第10話 東日本平定!
ここは光秀の隠れ家。
「さあ、準備は半分整った。あとは信長が、もう半分を倒してくれるのを待つのみ。もうすぐ、私は最強の力を手に入れて、この明智光秀が、天下を統一するのだ! ワッハハハ!」
光秀は、どこにいるのだろうか? 光秀の半分とは、何を指すのだろうか? 光秀の言う、最強の力とは、何なのだろうか? 物語は、クライマックスに向けて、加速していく。
ここは宇宙相模。北条氏康の小田原城。
「くそ! この城は、どうなっているんだ?」
関東攻めを任されていた滝川一益は、小田原城に苦戦していた。小田原城は、まるで巨大な迷路のようだった。なかなか北条兵と戦闘する所まで行かなかった。
「いかんな。滝川どのに脱出用のワイヤーロープを射出しろ!」
「おお!」
迷路の入り口では、滝川一益と一緒に相模攻めに参戦した、宇宙三河の徳川家康がいた。今も徳川家康は、織田信長と同盟関係を結んでいる。
「おお! ロープだ! 皆の者、ロープにつかまれ!」
「おお!」
滝川一益軍は、ロープにしがみつき、なんとか小田原城の入り口にまで帰ってこれた。もし徳川家康がいなかったら、今頃は迷路でお腹が空いて、餓死していたかもしれない。
「かたじけない、助かり申した。家康どの。」
「無事で何よりです。一益どの。それよりも、この城の迷路を何とかしないといけませんな。」
「とりあえずマーキングはしてきましたが・・・。」
「が、なんです?」
「マーキングしたところに、マーキングが無くなっていたんだ。」
「どういうことでしょう?」
「よく、分からん。」
「とりあえず、信長さまに苦戦していることを正直に連絡しておきましょう。」
「そうだな。」
滝川一益と徳川家康は、信長に小田原攻めに苦戦していることを報告することにした。それにしても、印をつけて、印が無くなる。おかしなことが起こっている小田原城であった。
ここは宇宙相模。北条氏康の本丸。
「ワッハハハ! 織田軍め! 小田原城を落とせる者なら落としてみろ! 光秀からもらったナイトメアの隕石の能力はすごいものだな!」
北条にも、明智光秀の悪の手は伸びていたのだ。ナイトメアの隕石は、悪夢を見せる。今回の場合は、幻影・幻覚を見せると言った方が良いだろうか。
「浅はかな連中は、宇宙鎧侍に装備させるんだろうが、私は違う。宇宙お城戦艦、小田原城に幻獣隕石を装備させたのだ! ワッハハハ!」
そう、そのおかげで小田原城は、ナイトメアの悪夢ばりの迷路の幻覚を見せて、侵入者が進行してくるのを防いでいるのだ。まさに難攻不落の宇宙お城なのである。
ここは宇宙近江。信長の安土城。
「信長さま! 小田原攻めの滝川一益と徳川家康が苦戦しています!」
「なに? すぐに宇宙相模に応援に行くぞ! 宇宙お城戦艦、安土城、発進!」
ゴゴゴゴゴ! 安土城が地面から飛び出し、宇宙相模を目指して飛んでいく。
ここは宇宙相模。滝川一益と徳川家康の陣。
「今度は、私が出陣しましょう。」
「行ってくれるか、家康どの。」
徳川家康が出陣することになった。家康は、自分の陣に帰ってくる。家康の家臣たちが勢ぞろいしている。
「家康さま、いかがでしたか?」
「今度は、我々が小田原城を攻める。」
「織田軍だけに手柄は立てられたくないですからね。」
「そういうことだ。」
早速、徳川家康は、軍議を開くことになった。軍議に出席する家臣は、本多忠勝・榊原康政・酒井忠次・井伊直政の徳川四天王である。
「今回の目的は、小田原城の本丸までの道の確保だ。私と忠勝は、敵の正面から突撃する。榊原は右翼、酒井は左翼、井伊は本陣を守れ。」
「家康さま。」
「なんだ?」
「自分も戦わせてください!」
「若いのに死に急ぐな。本陣でお留守番だ。」
徳川の軍議は終わった。井伊直政は、納得がいっていなかったというよりも、新参者なので、手柄を立てたかったのである。
「試作品の、ハイパー手りゅう弾を使う。巻き込まれるなよ!」
「御意。」
徳川軍の小田原城攻めが始まった。徳川軍の各武将の宇宙鎧侍のレベルは5。幻獣隕石を装備していない宇宙鎧侍のレベルとしては最高レベルである。
しかし、家康が、どのような幻獣隕石を持っているのか? また、SFらしく、突出した開発技術力なのかは、ベールに包まれていて謎である。
「いくぞ!」
「おお!」
徳川家康と本多忠勝は、小田原城に突撃する。中は直進かと思えば、直ぐに曲がり角がやってきた。
「フフフ。今度は徳川家康か。地獄の迷路にようこそ! 迷子になって苦しめばいい! ハハハハハ!」
小田原城の天守閣で北条氏康は、徳川家康が迷路に迷うことを楽しみにしている。
「ハイパー手りゅう弾を使うぞ。」
家康は、道なりに曲がるかと思えば、腰に装備している手りゅう弾に手を伸ばし、壁に投げた。ドカーン! っと小田原城の壁に穴が開く。壁の裏に新しい道を見つけた。
「このまま突進する!」
「御意!」
徳川軍は、家康を先頭に本多忠勝と兵士の宇宙鎧侍の兵士が前進していく。直進するので、確実に北条氏康に近づくことになる。
「家康の卑怯者! 迷路に兵士を配備して、壁越しに火縄銃を撃ちまくれ!」
「御意!」
家康の奇策に、北条軍がついに防衛に動き始めた。やはり、城攻めをしている側より、籠城している方が強いのだ。
「いくぞ!」
ドカーン! 家康は、壁を破壊しながら進んでいく。バン! バン! バン! いきなり火縄銃の銃声が響く。家康軍の兵士の宇宙鎧侍が、ドカーン! っと大破する。
「なんだ!?」
「との! 伏兵です!」
「ええ~い!? 囲まれたか!?」
バン! バン! バン! 北条軍の銃声と、ドカーン! ドカーン! ドカーン!と大破していく家康軍の宇宙鎧侍。完全に家康軍の動きは止まってしまった。火縄銃から身を守るだけで精一杯であった。
「家康を狙え! 集中砲火だ!」
北条軍の火縄銃の総攻撃が始まった。家康軍は、身を低くして、できるだけダメージを抑えることしかできなかった。
「ここまでか!?」
さすがの家康も観念した。ドカーン! ドカーン! 北条軍の火縄銃部隊から、連続して爆発が起こった。
「なんだ!?」
「家康さま! 助けに来ました!」
「直政!? 直政か!?」
なんと家康の窮地を救いに来たのは、本陣を守っていた井伊直政だった。若くても直政は武士なのである。
「間もなく、信長さまが来られます。家康さま、しんがりは自分がします! お逃げ下さい!」
「すまん、直政。死ぬなよ。」
「大丈夫です。ハイパー手りゅう弾を全部持ってきましたから!」
徳川家康たちは、援軍に来た井伊軍を残して、撤退した。
「さあ! 手りゅう弾祭りの始まりだ!」
「おお!」
ドカーン! ドカーン! ドカーン! 井伊直政の軍は、ハイパー手りゅう弾を北条軍に投げまくった。北条の鉄砲隊は、沈黙した。
「よし! 我々も退くぞ!」
井伊軍も小田原城から退避を始めた。
ここは宇宙相模付近を飛行中の安土城。
「信長さま、お城波動砲の充電が100%になりました。いつでも撃てます。」
「わかった。」
お城波動砲。信長の安土城の天守閣は吹き抜けで、その部分に隕石エネルギーを貯め込み、一度に放出し、強力なエネルギー破を打ち込むことができるのだ。
「お城波動砲、発射!」
信長が、トリガーを引いた。お城戦艦の天守閣から強力なエネルギー破が放たれて、小田原城を目掛けて飛んでいく。
ここは宇宙相模。小田原城。
「くそ! 家康め! 逃げられたか!?」
「氏康さま! 何かが飛んできます!?」
「なんだ!? うわあ!?」
小田原城の天守閣が光の中に消えていく。信長の放った、新兵器、お城波動砲である。北条氏康は、何が起こったのかも分からないまま、死んでいった。
「小田原城が沈んでいく。」
家康は、炎上大爆発している小田原城を眺めている。信長のお城波動砲の強烈なエネルギー破が、天守閣を貫通したのである。巨大な小田原城が一瞬で沈んでいく。恐るべし、お城波動砲!
