目に見えぬもの

夜明けの花

【和色:東雲色しののめいろ


 闇から光へと移り行く明け方の、太陽の光で白み始めた東の空を思わせる、黄味を帯びた明るいピンク色。


 東の雲が薄桃色に染まり、「しのの目(現在の網戸の網目にあたる)」から朝の光が差し込む様子を映した色。

 


***



 琉球王国の民俗を伝える数少ない歴史資料のひとつとして、沖縄の古謡おもろを集めた『おもろうし』がある。

 歌を意味する「おもろ」には、もうひとつ、「思い」という意味もある。

 現在では使われない「琉球古語」で思いを込めてうたわれたのは、祭祀における祝詞うむいだったと解釈されている。


 

『天に鳴響とよ大主おおぬし

 明けもどろの花の

 咲い渡り

 あれよ 見れよ

 清らやよ』


 天地に鳴り響く太陽よ

 夜明けの光が(まるで)花が

 咲き渡る(ように、ゆらりと揺れながら辺りを紅く染めていくさまを)

 あれを見よ

 何と美しいことか



 沖縄の古い言葉が描き出すのは、美しい夜明けの光景だ。

 明けの空と大海原の境界がかすんで見えなくなるほどの輝きをまとった太陽が、東の彼方からゆっくりと昇り、世界の全てを紅く染め上げて行くさまを、いにしえの沖縄では「明けもどろの花」と呼んだ。


 かつて、琉球王国は太陽てぃだを最高神とする東方信仰を根幹に置き、国王は「太陽の子てぃだこ」と称された。

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