「どうしてにげないの?ってきいたら、『ここがすきだから』なんていうから、それいじょうせっとくできなくて。どうにもできないでいたら、さいごのさいごにおもいだしたんだ、ぼく。なまえのないぼくになまえをつけてもらうことで、ひとつだけかくじつにねがいをかなえられるほどのちからがてにはいるんだって」


「そ、そういえば、隕石は?」


 私はそこでようやく訊いた。辺りはすっかり真っ暗だ。星の光はあるものの、月が浮かばない今の時間、夜闇は辺りを真っ黒に染めている。


「はぁ……。だからぼくがさっきぶっこわしたじゃない。ここにおちるまえにぼくのゆみやでくだけちったんだよ」


 少年は簡単に言ってのけたが、私は腰が抜けてしまった。その場にへたり込んで、立ち上がれなかった。


「そう……なの……。助かったんだ、私……」


 少年は不服そうに私のことを見下ろして、言った。


「いつまでぼくのことを『しょうねん』なんてよんでるの。じぶんでつけたなまえでしょ、せきにんとってよ」


 心の中の声が聞こえていたらしい。私は彼を見上げてさっきつけたばかりの名を呼んだ。


「……ルゥ」

「なあに、おねえさん」


 ルゥは満足そうに笑顔を浮かべて首を傾げた。私もなんだか笑えてきてしまって、声を上げて笑った。


 そして、「終わり」のこなかった世界で、私は改めてルゥと一緒に生きていくことになった。






 「この世の終わり」にはとんでもない奇跡が起こる。そんな伝説がこの地にはある。


(終わり)

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占いとこの世の終わり 桜水城 @sakuramizuki

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