第11話 天下人~♪

ここは宇宙越後。 


「えい!」

「どりゃあ!」


信長と上杉謙信の死闘は続いていた。


「くらえ! サンダーバード・エネルギー破!」

「うわあ!?」


信長は、謙信の斬撃を紙一重でかわす。上杉謙信のエネルギー破の正体は、宇宙鎧侍の動力炉のエネルギーに、幻獣隕石のサンダーバード隕石を使用していたからだった。だから強大なエネルギー破を撃つことができたのだった。


「なんとい破壊力だ!? 1撃で山が消し飛んでしまった!?」

「よくぞ、我が神の1撃をかわした。」

「今度は、こっちの番だ!」

「こい! 信長!」


信長は、懐中時計を握りしめる。


「落ちろ! 星々よ! 流れ星となり、謙信を倒せ!」

「星だと!?」


宇宙の星々が、上杉謙信を目掛けて落ちてくる。さすがの謙信も意表を突かれた。まさか星を人間が自由に扱えるとは思いもしなかったからだ。


「サンダーバードよ! 降ってくる星々を上空で迎え撃て!」

「クエ!」


稲妻の鳥、サンダーバードが上空で落下してくる隕石の迎撃に当たる。その時、一瞬だが上杉謙信に隙が生まれた。


「もらった!」

「し、しまった!?」


信長は、思いっきり踏み込み、謙信に必殺の1撃をお見舞いする。


「フェニックス・スター信長斬る!」


信長の刀から、星まみれの火の鳥が飛び出る。そして、上杉謙信の宇宙鎧侍を斬った。


「うわあ!?」


上杉謙信の白銀の宇宙鎧侍は大破した。これで信長の勝利が決まった。


「勝負は着いた。上杉謙信、降伏しろ。命までは取りたくない。俺の家臣になって、一緒に天下統一を果たそう。」

「負けたよ。まさか、神が人間に負けるとは・・・これも信長に従えという、神のお言葉なのか?」


上杉謙信は、潔く敗北を認め、信長に従う決心をした。


「それは困るな。」


その時、どこからか聞き覚えのある声がした。そして、信長は、声のした上空を見つめる。


「この声は・・・明智光秀!?」


上空に緑黒い宇宙鎧侍がいる。明智光秀の宇宙鎧侍だ。そして、宇宙鎧侍の手を伸ばして言う。


「来い、上杉謙信。」

「うわあ!? 宙に舞い上がっていく。」

「光秀は、なにをする気だ!?」


光秀の腕から磁力のようなものが出て、上杉謙信の宇宙鎧侍を引き寄せる。


「おまえの力は頂くぞ。」

「ギャア!?」


光秀が上杉謙信の宇宙鎧侍を分解し始めた。そして分解された謙信の宇宙鎧侍が光秀の宇宙鎧侍の右肩で龍の姿になる。明智光秀専用、越後の龍バージョンの緑黒い宇宙鎧侍の完成である。


「これで上杉謙信の力は、私のモノだ。」

「なんだと!?」

「これで、あとは武田信玄の力を得ることができれば、私は最強になるのだ!ワッハハハ!」


明智光秀の目的は、上杉謙信と武田信玄の力を手に入れることだった。上杉謙信の力は、死んだ武田信玄の魂を、この世に霊界から呼び戻すことにも必要だったのだ。


「そうわさせるか! 俺が相手だ!」

「信長か? 上杉謙信の力を得た私の相手が務まるかな?」

「なに!?」

「吐きだせ! 越後の龍キャノン!」

「うわあ!?」


信長が明智光秀の前に立ち塞がろうとした。しかし、上杉謙信の力を手に入れた光秀の前に、信長の宇宙鎧侍は大破してしまった。


「口ほどにもない。私は、これか武田信玄の復活の儀式を行い、武田信玄の力を手に入れるのだ。信長、あまえの相手をしているほど、暇ではない。ワッハハハ!」

「・・・。」


明智光秀は、飛び去って行った。信長は、大ダメージを受けて意識を失っていた。信長の宇宙鎧侍も大破してしまい、とてもじゃないが、光秀の後を追って、宇宙甲斐に行くことはできないだろう。



ここは信長の夢の中。


「ここはどこだ?」


暗闇の中に信長1人だけいる。


「信長さま。」

「んん? おまえたちは!?」


信長の前に、丹羽長秀、滝川一益、羽柴秀吉が現れた。


「すいません。武田の亡霊家臣どもに襲われて、やられてしまいました。」

「武田の亡霊家臣は、武田信玄の眠る躑躅ヶ崎城を守っています。」

「光秀は、武田信玄を甦らせるつもりです。」

「そうだな。上杉謙信の力も吸収されてしまった・・・。」


そして信長は、明智光秀に破れてしまった。生死の境を今も彷徨っている。


「信長さま、がんばってください!」

「光秀を倒してください!」

「我々が応援しています!」

「おまえたち・・・。」


そう言うと3人の魂は去って行った。まだ信長の意識は戦う気があるようなないような、中途半端な状態であった。


「信長。」

「おまえたちは!?」


次は、柴田勝家、伊達政宗、そして上杉謙信の魂まで現れた。


「信長さま、力になれず申し訳ありません。」

「勝家。」

「元気のいい、信長さまはどこに行ったんですか?」

「政宗。」

「生きているおまえが、死人の我々より暗い顔をしていてどうする? おまえは私に勝ったんだぞ!」

「上杉謙信。」


光秀に負けて落ち込んでいる信長を、戦友たちが勇気づける。


「明智光秀は、私の力を使い、我がライバルの武田信玄の力を得ようとしている。私の力で死者を甦らせるなどされたくはない。」

「謙信。」

「光秀の野望を阻止できるのは、信長、おまえだけなのだからな。おまえには天下人になるという夢があるだろう。夢と希望を思いだすんだ!」

「そうだ。光秀の野望も打ち砕き、俺の夢、天下統一を果たしてやる! 俺は天下人になるんだ!」


信長の心に戦う意思が戻った。心の中に、天下統一という炎が再点火された。


「はあっ!?」


信長が目を覚ました。ここは宇宙越後。宇宙お城戦艦、安土城。


「信長さま!?」

「信長さまが目を覚ましたぞ!」


信長の家臣たちは、安堵して喜ぶ。


「俺は、どれくらい眠っていたんだ?」

「丸3日です。」

「すぐに明智光秀を追わなければ!」


しかし、信長の宇宙鎧侍は、明智光秀に潰されてしまった。そこに1人の男が現れる。


「そお言うと思ったよ。」

「家康!?」


そこに現れたのは、三河の徳川家康だった。


「話は聞いた。今は、明智光秀の野望を止めることが先決だ。」

「ああ、そうだな。」

「そこで、三河の最新技術で作った宇宙鎧侍を持ってきた。それに、おまえのフェニックス隕石と星々の懐中時計を実装するといいだろう。」

「家康。」

「まだ試験機だが、それでも光秀と互角以上に戦える自信があるぞ。」

「いいのか? 最新の技術を提供しても?」

「私たちは、幼少期からの友達だろ? 共に戦おう! 武田の亡霊家臣は任せておけ。おまえは明智光秀の野望を打ち砕くんだ!」

「ありがとう、家康。一緒に行こう! 宇宙甲斐へ!」


甦った信長と救援に来た徳川家康の連合軍は、最終決戦の土地、宇宙甲斐へと向かうのであった。



ここは宇宙甲斐。旧武田信玄の居城、躑躅ヶ崎城。


「武田信玄よ、越後の龍は我が力になったぞ。」


明智光秀が武田信玄の魂に呼びかけている。今から武田信玄の魂を呼び起こそうと儀式・グリモワールを行おうとしていた。


「信玄さま。」


先に現世に呼び戻された武田信玄の亡霊家臣たちも、主である武田信玄の復活を心から願っている。


「さあ、信玄よ! 甦り、我が力になるのだ!」


儀式を行っている魔法陣が紫色に不気味に光り輝く。そして、何かが魔法陣から出てき始めた。武田信玄の宇宙鎧侍である。


「おお! 武田信玄の復活だ!」

「信玄さまだ!」

「信玄さま!」


光秀や武田の家臣たちは、現れた武田信玄の宇宙鎧侍の姿に喜ぶ。ついに明智光秀は、武田信玄の魂というべき、宇宙鎧侍を甦らせたのだ。


「さあ! 信玄よ! 甦らせた、この明智光秀に力を与えたまえ!」


光秀が、現れた信玄の宇宙鎧侍に手を伸ばす。磁力のようなものが放たれ、武田信玄の宇宙鎧侍は、バラバラに分解され、光秀の左肩に飛んでいき、再合成されていく。


「これで武田信玄の力も、我が体の一部だ!」


明智光秀の宇宙鎧侍の左肩に甲斐の虎が完成した。これで光秀は、越後の龍と甲斐の虎という、強力な力を手に入れたことになる。


「者共! これより宇宙越後の織田信長の息の根を止めにいくぞ!」

「おお!」


武田信玄の力を得た明智光秀は、宇宙越後にいる信長にとどめを刺しに行こうとする。


「甦れ! 躑躅ヶ崎城!」


ゴゴゴゴゴ! 廃城だった躑躅ヶ崎城が地面から動き出した。使われていなかったお城のロケットエンジンに火が点火された。宇宙幽霊お城戦艦として、躑躅ヶ崎城が甦ったのだ。これも信玄の力を得た光秀の力なのだ。


「これからは、この明智光秀の時代だ! ワッハハハ!」


躑躅ヶ崎城のブリッジから明智光秀は、天下統一を夢見るのだった。



ここは宇宙越後。信長の宇宙お城戦艦、安土城。


「安土城、出航! 目指すは明智光秀のいる宇宙甲斐だ!」

「おお!」


安土城はエンジンを点火させ飛んで行く。隣には徳川家康の宇宙お城戦艦、岡崎城も並走している。ついに謀叛人、明智光秀との最終決戦の時が来たのだ。



ここは宇宙川中島。


「な、なんだ!? あれは!?」

「どうした?」

「前方より廃城が飛んできます。あんなの見たことが無い!?」

「廃城だと!?」

「あれは!? 武田信玄の躑躅ヶ崎城だ!」


明智光秀の躑躅ヶ崎城を発見したのだ。初めて見る幽霊お城に信長たちは、ゾッとした。それとともに、明智光秀は、武田信玄の力も手に入れたのだと、推測できた。


「宇宙鎧侍隊、準備ができた隊から、随時発進! これが最後の戦いだと思え! 生きて帰ってこいよ!」

「おお!」


信長の安土城から宇宙鎧侍が発信していく。それに呼応するように、徳川家康の岡崎城からも宇宙鎧侍部隊が発信していく。



ここは宇宙幽霊お城戦艦、躑躅ヶ崎城。


「信長め、宇宙鎧侍を出撃させたか。こちらも宇宙鎧侍を発進させろ!」

「おお!」


と言っても、明智光秀の軍には、量産機は無い。ただ数は少ないが出撃する20機前後は、武田信玄に仕えた名だたる名将ばかりなのである。


「山本勘助、出る!」

「甘利、いくぞ!」

「内藤、いきます!」


次々に武田信玄の亡霊家臣たちの宇宙鎧侍が出撃する。1機で20機は相手ができそうな強者ばかりである。


「この、躑躅ヶ崎城を安土城にぶつけてやる! こんな廃城など、どうなっても、私には痛くも痒くもないからな!」


明智光秀は、躑躅ヶ崎城で特攻をかける。光秀にとって、躑躅ヶ崎城に思い出はない。信長を倒す、物でしかないのだ。



ここは宇宙川中島。信長の宇宙お城戦艦、安土城。


「特攻です!? 光秀の廃城が、こちらに突撃してきます!」

「なに!? 特攻だと! 撃ち落とせ!」

「無理です!?」

「天守閣波動砲だ! エネルギーをチャージしろ!」

「間に合いません!?」

「くそ! 総員退避だ! 安土城を捨てるぞ!」

「御意!」


信長軍の兵士たちは、脱出用の宇宙石垣に乗って、安土城から分離して脱出する。


「さすが家康だ。試作機と言っていたけど、パワーが従来の宇宙鎧侍のスペックを遥かに超えている。」


信長は、家康から提供された新型の試作機の性能に感心している。徳川家康の宇宙三河の開発技術力に驚くばかりだ。家康は、幻獣隕石を搭載した量産型を製造することを念頭に、ひたすら開発を繰り返してきたのだった。


