すべてのテディベアを殺せ

作者 枕目

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★★★ Excellent!!!

重苦しさを感じすぎない読みやすい文体で、ずぶずぶと取り返しのつかないところまで堕ちていく感覚が楽しめる名作。
現実の技術でギリギリでありえそうなリアリティラインを攻めていく技巧はさすがです。
オチは予定調和な部分もわずかにありましたがシンプルゆえに強力。楽しませていただきました。

★★★ Excellent!!!

かつて、NHKスペシャル「映像の世紀」で取り上げられた第一次世界大戦を経験したチャーチルの言葉。
「戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。
アレキサンダーや、シーザーや、ナポレオンが兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。
そんなことはもう、なくなった。

これからの英雄は、安全で静かで、物憂い事務室にいて、書記官達に取り囲まれて座る。
一方何千という兵士達が、電話一本で機械の力によって殺され、息の根を止められる。これから先に起こる戦争は、女性や、子供や、一般市民全体を殺すことになるだろう。」

戦争から、人を殺す実感や罪悪感、嫌悪感を消し去ることは、PTSDの問題などを考えれば、先進的で人道的なのでしょう。
しかしながら神が人に与えた戒律「汝、殺すなかれ」の禁忌を犯すことの代償として殺人を犯すことの罪悪感を与えられるのだとしたら、罪悪感を消し去ることは、別の意味でおぞましく人道に反したことなのかも知れません。

★★★ Excellent!!!

短編に長い文を添えてどうなるというのだろう。
ただ、私は短文がとても苦手だ。

何一つ、予想外の事は起きない。
それこそが悲劇のリアリティだ。
それはホラーのリアルでもある。

主人公性を剥ぎ取り、御都合主義を剥ぎ取ると、
他者に対する怠惰、相手の最適に対する怠惰は、
ごく「普通」に、その「運命」まで怠惰にする。

「なぜコイツを区別しなきゃならないんだ?」
いつだって、世界はモブのモブらしさの味方だ。

人にとって、人とは経験の産物としての技能だ。
前世であれ貰い物スキルであれ、技能こそ個だ。
ならば、英雄になる前の英雄は、こんなものだ。

彼は、英雄で居られるだろうか。
それとも、道半ばで止まるのか。

この「体験」の持ち主が、「技能」の持ち主だ。
それを借りるだけの物は、その道具でしか無い。
彼は英雄のように平凡だ。

大きさとは、区別もされない頭数のことである。
偉大さも、例外ではない。

< 最後は運だけどな それを言っちゃ御仕舞よ

★★ Very Good!!

子供の頃していたゲームを思い出します。

テディベアとは似ても似つかない敵キャラをやっつける。
というのは、とても面白くて。

お菓子を食べながらしていたような記憶があります。

子供では、ない今。

ゲームというのが、一種の産業化しているという

ニュースのようなサイトがあるのは、

特段意識せざるをえないでしょう。

★★★ Excellent!!!

主人公に与えられた仕事はゲーム感覚で視界に入るテディベアを撃つこと――簡単なように見える仕事だが、その視界は検閲されていて――というストーリー。
その仕事内容と世界観・設定に引き込まれます。

その結末に、読後にいろいろなことを考えさせられます。

あなたはこの仕事をやってみたいですか?

★★★ Excellent!!!

ゲームと現実。生と死。画面の中の戦争。生きることの意味……。作品の中にあるテーマはSF的でシリアスですが、主人公の男の突き詰めて冷めた視点と、とにかく読みやすい文章でぐいぐい引き込まれます。

自分にはゲームくらいしか取り柄がないと思っていた男は、その才能を生かした職に就いたことで人間としての生きる実感を手に入れることができるのか、それとも……。
中盤の淡々とした描写からの終盤の一気に転がり落ちていくような展開は刮目です。

★★★ Excellent!!!

本作はある一人のゲーマーの話だ。
ひきこもりだった彼は、ある日得意とするFPSの腕前を活かしたゲームの仕事を見つけてくる。
その内容は彼がログインしたゲームの中でテディベアを撃ち殺していくだけ。
たったそれだけで、彼の口座にかなりの金額が振り込まれるというものだ。

しかし、彼は気付いていなかったが、実は彼が本当に殺していたのは…………。

と、普通ならそういう展開になりそうなのだが、本作はそういった話運びはしない。

主人公は自分が殺している物の正体を最初から把握していて、それを労働と割り切っているのだ。
「神経コン」や「ポリアンナ」といった近未来技術のサポートを受けた彼がテディベアを殺していく様子は鬼気迫るといったものではない。むしろ、普段の生活と変わらぬ落ち着いた様子である。

その淡々とした語り口に、読者も「近い将来こんな世界が当たり前になってもおかしくない」と作中で書かれている様々な歪みをスルーしてしまいそうになる。

設定面だけではなく、異常な状況を日常の延長線上であるかのように見せかける筆力も含めて、実に面白いSFだ。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)

★★★ Excellent!!!

非常に読みやすく、入り込みやすい文体で、あまり小説を読まない方にもお勧めできる作品です。
話の流れも簡潔に纏められており、読むにつれて先の展開も予想しやすい作品ではあります。

ですがそれ故に、描かれた結末は心に刺さり、作中では描かれなかった彼のその先は、想像すれば想像するほどに、この作品の印象を強くさせると思われます。

★★★ Excellent!!!

神経コンやその他のSFガジェットの説明が非常に理解しやすく
物語世界に入ってきやすいです。
なんとなく虐殺器官の冒頭の人工筋肉でバイスを思い起こしましたが
それよりも理解しやすいし読みやすいです。
提起されてる問題も今そこにある誰もが薄々気づいてるもので共有しやすいと思います