第14話 鬼5 律
ああ、楽しかった。
今日は彼とデートだった。
地元の真室川はな~んにも無い町だけど、駅はある。
1時間に1本程度の無人駅。
そこで待ち合わせて、隣の新庄市で遊ぶ。
この町の若者は大抵そうなんじゃないかな?
…大人でもそうかな。飲み屋さんもほとんどないしね。
私は雪女の末裔だけど、ほぼ人間と変わらないから感性だって一緒。
彼と手をつなげばドキドキするし、キスだってしたい。
可愛いって思ってもらいたいし、その先の大人のアレだって…って私何を考えてるのおおおお!?
…彼だってそうしたいって思ってくれてるよね…?
あー、自分の顔が真っ赤なのが分かる。
今電車の中だけど周りの人、変に思ってないよね?
見られてないよね!?は…恥ずかしい!
…でも、本当に楽しかった。
服も選んでもらえたし、今度お家に遊びに行くときに着て行こう。
喜んでくれるといいなあ。
っと。駅に到着。
彼と一緒に帰ってくればもっとお話しできたんだけど…。
用事があるとかで帰りは一人。
電話で何か話してたけど、妙に険しい顔してたなあ。
何だったのかな?
ブツブツと考えながら、駅前を歩いていたら声をかけられた。
あんまり聞きたくなかった声だ。
「よお、律。少し付き合ってもらうぜ」
その声を聞いた直後、私は気を失った。
……………?
何か話声が聞こえる……?
「若様よぉ、ありゃあ随分良い体つきしてんなあ?早くスッキリしたいんだけどよお」
「バカかてめぇ、アレは若様の女だろうが」
いいからだつき?わかさまのおんな?
ダメだ。頭がぼーっとして何のことなのか分からない。
でもこれだけは分かる。
粘つくいやらしい声音。耳が腐り落ちそうな嫌悪感を孕んだ気持ち悪い声だ。
「馬鹿野郎。誰がお前らの若様だよ?佐藤って呼べよタコが」
「ひひ…わりーって。そんな怒んなよお」
さとう?…ってあの佐藤?
そうだった。デート帰りのホワホワしてるときにあの不愉快な声を聞いて…それから…?
覚えてない。何か刺激臭を嗅いだような?
何かを嗅がされて、気絶してどこかに運ばれたのかも知れない。
私が状況を把握しようとしていたら、いつの間にか話し声が聞こえなくなっていた。
代わりに聞こえるのは足音。
誰かがここに来る。
「おお?腐っても雪女だな?もう目が覚めたのか」
佐藤だった。
「私に何をしたんですか?これから何をするつもりなんですか?」
「なんで敬語だよ?…まあいいや。これから守をおびき寄せるんだよ」
「守君を…?呼び出して何を…」
「決まってんだろ?ぐちゃぐちゃに痛めつけて目の前でお前を俺の女にすんだよ」
「…はい?」
「楽しみだぜえ…アイツの泣き叫ぶ姿を見れるのが!」
この男が何を言っているのか理解できない。
目の前で私を自分の女にする?
…???
「…んだよその顔は?絶望するところだろここはよお?」
「私を自分の女にする…の意味が分からないので」
「ガキか!アイツの目の前でお前を犯しぬいてやるって言ってんだよ!」
ようやく分かった。
最低だとは思っていたけど、ここまでの下衆とは…。
大体、犯したから自分の女になるという発想が頭おかしい。
憎しみを覚える事があってもそんなことをされて愛情が芽生えるようなことは絶対にない。
そんなことすら分からないのだろうか?
どうやら心の中で考えているつもりが声に出ていたらしい。
佐藤は顔を真っ赤にして私を睨みつけていた。
「はっ…気のつええこったな…安心しろよ。お前の意思に関係なく発情させてやる」
「そんなこと出来る訳がないでしょうバカなんじゃないですか?」
「ククク…人間の世の中には媚薬なんてモンがあるらしいなあ?」
「媚薬…」
「催淫剤ってーの?男女関係なく発情するってアレだ。それを改良したんだよ!」
「そんな物が…それを私に使うと?」
「もう使ってるぜ?一時的に意識が混濁するらしいがな」
「まさか」
「お前に声かけた後に嗅がせたアレだよ。効果は数時間、遅効性のクスリだ」
信じられない。
そんなアホな薬を他人に使ったの!?
副作用とかそんなのを考えたことないのかしら本当に!
そう言えば気のせいか体が火照ってるような気もする。
まさか本当に効果がある薬品なのかもしれない。
「理解したかあ?守のヤツがボコボコにされる頃には我慢なんて無理な状態だろうぜ」
「…」
「ボロボロのアイツの前で!お前は俺に犯してくれって懇願してくる訳だ!ククク…クハハハハ!」
「気持ち悪い…」
「クク…今のうちに強がっておけよ。自分からケツ振って俺に縋りつくようになる前になあ」
ああ、それと。
そう前置いて佐藤は言い放った。
「守はもう呼び出してあるぜ。携帯にお前の写真送ってやったからなあ。今頃センズリしてっかもしれねえけど!」
センズリというのが何かは分からなかったけどロクでもない事を言っているのは分かる。
何せこの男は下衆なのだ。
下らない意味に決まってる。
気になるのは私のどんな姿をメールしたのかだけど…。
お願い守君…気を付けて。
出来れば本当かもしれない薬の効果が出る前に助けて…。
初めてがあんなのなんて絶対に嫌だ。
それこそそこらの野良犬に捧げたほうが幸せに違いない。
いや、私の初めての人は彼だ。
そう決まってるんだ。
彼が私を見捨てるなんてありえないから…だったら私の初めては守君のモノ。
絶対だ。
彼女と二人の妖怪暮らし 水無月 @reo771
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。彼女と二人の妖怪暮らしの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます