第150話 魔女達の狙い その4

 暫く俺は1人で海の向こうを眺めていた。


 ……面白い、ねぇ。


 考えてみれば、俺は同じことを繰り返しているのかもしれない。


 自分は何もない人間と言いながら、結局、また自分にとって大事なものを見つけた……というより、探し出してしまった。


 そして、また困難な状況に陥っている。


「……面白い、かもな」


 思わず自嘲気味な笑みが溢れる。くだらない……そう思えてきてしまう。


 ふと、俺は海面を見る。


 いっそ、この海面に飛び込んでしまえば……全部終わる。確かにそれは最低な行為だが……俺はもともと、親友と最愛の人間を殺した最低な人間だ。ここで全ての事柄から逃げ出したって……


 思わず俺は身を乗り出す。青い海面が少しずつ近づいてくる……そんな気がした。


 そして――


「何をしているんだい?」


 と、背後から声が聞こえてきた。


 俺は振り返る。見ると、そこに立っていたのは……


「……ウルスラ、か」


 見ると、相変わらずのニタニタ笑いでウルスラが俺のことを見ている。


「どうしたんだい? 海なんて見て。君らしくない」


 そういって、ウルスラは俺の隣にやってくる。


「……別にお前に関係ないだろ」


「フフッ……クラウディアに何か言われたのかい?」


 どうやらわかっているようで、ウルスラは嬉しそうに俺にそう言う。


「……アイツは、俺を面白い人間だとさ」


「面白い? アハハッ……クラウディアらしいね」


 ウルスラはそう言って嬉しそうに笑う。俺は……笑えなかった。


「……で、お前は何の用だ?」


 俺が訊ねると、ウルスラは真剣な表情で俺のことを見る。


「いやね……そろそろ君がクラウディアから精神的なダメージを受けている頃だと思ってね」


「……俺が? ハッ……馬鹿な」


「……言われたくないこと、言われたんじゃないのかい?」


 ウルスラの言葉に俺は何も言うことができなかった。俺はただ、ウルスラのこと見返すことしかできなかった。


「だったら……どうなんだ?」


「気にするな……とは言っても気休めにしかならないだろうが……そう言いたかったんだ」


 そう言って、ウルスラは海の向こうを見つめている。


「……確かに君は面白い人間かもしれないが……根本的に僕達は同じような人間だよ」


「何? 俺と……お前もか?」


 俺がそう言うとウルスラは小さく頷く。


「嫌かい? 僕と同類の人間にされるのは」


 そう言われて俺は面食らったが……思わず笑ってしまった。


「……いや、同じようなものだな」


 俺がそう言うとウルスラは苦笑いする。


「……姫様のこと、すまない」


 暫く経ってから、ウルスラは小さな声でそう言った。俺は何も言わずウルスラを見る。


「……謝るなんて、お前らしくないぞ」


 俺がそう言うとウルスラはキョトンとした顔で俺を見る。


「……今の僕の行動そのものが……僕らしくないんだよ」


 そう小さく呟くウルスラは……今まで見たことのない感じでとても寂しそうな表情だった。

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哀れな殺戮人形と愛しき魔人形 味噌わさび @NNMM

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