第3話 レッドストライプ(ジャマイカ産で瓶が個性的)

 いつも飲み始めるより少し早い時間に待ち合わせをしてレッドストライプさんに会った。レッドストライプさんのお仕事は夜なので、その前に会うことにしたのだった。秋葉原に近い、緑青色に照り輝いている運河が見えるカフェテリアは夕方ぐらいから酒も飲めるようになっていて、夏の熱く短い夜には、冷えた日本の生ビールで一杯やるにもいい場所だろう。

 レッドストライプさんは原産地はジャマイカなんだけど、赤のチェックプリーツスカートでローカットスニーカーだから、この春から東京の大学に通うことになった地方の高校生ぐらいに見える。色が少し黒いのと変な帽子がちょっと南国っぽい。

「こんにちは、よろしくおねがいします」

 えー、ラテン系のノリじゃないんだ。

「ジャマイカの三大名物って言うと、ブルーマウンテン、レゲエ、レッドストライプってことなんですが、それはフジヤマ・ゲイシャ・サムライみたいなもので、別にみんなラテンの縦ノリってわけではありません。まず、冷やさないで、室温でお飲みください」

 …少しアルコールの味がするね。安い日本酒みたいな感じ。

「…安い日本酒、私は好きですよ。あと、炭酸も多めになっている印象はありませんか」

 そうだね。でもアルコール度はあまり高くないから、普通においしいよ。

「いいビールが作れる国は、麦と水が良くないといけないんですが、安いイギリス産のビールに対抗して、頑張って特色を出しているのです。ところで私の手を触ってみてください」

 いいの? あ、なんか冷やっこい。

「これが私の能力です。どんな飲み物でも30秒ぐらいでキンキンに冷やしますよ?」

 え、この話っていつから能力持ちのビールたん設定になったの?

「今回の話から、作者は村上春樹みたいに書くのは難しい、ということで、能力持ちのビール妖精たちの話にしていくみたいです」

 レッドストライプさんが冷やしてくれたビールは、今の季節にはまだ少し寒すぎた。

 彼女が働いているところは、ピルスナーウルケルさんが常連客になっている下町の居酒屋(というよりイギリス風パブ)で、ときどきレッドストライプも、他のビールに混ぜて置いておくと、イギリスのビールと勘違いして頼む人もいるらしい。

 ピルスナーウルケルさんの能力は、待ち合わせのとき常に相手より5分だけ早く来ることができる能力で、クローネンブルグ・セーズさんは日が暮れるのを少しだけ遅くしたり早くできる能力らしい。

 実に適当である。


味     ★★★☆☆

コク    ★★☆☆☆

個性    ★★★☆☆

おすすめ度 ★★☆☆(これはその日の天気・体調に左右されそう)

お値段   448円

素朴な感想 コスパ悪いです。でも瓶はなかなか個性的で可愛い。南国のリゾート地だったら多分おいしい。

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