第2話 春
高校に入ってからは素行の悪い奴らと絡まないようにした。
中学の頃はサボりがちだった部活だって毎日参加するようになった。
ただ、女遊びだけは治らずに高校でも続き、まともに恋愛をしたことがない。というよりも初恋すらもまだだ。
こんな自分が誰かを大切に出来るとはとてもじゃないけどありえないとわかっていたからだ。
高1の冬。
僕はそのとき小遣い稼ぎのために学校よりも少し離れたコンビニでバイトしていた。
あまり同校の人は来ない場所にあったのもあって滅多に会うことはない。
はずなのだが、なぜか一人来た。
僕と同じ学年色のネクタイをつけた見知らぬ女子生徒。
なぜかすごく印象に残る人だなふと思った。
身長はすごく小さくて、150もないのであろう背丈。肩あたりまでの若干色素の薄い髪はサラサラしており歩くたびに揺れ、桜色の唇はきゅっと結ばれている。美人とまではいかない整った顔は愛想がない。
視線に気づいたのか、彼女が僕を見る。
僕は咄嗟のことで目を逸らすのが遅れ、取りあえず愛想笑いをする。
すると彼女は一瞬驚いた顔をした後、とても嬉しそうに笑顔をこぼした。けれどその笑顔は束の間で、彼女ははっとしたようにもとの無愛想な顔をして何も買わずにさっさと店を出て行った。
僕はといえば、彼女の無愛想な顔からのギャップで少し驚いていたのと、少し胸がきゅっと初めてなった痛みで動けなかった。
それから彼女の事が気になって、彼女がどこのクラスなのかというのを一つ一つのクラスを回って見つけた。
彼女の名前は『高久 愛乃』と言うらしく、最近この学校にきた転校生だった。
“可愛い ”とか、“美人 ”とかそんな噂を何度も耳にしたことがあった。
だがクラスが別だったのもあったし、ただ単に面倒だったのもあって他の奴らみたいにわざわざ見に行ったりはせずに似たような日々を僕はただ過ごしていた。だから多分顔を見たことは一度も無い。
だからあの時彼女に嬉しそうな笑顔を向けられる理由が僕にはない。たまたまそのときレジの後ろにあったぬいぐるみが好みだったのかもしれない。
でも僕はそのときの笑顔を見た瞬間、初めて感じた感覚と、一目惚れが実在するというのを初めて知った。
初めて、恋を知った日だった。
僕は何度だって 陽日 @25smile39
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