第1.3話

 それから私達は体育館に行き、始業式を始めた。始業式は坦々と行われ、ついに担任発表になった。一年の担任、教科の先生、学年主任を発表していく。そして、陽花里のクラスの担任が発表された。

「二年B組は、野口 和夫先生です。」

 その瞬間、周りがブワッとため息を零した。中にはぐずつく者もいた。何故なら野口は、性格は悪く、訳のわからないことで急に怒りだし、生徒を差別をするからだ。おまけにこの学校に五年以上働いていて、地位もそこそこあることをいいことに豪そうにドンと構えている。だから、生徒だけでなく親までも疎ましい存在なのである。


「うわ……俺ら一年終わったや」

「あ〜……一年生に戻りたい……」


 男女が思い思いにまた呟いた。

 たしかに、野口は嫌いだし、いい先生とは決して言えない。けれども、そんなに口をこぼしても結果は変わらないのだから少しはお口をチャックすればいいのに、と陽花里は心の奥で意見した。そんなことみんなの目の前で言ったら私は学校に行けなくなる___そう、この少なくとも集団は正しいことを意見した者は見下される___存在を


 それはどういうことかというと、消されるターゲットが一人決まるとクラスメイト全員からおはようの挨拶以外はすべて無視されるからだ。

 去年、一年C組のクラスでは、女子が一人、存在を消されらしい。その内容を聞いて怖じ気立つほど私には衝撃的だった。この中学校には、そんなことがあるのかと。

 私は絶対に消される存在になりたくない。いや、なってなるまいと決意していた。

 だから今年もうまく対応して一年を乗り切ろうと思うのだが、C組出身の嫌いな聖奈がいるのであまり自信がない。なぜなら、聖奈は、そのターゲットの標的を決めたと言われているからだ。つまり、問題の中核にいる、恐ろしいスナイパーの一人である。

 これはある意味、小学生から持ち上がりの生徒が半数を占めているからかもしれない。私の中学校は、全学年で約二百人の少し小さな学校だ。その五、六割が黒田小学校出身で、残りの三割が川倉などのほかの小学校出身となっている。

 大体は、黒田小の人が一軍になり、川倉出身の子たちを二軍扱いをしている。

 黒田小と他の小学校の出身の一軍と二軍のバランスがちょうど良くなれば安心。

 基本的にはうまくバランスが整うのだが、例外として去年の一年C組がうまく整わず消される存在を生み出したのだと言われている。

 今年のメンバーは聖奈がいるからどうなるか分からないギリギリのところだった。

 神様、どうかバランスが整いますように、と私はずっと心の中で指を交互に絡め握りながら祈っていた。


  いつの間にか始業式は終わり、教室の席に座っていた。

 野口は教壇の前に立ち、昔の熱血先生のドラマみたいに自分の名前を黒板に書き出した。

「俺は、野口 和夫だ。一年間よろしく」


 おそらく皆はこう言いたかっただろう。

『お前の名前ぐらい知ってるよ!』



 やはり、この人は訳が分からない。

 こう思うのは、集団がぐれているのか、先生がおかしいのか、陽花里はどちらが正しいのか考えたが結局分からなくなってきた。



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