こうして、信長は関東も平定したのだった。
ここは宇宙陸奥。伊達政宗の米沢城。
「なに!? 織田信長が関東の北条氏康を倒して、東北に攻めてくるだと!?」
「はい。どうしましょう?」
「ムムム。おもしろい。俺が様子を見てきてやろう!」
「殿!? おやめください!?」
伊達政宗は、目立ちたがりの屋さんみたいだった。時期的には、天下が統一されてから出てきた優秀な武将。小説なら時系列が史実とズレても問題なしっと。
ここは宇宙相模。織田信長の宇宙お城戦艦、安土城。
「これから、陸奥の伊達家を攻めるが、俺1人で行く。」
「信長さま!? 危険です!?」
「それよりも全員で、明智光秀の行方を捜してくれ。」
「御意。」
織田軍の宇宙鎧侍は、信長のフェニックス隕石搭載の宇宙鎧侍だけでなく、丹羽長秀のサラマンダー隕石搭載の宇宙鎧侍と、羽柴秀吉のシルフ隕石搭載のの宇宙鎧侍。滝川一益のウンディーネ隕石搭載の宇宙鎧侍と戦力が充実してきた。
ここは宇宙三河。徳川家康の岡崎城。
「これが幻獣隕石か。」
北条氏康が小田原城の動力源に使用していた、ナイトメア隕石。徳川家康が回収していたのであった。
「数正、これを分析できるか?」
「やってみましょう。」
「頼む。幻獣隕石を人工的に作ることができれば、勢力図が大きく変わるかもしれない。」
「がんばります。」
徳川家康は、先の未来を見ていた。今は、信長に扱われている身ではあるが、将来、信長がいなくなった後の世界を見ているのだった。
ここは宇宙陸奥。信長は宇宙お城戦艦、安土城で移動中。
「そろそろ、伊達の領空に入る。警戒を怠るな!」
「はは!」
信長は、東北地方を平定するために陸奥までやって来た。しかし、伊達家からの攻撃は無かった。ビビ! っと、索敵レーダーに反応があった。
「信長さま、敵です!」
「何機だ?」
「そ、それが1機です!」
「1機!? そんなことは無いだろう!? もっと探せ!」
「はい!?」
信長は、1機という報告が信じられなかった。それでも、その1機がいる方向へと安土城は進んでいくのであった。
ここは宇宙陸奥。草原である。
「やっと来たか、織田信長。」
伊達政宗は、たったの1機の宇宙鎧侍で信長がやって来るのを待っていたのだった。自信があるのか? 無謀なのか? 好奇心からなのか? 政宗の行動力は、ずば抜けていた。
「おい! ここだ!」
伊達政宗は、手を振って信長の安土城にアピールする。政宗の挑発に、信長はのったのである。付近まで安土城でやって来た。
ここは宇宙お城戦艦、安土城のブリッジ。
「1機で待っているとは、大したヤツだ。おもしろい、俺、自ら勝負に行ってやる。」
「信長さま!? お止め下さい!?」
「好きにさせてくれ。」
信長は、宇宙鎧侍に乗り込む。
「信長、出る!」
信長は、宇宙鎧侍のエンジンに火を灯し、伊達政宗の待つ、草原に飛び立つ。
ここは宇宙甲斐。武田信玄の死亡後。
「武田家は滅んだらしいな。」
「それでも武田の残党が残っているらしい。」
「我々が3軍を率いて戦えば、旧武田領の平定も時間の問題ですな。」
「サルと一緒に兵を率いるとは、サルも出世したものだな。」
「たまたまでございます。丹羽さまと滝川さまには敵いません!」
「上手いことを言う。ワッハハハ!」
丹羽長秀、滝川一益、羽柴秀吉は宇宙甲斐に、武田の残党狩りというのは表向きの理由で、本当は謀叛人、明智光秀の捜索が目的であった。
「こんなところに光秀もいるとは思いませんがね。」
「信長さまが東北の伊達を平定しに行かれているんだ、我々だって少しは働かないと、お叱りを受けてしまう。」
「越後の龍、上杉謙信は柴田どのが戦っているし、宇宙甲斐と宇宙信濃くらいしか攻める所がないからな。」
「信長さまは、事実上の天下人から、本当の天下人になられるんだ。」
「我々は、良い殿に仕えることが出来ましたな。」
「ワッハハハ!」
サルたちは、ご満悦だった。信長が天下を統一するのが、自分のことのようにうれしいのだ。その時、兵士が血相を変えて、伝令に駆け付けてくる。
「大変です!」
「どうした?」
「民が、明智光秀らしきものを見たとの密告がありました!」
「なに!? 明智光秀!?」
「それで、どこで見たのだ?」
「旧武田信玄の居城、躑躅ヶ崎城です。」
「なんだと!?」
「全軍に伝えろ! これより躑躅ヶ崎城に向かうぞ!」
「おお!」
ついに掴んだ。明智光秀の手がかり。今は、廃城となっている武田信玄の城に、明智光秀はいるのだろうか?
ここは宇宙陸奥。草原。
「俺は、伊達政宗。おまえが織田信長か?」
「そうだ。俺が信長だ。」
「おまえが俺を倒すことができれば、東北地方は、おまえにくれてやる!」
「なに!?」
すごい自信である。信長は、伊達政宗の若さからくるエネルギーに気おされそうである。しかし、信長にも天下統一という大きな夢がある。負ける訳にはいかない!
「いいだろう。それなら俺が負けたら、俺の領土を全て、おまえにくれてやる!」
「ほほ~、気に入った。そうこなくっちゃ。」
ニヤッと笑って、信長と伊達政宗は対峙する。お互い初対面だが、度胸の良さと、表裏のない性格が、お互い気に入ったのだ。
「いくぞ! 信長!」
「こい! 政宗! 邪魔する者は、俺が全て斬り捨てる!」
信長と政宗は、刀と刀をぶつける。激しい火花が飛び散る。遅れて現れた英雄、伊達政宗のパワーは、信長に勝るとも劣らない。素晴らしい武将である。
「こいつ!? 口だけじゃない!? 本当に強いぞ!?」
「できる!? お山の大賞って訳じゃないんだな!?」
お互いがお互いの、想像を超える予想外の性能に驚いている。年齢は離れているが、こういうのを好敵手というのだろうか。信長は、若い政宗に好意をもった。
「やるな。降伏して、俺の家来にならないか?」
「なってやってもいいが、俺を倒せたらな!」
「なら、倒してやる!」
両者は、刀と刀で打ち合うが、甲乙つけがたい。伊達政宗は、幻獣隕石の能力を使うことにした。
「打ち合いなら、体力のある俺の勝ちだ! しかし、それで勝っても、おもしろくない。俺の宇宙鎧侍の「とっておき」で勝負を着けてやる!」
「なに!?」
「凍えろ! フェンリル!」
「なんだと!?」
伊達政宗が放った、氷のオオカミが信長を襲う。信長の宇宙鎧侍は足元から、カチカチに凍り付いて、動けなくなってしまった。
「うわあ!?」
「陸奥の極寒の氷の中で安らかに眠れ。」
「・・・。」
信長の宇宙鎧侍は、氷の中に閉じ込められてしまった。そして、伊達政宗は背中を向け去って行こうとする。
「おまえの天下統一の夢は、俺が引き継いでやる。」
「誰が天下統一をするだと?」
「・・・なに!?」
信長の声がした。政宗は、思わず振り返り、信長の氷の中の宇宙鎧侍を見る。確かに氷の中にいる。動ける訳はないのだ。声が聞こえる訳がないのだ。
「フ、気のせいか。」
「俺の夢は、誰にも渡さない!」
「な!? なんだと!?」
信長の宇宙鎧侍が氷の中で火を放ち始めた。氷は溶けだし、分厚い氷にヒビが入る。信長の宇宙鎧侍が燃えているのだ。
「政宗、俺の幻獣隕石は、フェニックスだ。どんなに氷漬けにされて、この命が消えようとも、俺は不死鳥のように、何度でも何度でも甦ってくるんだ。俺の天下統一の夢、天下人の野望を打ち砕くことはできなぞ!」
ボボボボボ! っと、信長の宇宙鎧侍から火柱が上がる。まさに火の鳥が氷の棺の中から舞い放たれたのだ。政宗の氷は、信長の炎の前に完全に溶けてしまった。
「織田信長・・・これほどの男だったとは!?」
「政宗、降伏しろ。俺は、お前を斬りたくはない。」
「ああ~、そうだな。信長さま、この東北は約束通り献上いたします。」
「ありがとう。伊達政宗。東北の統治は、今まで通り、おまえに任せる。」
「信長さま!? はは! ありがたき幸せでございます。」
