最終回 春人 女神と温泉でのんびりする
「まああぁぁた温泉の時間だあああぁぁ!!」
「オメガうるさい。本当にうるさい」
「やかましい女だ」
アクセルのいた異世界を旅立ち、疲れを癒やすために温泉に来た春人一行。
今回は超豪華な最高級ゴージャス温泉である。
「露天風呂もいいが、こういった大浴場も素晴らしい。俺の偉大さによく似合う」
三人で入るには、あまりにも広い室内大浴場は貸し切りである。
高所に作られており、ガラスの先には美しい夜景が広がっていた。
「春人くん。今回は普通に寄り添おうじゃないか。こうして夫婦で寄り添い風情を楽しむのさ」
「お前に風情がわかるのか?」
「風情も粋もわびさびも知っている。けれど好きじゃないのさ。人間の感覚というか……勝手なルールで悦に浸る姿が気に入らない。だから粋とかわびさびが嫌いなのさ」
「アルファはどっちでもいい。春人様がしたいようにすればいい」
春人に寄り添う二人。しばしゆったりとした時間が流れ、自然と今までの出来事が三人の心に浮かぶ。
「色々あったな」
「楽しかった。エメラルドを助けて」
「ああ、マリーナと婚約なんかしてくれちゃって」
「決戦の舞台では、随分とお前のマイクがうるさかったな」
「あれはうるさかった」
「いいじゃないか。盛り上がっていたろう」
好き放題やった結果、あれほどの祭りになった。
だが一度で飽きた。あれは一回限りだからこそ楽しめる。そう春人は理解した。
「宇宙船にも乗ったね」
「私は完全に置いて行かれたけどね」
「トートのせいだな。そして料理勝負だ。意外な才能に驚いたぞ」
「そうそう、そこからオーガと戦うことになったねえ」
春人が話しながら湯船から出る。自然と二人も続き、春人の背中を流す。
「俺はな、アクセルのようなものを育てるのも面白いと思っている」
「師匠って呼ばれるの、実は嬉しかったんだろう?」
「春人様、楽しそうだった」
「ああ、この俺が教えるのに相応しい人間など数えるほどだろう。それも全世界に数人いればいいほど少数だ」
背中を流してもらった春人は、今度は二人の背中を流す。
そこに照れや情欲はない。三人の絆は家族と呼べるものになっていた。
「その人を見つけに行く?」
「いいや、俺は俺のやりたいように異世界を楽しむ。その過程で見つかればそれでよし、見つからずとも、この俺……勇希春人は永遠に不滅。なんの問題もない」
「アルファはずっとついて行くよ」
「無論、私もだよ」
「そうしてくれると助かる。俺の往く道は、やはり三人でなければな」
流し終えて、湯冷めしないように軽く湯船に浸かる。
「今までの世界は俺を楽しませてくれた。このままでは世界が俺の期待に応えられず、プレッシャーに押し潰されるかもしれんな」
「異世界も楽じゃあないねえ。春人くんを楽しませることはできるのか」
「つまらなかったらアルファとオメガで楽しくします」
「それは素晴らしいな。つまらない世界なら、楽しく変えてやるのも一興か」
どんな世界でも彼らのやることは変わらない。
楽しみながら救い、飽きたら別の世界へと渡る。
「よし、あがるか」
「今日のご飯はフルコースらしいよ」
「豪華なご飯。期待でアルファのテンションが上がるよ」
「よかろう、まずはこの世界の料理を食い尽くしてくれるわ」
無数にある異世界を徹底的に遊び尽くし、その威光を示す。
それが救世主であり、無職童貞流開祖としての春人である。
「次は温泉旅館が全てを決める世界でも見つけて豪遊するか」
こうして三人の休日は過ぎていった。
彼らが休日を終えたら、また旅は続く。
それがいつになるかはわからない。
だが、世界が無数に存在する限り、春人の旅に終わりはないのである。
いつかまた彼らの英雄譚が語られる日も来るだろう。
それまで、この物語とはしばしお別れである。
また会う日まで。完。
超スーパー俺様TUEEE無職ハルト 白銀天城 @riyoudekimasenngaoosugiru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます