第1話 春
僕の親父はだらしのない男だった。
仕事こそは出来る人で頭も良かったらしいが、昔から女遊びがひどく、股をかけることなんて珍しくなかったらしい。
更には酒を飲むと暴力をふるうような人で、小さい頃自分とお袋がよく犠牲になっていたのを覚えている。
僕が小学3年生の頃。
そんな親父がある日ぽっくりと死んだ。
死因は脳梗塞で、過度な飲酒が原因ではないかという話だったらしい。
親父の葬式の日、仕事場の人たちや親戚の人たちがたくさんいて親父の死を悲しんだ。
お袋はただ一人安堵の表情を浮かべ、僕に『これからは安心して暮らせるね』と言っていたのを今でも鮮明に憶えている。
そんなお袋を見たとき、自分がしっかりしなければ。親父みたいには絶対にならないと決心した。
決心したはずだったのだ。
小学生から中学に上がってから、少し素行の悪い奴らと絡むようになった。
おかげで普通の子供の言う公園で、カラオケで遊ぶというのとは違う遊びを覚えた。
夜帰るのも遅くなり、中3の頃には飲酒もしていたし、女遊びもするようになった。幸い、酒癖は悪くはなく小さい頃の親父の飲酒したあとの記憶が脳にこびりついていて酒を飲んだのはほんの数回。飲んだとしても小さめの缶の四分の一程度。
それでも飲酒したことには変わりはない。
そして『親父みたいにはならない』という決心は簡単に消え失せ、親父のように女遊びをするだらしのない男になってしまった。
何も言わずに、お袋の目は泣いていた。
きっと親父のように暴力をふるうのではないかと怯えていたんだと思う。
何度もやめようとは思った。でもやめられなくて、代わりにと言ってはあれだが受験勉強を塾に行かずに必死になって勉強してそれなりの高校に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます