玲ぱーぱとは、運命の中、出逢ったのです。
玲ぱーぱは美舞まーまに結婚を申し込んだのは自分だと言っていますが、美舞まーまは気を失っていたから知らないと言っています。
やはり、大人は少し難しいです。
「ロウソクやるの? 玲?」
「アレと言ったら、ロウソクでしょう。ね、マリアお義母さん」
「それも良いわね」
「え! 違うのですか? お義母さん」
「アレと言ったら、アレじゃ。ぱーんってするの。な、マリア」
「それも良いけど、アレはアレなのよ」
「何だろうね、玲」
「考えてみるよ、まーま」
美舞まーまと玲ぱーぱは、大人になってから結婚し、流星の囁きにより、むくを授かりました。
むくに病気がありましたが、怯まないと、両親は、誓ってくれました。
「あー、アレがここ迄出掛かっているのに、分からないわ」
「母さん、落ち着いて」
「大丈夫じゃ、何とかなる。儂も、アレアレになる時がある」
『むく』の名前は、白無垢の無垢から、ぱーぱとまーまで、お腹にいる時に、付けてくれました。
無垢は、汚れのない純真を表します。
だから、『むく』が、『僕』でも『私』でも構わないのです。
でも、自分の事は、『むく』と言う事にしました。
今の所、周りの方がしっくり来るようです。
「そうだ! プレゼントかな? お義母さん」
「あ、そうよ! そうね! 玲君」
「当たった? 母さん」
「あー、良かったのう」
パチパチパチパチ……!
「むくちゃん、ハッピーバースデー!」
「ハッピーバースデー! むくちゃん!」
「一六歳、本当におめでとう!」
「生まれてくれて、ありがとう!」
「幸せになろう……!」
「ありがとうございます。嬉しいです」
ウルフおじいちゃまとマリアおばあちゃま、玲ぱーぱと美舞まーまも結婚し、そしてむくも今日存在できるのです。
しかし、むくは、結婚できないと独りで悩んでいました。
でも、ドイツで診て貰ったら、むくは結婚できると玲ぱーぱや水島先生が仰ってくれました。
心配でしたから、安心しました。
ただし、理解のある男性にした方がいいそうです。
今、内緒にしている事があります。
それは、好きな人が出来た事です。
神崎亮先輩の、“T” 大学にお茶を飲みに行って知り合った
むくが赤くなっているのを亮先輩は見抜きました。
オトコの趣味が悪いと散々叱られて、困っています。
亮先輩は、お茶をする度にケソむくと呼ぶ様になり、ある意味親しみを込められている気分です。
いつか、くすくすくす……。
白馬の王子様ですか?
現れて、無事告白できたらですが、ご紹介します。
それより、気になるのは、ケソむくです。
むくだって、夢見る乙女なのです……!
――むくは、もう元気です。
Fin.
むくのアトリエ いすみ 静江 @uhi_cna
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