「俺と新型の宇宙鎧侍とフェニックス隕石と星の懐中時計があれば、光秀を倒すことができる! いくぞ! 光秀!」


信長は、安土城から飛び立った。ドカーン! っと、後方から爆発音がする。安土城に躑躅ヶ崎城がぶつかったのである。惑星と惑星が衝突したような、衝撃である。


「安土城が・・・!?」


安土城が轟沈した。躑躅ヶ崎城は、木端微塵に砕け散っていく。安土城に思い入れのある信長は、安土城が地表に降下していく姿に感傷的になる。


「信玄さまのお城が・・・!?」


武田信玄の亡霊家臣たちは、思い入れの躑躅ヶ崎城が粉々に砕けていく姿に、動きが止まってしまう。ドカーン! っと、安土城が地面に衝突する。衝撃で安土城も至る所が壊れてしまい、もう宇宙お城戦艦としては、宇宙を飛ぶことはできないだろう。


「安土城。今まで、ありがとう。」


信長は、安土城に別れを言うと、決意したかのように安土城から、上空を睨む。


「いるんだろう、光秀。」


上空には、緑黒い宇宙鎧侍がいた。


「来たな、信長。」


明智光秀だ。信長と明智光秀は見つめ合う。これから長かった2人の戦いに決着がつく。


信長の宇宙鎧侍が従来でレベル6の幻獣隕石使用として、信長は星を扱えることを加味してレベル7といったところか? 今回は旧友の徳川家康から高性能の新型の試作機の宇宙鎧侍を提供してもらっている。宇宙鎧侍のレベルは、8ぐらいか?


光秀の宇宙鎧侍は、元が信長軍の幹部クラスの武将の宇宙鎧侍なので、レベル5。それに、ノームの幻獣隕石を搭載ということで、レベル6。新たに上杉謙信と武田信玄の力の「越後の龍」と「甲斐の虎」を装備したということで、レベル7? 8? 9? 10? 明智光秀の宇宙鎧侍のパワーは未知数である。



「邪魔する者は、俺が全て斬り捨てる!」

「おまえを倒して、私が天下人になる!」


信長と明智光秀の刀と刀がぶつかり合う。激しい火花が飛び散る。信長は、旧武田領以外は平定した。あとは宇宙甲斐と宇宙信濃だけである。一方の明智光秀は、信長に対して謀叛を起こしたが、信長の暗殺に失敗した。そこから力を蓄えて、両者が最後の対決に挑んでいる。


「くらえ! 越後の龍キャノン!」

「うわあ!?」


光秀は最初から全快である。肩に装備した白銀の竜から、波動砲のような強烈な竜の形をしたエネルギー破を放つ。信長はなんとか回避するので背一杯だ。ドカーン! 竜のエネルギー破が地面に当たる。衝撃で周辺が吹き飛ぶ。


「俺の仲間たちが!?」

「武田の仲間たちが!?」


光秀の攻撃は、敵味方関係なしだった。信長軍だけでなく、戦っている武田の亡霊家臣も一緒にエネルギー破で消滅させてしまった。


「今度は、甲斐の虎キャノンだ!」

「うわあ!?」


虎のエネルギー破が光秀の宇宙鎧侍から放たれた。信長は紙一重でかわす。しかし、後方の戦場で爆発し、織田軍、武田の亡霊家臣たちが壊滅的な被害を被る。


「光秀! おまえの味方もいるんだぞ!?」

「味方? 私に味方などはいない! いるのは、私の天下統一のための駒だ! 死のうが生きようが、私には関係ない!」

「最低だな、光秀。」


謀叛を働くような明智光秀には、人望は無い。仲間という観念は、光秀には無いのかもしれない。孤高が孤独を生み、孤独が闇を作り、闇が他人を思いやる気持ちを光秀から奪ってしまったのかもしれない。


「俺が、おまえを止める!」

「おまえに俺が止められるかな?」

「やってみないと分からないさ!」


諦めない! たとえどんな時でも! それが天下人への道だから! 信長は、星の懐中時計に念じる。


「星々よ! 明智光秀に降り注げ!」


信長は、星に願った。宇宙にある星々が流れ星になり、大気圏を超えて、光秀を狙って落下してくる。


「甘いな。龍虎ダブルキャノン!」


光秀は、両肩の龍と虎のキャノン砲から、今までで最大の龍虎のエネルギー破を放つ。ドカドカドカ! 流れ落ちてくる流星群を粉々に破壊する。空には粉々になった星の残骸がキラキラと光っていた。


「なんだと!? 星が・・・、星たちが・・・。」

「上杉謙信と武田信玄の力を手に入れた私に、敵はいないのだ! ワッハハハ!」


恐るべし明智光秀の手に入れた力。光秀の力というよりも、光秀が奪った、上杉謙信と武田信玄の力が凄すぎるのだ。死しても後世に語り継がれる歴史の武将の偉大さを感じる。


「それなら、これはどうだ! フェニックス・スター信長斬る!」

「フッ。」


信長は必殺技で、明智光秀に勝負を挑む。しかし、しかし光秀は余裕そうに見える。何か秘策でもあるというのか!?


「信長斬る、破れたり!」

「なに!?」

「龍虎刀!」


光秀の両肩の龍虎が刀になった。明智光秀は、ここにきて二刀流の構えをする。


「龍虎・光秀斬る!」

「うわあ!?」


ビシ! バシ! っと光秀の2本の刀が、信長の宇宙鎧侍を切り裂く。信長は衝撃で後方に飛ばされる。


「信長、命拾いしたな。初めての二刀流なので、踏み込みが甘かったか。今度は確実に仕留める!」

「危なかった!? もう少しで、やられていた!?」


どうする? 信長斬るも破られてしまった? いったい、どうすれば光秀に勝つことができるんだ? 信長は焦っていた。星も破壊され、必殺技の信長斬るも、光秀には通じなかった。もう信長には、策は残っていないように見えた。


「こうなったら、あれをやるしかないの!?」


信長には、何か秘策があるらしい。


「さらば、俺の夢・・・。」


天下人。信長の夢である。天下統一することが信長の夢であったが、天下人になる夢を諦めるというのだ。それよりも目の前の悪魔、明智光秀を倒さなければ、光秀が天下人になってしまう。それだけは避けなければいけない。


「こい! 光秀!」

「そんなに死にたいか! 信長!」


光秀は、龍虎二刀流で信長に迫る。


「死ね! 信長!」

「ギャア!?」


龍虎・光秀斬るが信長に炸裂する。信長の宇宙鎧侍は✖の字に斬られ、ドカーン! っと、爆発してしまう。爆炎と煙があがる。


「ワッハハハ! 信長を倒したぞ! これで私の天下だ!」


光秀は、ついに信長を葬り去った。これで明智光秀の野望を止める者はいなくなった。これから光秀の謀叛に溢れた世界が始まるのだ。


「それは、どうかな?」


どこかからか声が聞こえる。


「なんだと!? 信長は、この手で殺したはず!?」 


光秀は、驚く。その声が信長の声だからだ。確かに手応えもあったのだ。


「俺は死んでいない。俺には天下人になるという夢がある。例え、その夢を諦めたとしても、光秀、おまえの謀叛だけは許せない!」


爆炎と煙の中で、新しい炎が燃える。火の鳥だ。火の鳥の宇宙鎧侍が現れる。もちろん乗っているのは、織田信長である。


「甘いな! おまえがフェニックス隕石を持っているのなら、何度でも甦ってくることは計算済みだ。越後の龍と甲斐の虎のパワーでお前を消滅させてやる!」

「不死鳥の俺を止めれるもんなら、止めてみろ!」


光秀は、龍虎を肩に乗せ、砲台としてセットする。信長は、命を捨てて光秀に挑んでいく!


「光秀! これが最後だ! おまえとの戦いに決着を着けてやる!」

「蹴散らしてくれる! 龍虎ツインキャノン!」


龍虎のエネルギー破が発射される。信長の宇宙鎧侍を完全に消し去ってしまう。


「やった! 私の勝利だ!」


光秀は、歓喜に喜ぶ。


「まだだ!」

「なに!?」


炎が舞い上がり、信長の宇宙鎧侍が不死鳥のように再構築されていく。


「俺の心の炎が消えない限り、俺は何度でも甦る!」

「くそ! 信長は化け物か!?」


信長は火の鳥となり、光秀に突撃する。フェニックスのオーラをまとった信長は、まさに不死鳥そのものであった。


「こうなったら龍虎二刀流で切り裂いてやる!」


光秀は、両肩の龍虎の砲台を刀にしようとする。


「ん!? どうした!? なぜ刀にならない!?」


龍虎の砲台は、光秀の命令を拒否するかのように、刀になるのを拒んだというよりも、光秀の動きを抑える。


「なんだ!? 動かない!? なぜ動かないんだ!?」


光秀の目には見えないが、光秀の宇宙鎧侍には、越後の龍と甲斐の虎がまとわりついていた。


(おまえみたいな主君を裏切る謀叛人に、天下人になられるぐらいなら、信長の方がマシだ!)

(我が家臣の魂を弄び、我が躑躅ヶ崎城を破壊し、我が力まで利用しようという、己のことしか考えない愚か者よ! おまえに生きる資格はない!)


上杉謙信と武田信玄の魂が、龍と虎になっているのだ。信長と同じく天下人を、天下統一を果たし、平和な世の中を築こうとした侍の魂だ。明智光秀なんかには、天下を渡せないと言っている。


「上杉謙信、武田信玄・・・。」


信長には、上杉謙信と武田信玄の声が聞こえる。光秀の宇宙鎧侍を取り押さえている龍と虎の姿がハッキリと見える。同じ思いを抱いた者として。


(信長さま! 光秀を倒してください!)


丹羽長秀、滝川一益、羽柴秀吉、柴田勝家、伊達政宗、その他の明智光秀の謀叛のために命を落としていった、大名、武将、兵士、民の魂が、明智光秀を倒せと、信長を応援している。


「なんだというのだ!? こんな時に故障だというのか!?」

「光秀、おまえには聞こえないのか? おまえの謀叛のために失われた多くの命の魂の声を!」

「死んだ者の声だと!?」

「みんな、おまえに天下を取らすぐらいなら、俺に勝ってほしいんだとよ!」

「信じられるか! 死人が喋るもんか! この光秀のために死ねたのなら、光栄に思うべきだろうが! 」

「この・・・クソ野党!!!」


この宇宙鎧侍には、空け者システムは搭載されていないが、信長の炎は、死人の魂を極楽浄土に導き、さらに炎を大きくしていく。そして、信長は光秀に火の鳥となり突撃する。


「うわああああああ! 火の鳥・信長斬る!」

「ギャア!?」


信長の火の鳥の剣が、明智光秀を切り裂いた。


「私は、私が、こんなところで・・・。」


ドカーン! 明智光秀の宇宙鎧侍は爆発を起こした。ついに信長は、謀叛人、明智光秀を倒したのである。


「やった! 光秀を倒しぞ!」


信長は、まだ実感は乏しいものの、明智光秀を倒し、天下統一を成し遂げ、天下人になったのだ。


(信長さま、天下統一おめでとうございます!)

(ついに天下人ですね!)

(夢を叶えることができたんですね!)

(御父上にも、ご報告しておきますね!)

「みんな。」


信長の亡き家臣たちの魂が、信長の天下統一を見届け天に昇っていく。


(これからはおまえが最強だ!)

(おまえが天下人だ!)

(先に行ってますよ!)

