第1章 1話 『少年の脱出』
――一体どれだけの時が流れただろう。
回りは岩で囲まれており、ただ淡い一つの光だけがこの空間を照らしている。その中には一人の少年が身を地面に預け仰向けに倒れている。
よく見ると少年の両手両足には黄色い複雑な字が書かれた札がついている鎖に繋がれている。
「何年経過した、いや、何百年くらい経ったかな。」
鎖に繋がれている両手を組み、その上に頭をおき、少年は大きな欠伸を一つする。
他の人から見れば特徴などあまりない少年だ。ストレートに伸びだ黒い髪に、高くも低くもない普通男性の平均的な身長。体は相当な筋肉質で、服は患者服のような汚れた白い服を着ている。着痩せするタイプだ。
そんな少年の特徴をひとついうなら、暗闇も照らしそうな真紅に染まる紅い目。だが、その目にも力はなく、覇気などもあまりない。
「はあ。外に出ようかな。」
少年から発せられた言葉に今置かれている状況。どうやら少年はこの暗闇に閉じ込められていたらしい。
少年は今にも倒れそうなくらいふらつきながら立ち上がる。すると少年は両手の指を絡ませ、背伸びを一回だけする。ポキポキと指の骨が鳴る音が空間に響き渡る。そしてそのまま体を左右に曲げる。すると次は指とは違う大きな骨の音が空間に響き渡る。今回は腰の骨の鳴る音のようだ。
続いて少年は首の根本に手をおき、首を左右に曲げる。すると先程とはまた違う骨の鳴る音が空間に響き渡る。
「やっべ。こんなに骨って鳴るもんなんだな。」
少年は自分の骨に驚く。ここまで骨を鳴らす人間はそうそういないだろう。少年はゆっくりと目の前の鉄格子に近づき、それを掴もうとする――だが少年が触れようとした瞬間、鉄格子に謎の『結界』のようなものが現れ、それに触れようとするとバチバチっと電気のようなものが流れる。
よく見ると鉄格子にも鎖と同じような札が貼られており、もう一歩近づこうとすると次は鎖から電気のようなものが流れ、少年を襲う。
「こんなもんまで仕掛けられていたのかよ。」
少年はどうやら札の事をはじめて知ったような口で言葉を走らせる。どうやら札の存在は気づいていたようだが、札の『特徴』には気づいていないようだった。
まるでなにか危険なものでも封印しているような有り様だ。
少年はその場で手首を振る。なにかの予兆なのか。
――こんなので抑えられるとでも?
すると次の瞬間、少年はもう一度体を前に進める。すると先程と同じように電気のようなものが少年を襲い始める。だが、少年は手をなに食わぬ顔でいる。
少年は少し足を広げ、手もだらしなく下ろす。すると少年はゆっくりと両手を上にあげる。
「せーのっ!」
少年は両手を一気に振り下ろす。するとなにが起きたのか、少年の両手につけられていた鎖が砕け
、その場に破片と破れた札がゆっくりと落ちていく。少年は同じように足も片足だけをあげ、勢いよく地面を踏みつける。すると地面には複雑なひびが入り、両足の鎖も砕け散る。
――あとはこいつだな。
少年が見つめる先には先程の鉄格子がある。少年は鉄格子を一気に掴みにかかる。
掴んだ瞬間に鉄格子からも電気のようなものが少年に流れ込む。だが、少年はそのまま一気に鉄格子を左右へも引き裂いた。
「脱出成功~♪」
少年は鉄格子から脱出の第一歩を踏み出す。そしてそこから2歩踏み出す。
体は完全に鉄格子を越え、真上にある淡い光が少年を照らす。
そこには笑みを浮かべる紅い目の少年――リアムが立っていた。
こんな世界には終焉が必要だ ロンドンバス @London-Bus
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