質問
「おっすー、元気にしてたかー?」
さも当たり前のことのようにテレビからわが家へ侵入してくる少女。
「テレビ捨てようかな」
「や、やめろぉ!それだけはやめろぉ!」
こいつがうちに現れるのは今日で4回目。早くも俺は究極の対策法を思いついていた。そう、テレビをずっとつけないorテレビを捨てる、だ。テレビが唯一の侵入手段であるこいつにとって、もはやどうすることもできないだろう。
しかし・・・つい最近買い換えたテレビを捨てるのももったいない気がする。それにまた買い替えたところで、こいつが現れなくなるという保証はない。いったい何が原因なのか・・・
「いいじゃんかよー、ちょっと遊ぶだけだからさー、・・・ダメ?」
「ちょっと可愛い声出したって無駄だぞ。俺は昨日の地獄のようなババ抜きを忘れていない。」
「だってー、キミ強いんだもん」
「てめーが壊滅的に弱すぎるんだよ・・・そんなことより、今日はお前にいくつか質問がある。」
「土下座してくれたら答えてあげないでもない。」
「さて、近くのリサイクルショップは今日開いてるかな?」
「すみませんでした。調子乗りました。なんでも答えます。」
何とかいろいろと聞き出して、この現象の原因を突き止めねば。
「まず、何歳よ。見たところ中高生っぽいが。」
「わかんない。」
「白装束きてるけど、死んでんの?」
「んー、たぶん死んでる。」
「どうやって画面の向こうから出て来てる?」
「んーとね、こう・・・ブワッと・・・?」
「やっぱりテレビは諦めるしかないのか・・・。」
「わーーー!ほんとだよ!まじ!まじのまじでわかんないんです!」
・・・とてもこいつが嘘をついているように見えない。どうしよう。原因の『げ』の字も掴めない。
今分かっていることは、テレビがついている間だけ俺の部屋に出入りできるということ。さらに、侵入出来るには一日一回の5分間だということ。
「ん?待てよ。あっちの井戸の中ではどうやって過ごしてんだ?」
「早く君んちのテレビが点くことを願いながら過ごしてる。」
「えっなにそれ怖いんですけど。ストーカーかよ。」
「だってー、暇すぎて死にそうなんだもん。」
「生きてるか死んでるかどっちなんだよ。」
その後、いくつか質問を繰り返してみたが謎は深まるばかりで、解決の糸口は見つかりそうもなかった。
この世に未練がある地縛霊とかを想像していたが、そんなありきたりな存在ではないらしい。アホの子のくせに。
「あっ、おかーさんが呼んでるっぽいから今日は帰るね。また明日なー」
「おーう。もう来るなよー。」
テレビの中の井戸へと消えていく少女の姿を見送る。
画面が民放に切り替わってからある違和感に気づく。
「おかーさんってなんだよ!?」
彼女の謎は解けそうにない・・・
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