オーバーキルゲームのレベル100

ちびまるフォイ

てめぇの血はなにいろだーー!

オーバーキルゲームへようこそ。

ここではあなたが悪い人をどれだけ追加でボコれるかテストします。


レベル1


壁が回転して、イスに縛り付けられた男が流れてきた。

なんかもうこれだけでかわいそう。


「追加でボコるって……こんな無抵抗な人間を!?」


――そうです。


「そんなこと、できるわけない!

 無抵抗な相手に振るうなんて暴力以外のなにものでもない!」


レベル1:盗みを働いた


「え?」


――この人は盗みを働きました。


老夫婦が切り盛りしている小さな雑貨屋さん。

儲けは少ないけれど近所の人の憩いの場になっていたお店。

そこに強盗へ入った男はまんまとお金を取って逃走。

まもなく、そのお店はつぶれてしまいました。


それを聞いた俺は迷わず男をぶん殴った。


「このクズ!! お前が盗んだ金がどれほど大事な資金だったか!!!」


レベル1クリア。



――レベル2


今度はすでに傷ついている男が流れてきた。


「なんて痛々しい……これ以上、この人を傷つけることなんてできない!」


レベル2:児童虐待

この人は実の子供はもちろん、他人の子供にも暴行を加えました。


床に転がる男の腹を蹴り上げた。


「おいお前!! 痛いか!? 痛いよな!?

 だけどな! 大人が子供に振るう暴力はこれの100倍痛くて怖いんだ!!」


レベル2クリア。



――レベル3


ボロボロの女が運ばれてきた。

俺はもう迷わずに制裁を加えた。


――レベル4


身体障害を持っている2人が運ばれてきた。

もちろんすぐに制裁をくわえた。

どんな相手だろうと誰だろうと、ここにいるのは悪人だった。


 ・

 ・

 ・


――レベル99


顔がぱんぱんにはれている男がやってきた。

だからなんだ。

きっとこいつも、ほかの人にひどいことをしたクズだ。


迷わずにぶん殴って床に倒すと、倒れた男を何度も何度も蹴り続けた。


レベル99クリア。


「それで、この男はいったいどんなクズ野郎なんだ?」



――この男は、オーバーキルゲームでレベル99まで進んだ人間です。



「ああ、なるほどね。それじゃ少なくとも99人に暴力ってわけか。

 それはたしかにクズだ。もうちょっと殴っておけばよかった」


その瞬間、床からアームが出てきて俺の体を拘束する。


「お? 次のレベル100は違った感じでやるのか?

 いいね、クズが流れてきて殴るだけじゃ飽きていたところさ」




レベル100 スタート。



壁が回転すると、向こうからは目をギラつかせた男がやってきた。

俺の拘束はまるで外れない。


「どうなってる? これじゃ制裁加えられないじゃないか!」



レベル100:レベル99まで進んだあげく、

       自分の振るった暴力に罪悪感を感じていない人間。



「それってまさか……」


――あなたは制裁を受ける側です。



やってきた男に俺はしこたま殴られた。

いくら反省しても暴力はかわるがわる行われ、止まることはなかった。


「このクズ! このクズめ!!」


殴られて気付いた。

俺を殴る人の目も、俺と同じクズの目をしていた。

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