第11話 チェシー・エルドレイ・サリスヴァール、薔薇の手紙を受け取る

1 貴女を、愛している

■第十一話 チェシー・エルドレイ・サリスヴァール、薔薇の手紙を受け取る

レイディ・ニコラ宛


日曜日、夜、於ノーラス



突然の手紙に驚かれたかも知れない。


先日レディ・アーテュラスにお目に掛かった際、貴女の事を伝え聞く機会を得た。初めて逢ったあの日の夜を思い、居ても立っても居られず、今、こうしてペンを取っている。


だが、内心、臆せずにはいられない。


私は異教徒であり亡命者であり敵国人だ。我が身のやましさを顧みる度、貴女を護りたいと願うことすらおこがましいのではないかと思う。


それでも、出来うるならば許して欲しい――貴女の微笑を夢に見ることを、貴女の声を幻に聞くことを、その度に焦がれ止まぬ我が心の成せる罪を、貴女の面影を胸に抱く無礼を。


どうか、許して欲しい。


いつの日か、真にけがれなき騎士の忠誠を捧げられる時がくることを祈って



聖ティセニア公国軍 第五師団騎兵大隊長  

准将 チェシー・エルドレイ・サリスヴァール  







……愛している。


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