「謙信、信玄、政宗。」


信長の亡きライバルたちの魂も、信長に祝福の言葉を残し天に召されていく。


「友よ! 仲間よ! ライバルたちよ! ありがとう!」


信長も胸にジーンっとくる、思い深い別れであった。信長の目から涙がこぼれていたかは定かではない。


「俺もすぐに逝くから待っててくれ。」


信長は、意味深いことを口にする。信長は、天下統一の夢を成し遂げたからか、どこか遠くを見ている。喜んでいるというより、寂しそうな表情にも見えた。


「信長さま! バンザーイ!」

「信長さま! おめでとうございます!」


信長軍の兵士たちが、信長の勝利を祝っている。兵士たちも明智光秀を倒したので、天下を統一したことを理解している。


「信長さま! 勝どきをあげてください!」

「そういえば、勝どきがまだだったな。」


勝どきをあげていなかったことに気づき、信長は改めて勝どきをあげる。


「我々の勝利だ! エイエイオー! エイエイオー!」

「エイエイオー! エイエイオー!」


信長も兵士たちも戦の勝利に、信長の天下統一を喜んだ。織田信長が天下を統一し、戦国時代は終わりを告げることになった。長かった戦いの日々が終わったのである。



ここは徳川家康の岡崎城。


信長は、安土城が光秀との戦いで沈められてしまったので、徳川家康の岡崎城の宇宙鎧侍デッキに着艦した。


「ふー、これで全てが終わったな。」


信長が宇宙鎧侍のコクピットから出てくる。


「お疲れ様。信長。」

「出迎えてくれてありがとう。家康。」


無事に帰還した信長を、幼少期からの友達、徳川家康が出迎える。その表情は信長も家康も仕事をやり終えた満足した顔をしていた。


「家康、少し2人だけで話がある。」

「なんだ?」


信長と家康は、内緒話をするために、誰もいない部屋に移動していく。



ここは家康の部屋。


「なにか話があるのか?」

「実は、俺は死んでいるんだ。」

「な!?」


いきなりのカミングアウトに徳川家康は驚く。信長が死んでいる!? そんなことがあるはずがない! 現に目の前にいるのだから・・・。


「信長、おまえ、なにをバカなことを・・・!?」

「本当なんだ。光秀の二刀流で斬られた時に、俺は死んでしまったんだ。フェニックス隕石のおかげで、復活し光秀を討つことができ、夢も果たしたことで、甦り続ける未練や悔いもなくなってしまったんだ。」

「そんな・・・、せっかく天下を統一したのに!?」

「俺が死んだと知れ渡れば、また戦乱の世の中が来てしまう。だから、俺は、おまえに天下人を引き継いでもらいたいんだ。」

「信長。」

「俺たち友達だろ?」

「そうだ。私たちは友達だ!」


信長と家康は、力強く握手する。幼少期の友達は、大人になっても、いつまでも友達なのである。信長と家康に強い絆を感じる。


「ありがとう・・・。」

「信長? おい!? 信長!? 信長!!!」


信長は息絶えた。信長の体は力無く倒れる。家康の必死の呼びかけにも、信長が反応することは無かった。


「そうだ! まだ間に合うかもしれない!」


家康は、部屋の電話を取り内線をかける。


「数正か! 緊急手術をするぞ! すぐに準備しろ!」


こうして家康の元で、信長の緊急手術が始まった。手術内容は・・・信長の脳みそをアンドロイドに移植する脳の移植手術だった。以前に井伊の娘が戦闘で負傷した際も、手術をして、体を半分機械にして生き延びることができた。



ここは京。天下人が意志を表明する場。


「それでは、天下人の入場です。」


会場の壇上に一歩一歩、1人の男性があがっていく。そして壇上から会場を見回す。今までに見たことのない壮大な光景である。人々が天下人の第1声を待っている。


「俺が、天下人の信長だ!」


信長は生きていた。脳の移植手術に成功したのだ。信長の体は機械になってしまったが、信長は天下人として、民が平和に暮らせる、戦の無い世界を作っていくのだった。


信長SFらしく、最後はアンドロイドおちになりました。(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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宇宙歴史0001 SF信長ロボット  渋谷かな @yahoogle

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