第2.2話

夜に自宅でスマホをいじっていると、こんなSNSのつぶやきに驚いた。(要するにT●itterのようなものである)

『今の部活やめて吹奏楽部に入ろっかなぁ

今の部活クソみたいなヤツばっかだしw』


......ん?


ユーザーは、聖奈。は?

SNSの書き込みはときに冗談だったり、本当だったりする。このつぶやきは、どっちなのだろうか。


その次の日、それは事実に変わった。

湯本先生と聖奈が話しているところを見かけた。いつものあのわざとらしく悪口を平気で言う姿とは全く違い、あざとく憎らしかった。湯本先生は『本当の聖奈の顔』を知らないんだろうな、と思った。

その日の帰りに招集がかかって正式に発表があった。

「今日から小林聖奈さんが新しく仲間になります。担当はクラリネットです。」

いつの間に楽器決めたんだよ…

「今日から入部しました、小林聖奈です。入部して分からないことだけど、頑張ります」

「よろしくね、小林さん」

「はい! 」

……あざとい。

「それでは、終わります」

 先生の声掛けの後、部長が起立、と言い、お礼の挨拶をして今日の部活が終わった。


いつもなら、部活を終えると千鶴と一緒に帰る。

「ねぇねぇ、千鶴ー! 一緒に帰ろう? 」

 聖奈が大声で千鶴に言った。

「うん、いいよ! 」

「わ、私も…」と声を掛けたが、届かなかったのか無視されたのか分からなかったが、二人は靴箱まで行ってしまった。


帰りまで一人ぼっちになってしまった。

いつもの帰り道が遠く、足取りが重く感じた。これからどうしよう、どうやって生きようと考えるとため息ばかりしてしまう。

___何故"どうやって生きよう"だって?___だって、これから先、一緒に行動する人がいないし、行事の楽しさを誰かと分かち合うこともなくなる___周りから『こいつ、ぼっちなんだ』っていう目で見られるのが怖い。帰り道まで誰かに見られて悪口を言われている気がしてならなかった。どこかでささやかれている。

『こいつ、ぼっちか』『いい気味だ』逆に、変に気を遣われるのも有難いけど、傷付く。


いつの間にか家についていた。

「おかえり、陽香里。大丈夫? しんどうそだけど」

 母が私に心配そうに聞いた。

感付かれてしまったのかとドキッとした。

「……大丈夫だよ。ちょっと疲れただけ」

「そう。今、お風呂できたから先に入りない」

「はーい」

よかった、千鶴と一緒に帰ってこなかったことを聞かれなくて。少しホッとしている。


 朝はもう、千鶴を待たずに先に行こう。

有言実行は大切だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る