先輩
夕方。何の前触れもなくテレビの画面が切り替わる。
「来たか・・・。今日こそ奴を成仏(?)させる手がかりを掴まねば。・・・ん?なんかいつもと違う気がするぞ。」
画面ではいつものように井戸から出てくる不法侵入者の姿。しかし、なんかこう、いつもより動作が大げさな気がする。
「なにやってんだこいつ。」
前やったように、走って出てくれば数秒で出てこれるのに、今日はノロノロと5分ほどかかっている。
「どうだった!?怖かった?ねーねー!」
満面の笑みを浮かべながら、聞いてくる彼女。
「顔が近い。どうだったって・・・なにやってんだこいつって・・・。」
「ええー!?今日は結構気合い入れて出てきたつもりなんだけど。感性おかしいんじゃないの?」
「しばくぞ。てか普通に出てくればいいだろ。まあ、もう来ないでくれたら一番うれしいのだが。」
「馬鹿だなー。一回一回の演技が大切なんだよ。あーあ。最初の時はめっちゃ怖がってくれたのに。」
「お前はそこですっ転げてたけどな。」
「ぐぬぬ・・。」
「・・・前から思ってたんだけどさ、井戸から出てくるってモロあれじゃん。貞〇じゃん。」
「だってわたし貞〇先輩のこと尊敬してるもん。」
「えっ」
「えっ」
「ちょっと待て・・・。貞〇先輩ってお前・・・。あの貞〇いんの?」
「いるにきまってんじゃん。有名人だよ。」
もはや世界観が全く分からない。謎が謎を呼ぶとはこのことか。
「先輩はまじですごいのよ!映画にも出るくらい有名になったのに、私のようなひよっこにも優しくしてくれて。ほんとかっこいい・・・」
・・・ツッコみが追い付かない。
「ま、まあその話は今度ゆっくり聞かせてもらうとして・・・俺のこと怖がらせることが目的じゃないよな?前に暇つぶしって言ってたが。」
「そだよ。でも毎回マンネリ化するのもどうかなって」
「怖がらせたいならもっとこうあるだろ。深夜に出てくるとか。まあ俺はもう怖がることはないと思うが。」
「いやー、それも考えたことあるんだけど、深夜君んちテレビあんまり点いてることないしさー。それに夜遅くにお邪魔するのも悪いしね。」
「そういうとこ気にする前に、普段俺ん家に不法侵入していることについて気にしろ。」
「よし・・・それじゃあ、今度は夜来るね!」
「お前おれの話し全く聞いてないだろ。」
今回も何も進展はなかった。というか、謎が増えるばっかりで毎回こいつとダラダラと無意味な話しをして終わっている気がする・・・。
静かな俺の平穏な日々はまだ取り戻せそうにない。
幽霊ちゃんとの無意味な日常。 くろのくん @kuronokun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幽霊ちゃんとの無意味な日常。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます