いもーとられ編
ぷろろーぐ いもーととの日々
僕の幼馴染であるおねーちゃん、タマキィー・アスナトリアがオナペ王国の英雄になって、1年が過ぎようとしていた。
あれから僕といえば、おねーちゃんのような立派な騎士になれるよう、日々鍛錬にいそしんでいる。
おかげで最近は家のことがおろそかになってしまい、妹のキリノ・ネーコにどやされる毎日だ。
彼女は僕よりも小柄で、腰まで伸びる髪はすごくきれいで、胸が小さいことと、そばかすを気にしているらしい可憐な女の子だ。
彼女の髪を括る
姓名が違うのは、父さんと母さんが再婚で、彼女は母さんの連れ子だったから。
でも、世話焼きで生真面目な彼女は、すぐに僕と打ち解けてくれて、いまでは本当の家族のように思っている。
すくなくとも、僕は一方的に。
◎◎
冬のある日のことだった。
僕の家を訪ねてくるひとがあった。
応対に出たのはキリノだった。
「こんにちは」
「……どちら様ですか?」
彼女は少し
初めて会うひとだったから……だけが理由ではないと思う。
なにせそのひとは、非常に鍛えられた肉体の持ち主で、顔には新型の遮光魔導バイザーを装着していたからだ。
ありていにいえば、怪しい雰囲気の人物だった。
だから、キリノは睨むような目つきで彼を見ていたのだけれど、やがてそのひとはにっこりと笑い、
「わたくし、国家騎士審査委員会から来ましたカラメー・テーデネ・トリーマンと申します」
と、言った。
僕は飛びあがらんばかりに驚いて、慌てて妹を押しのけた。
「ちょ、兄さん!?」
「違うんだ、キリノ! このひとはね──このひとを、僕はずっと待っていたんだよ!」
そう彼こそ、僕が待ち望んだ人物だった。
あの日から、タマキィーおねーちゃんが英雄になった日から、僕は騎士になることを夢見てきた。彼女の横にもう一度並びたいと、必死になってきた。
だから、ずっと王国に申請手続きを送っていたんだ。
騎士には、才能がある者しかなれない。
ほとんどの場合、それは王国の占術魔導士が素質あるものを見抜いて、スカウトを派遣する。
そうやって選抜された秀才のみが騎士になることを許される。
だけれど例外もあって、自薦も権利として許されているんだ。
それは、とても狭き門だけど、このひとが──大英雄にしておねーちゃんの師匠、キーチ・クネ・トリーマンさんの弟であり、占術魔導士として名をはせるカラメーさんが直々に来てくれたということは!
「そうですよ、さすが察しがいいですね、モーブくん。きみは、合格したんです」
彼は笑顔でそう言ってくれた。
僕は踊りだしてしまいそうなぐらいに喜んで、
「ただ、少々問題がありまして……」
カラメーさんは、申し訳なさそうな顔で、こう言ったんだ。
「ご家族の資質も、確認させて貰ってよろしいでしょうか?」
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