信長は、東北も平定することができたのだった。これで残すは、宇宙越後の上杉謙信と、宇宙甲斐の明智光秀だけとなった。
ここは宇宙越後。上杉謙信の春日山城。
「なに!? 東北も信長が平定しただと!?」
これが戦国時代、最強の武将、上杉謙信である。信長は、北陸征伐に家臣の中でも1番武力の高い柴田勝家を送り込んだが、上杉謙信の守る春日山城を陥落することはできなかった。
「はい、信長は伊達政宗と共に、この越後を目指しています。」
「そうか、後は、この越後だけか・・・。」
ふと、上杉謙信は寂しそうな顔をする。永遠のライバルだった、宇宙甲斐の武田信玄が病死してから、謙信は心に穴が開いたようだった。好敵手のいない世の中で生きていくのは、辛いだけなのである。
「そうか、柴田の軍と合流されたり、挟み撃ちにあうのも困るな。先に柴田の軍を壊滅させてくるか。」
ついに越後の龍、上杉謙信が立ち上がった。
「上杉謙信、参る!」
そして自身の白銀の宇宙鎧侍「毘沙門天」に乗り込み、春日山城の宇宙鎧侍デッキからカタパルトで射出され、織田軍の柴田勝家の陣を目掛けて飛んでいく。
ここは宇宙越後。織田軍、柴田勝家の陣。
「大変です!」
「どうした?」
「上杉謙信が、こちらに向かってきます!」
「なに!?」
柴田勝家の陣中は、急激に忙しくなった。慌ただしいというべきか。上杉謙信の襲来に備えなければいけないのだ。柴田勝家は、自分の宇宙鎧侍に搭乗して、自ら先頭に立って、上杉謙信を待つ。
「あれが神をも恐れぬ、悪しき織田の軍勢か。」
柴田勝家軍の上空に、白銀の宇宙鎧侍がシュプールを描きながら、準備体操でもしている様にやって来た。
「白銀の機体!? 謙信だ! 謙信が来たぞ!」
柴田勝家も上杉謙信を視界に捉え確認した。
「神の一撃を食らえばいい。きっと成仏できるだろう。」
上杉謙信は、鞘から刀を抜いた。その刀は普通の剣の1・5倍から2倍ほどの長さのある長い刀だった。そして、呪文のようにお経を唱え、剣の刃から銀色のオーラが放たれる。
「神の名の下に、私は全てを斬る!」
上杉謙信の神仏の念を込めた一振りは、波動砲のような破壊力のあるエネルギー破を刀から放った。
「なんだ!?」
ドカーン! 柴田勝家は、見たこともない神の1撃に、どうすることもできなかった。上杉謙信の攻撃は、隕石の落下の衝撃、核爆弾の投下された振動、まさに最強の1撃であった。
「神に歯向かうのが悪いんだ。」
そう言うと上杉謙信は、春日山城に帰っていった。柴田勝家の軍は、たった1撃で壊滅的なダメージを受けたのだった。
ここは宇宙甲斐。旧武田信玄の居城、躑躅ヶ崎城。
「こんなところに、本当に明智光秀はいるのかな?」
「廃城だから、隠れるにはうってつけか?」
「なんだか不気味ですね。さっさと捜索を終えて帰りましょう。」
織田軍の丹羽長秀、滝川一益、羽柴秀吉は、謀叛人、明智光秀の目撃情報を受け、旧武田信玄の居城、躑躅ヶ崎城を調べに来た。主のいないお城は、お化けでも出そうなくらい朽ち果てていた。
「ギャア!?」
「どうした? サル。」
「で、で、でた! お化け!」
「お化けなんかいるわけがないだろう。」
「そうだ。バカなことを言うな。騒がしい。」
サルこと羽柴秀吉が、ふわーっと現れて、消えていくお化けを見たのだ。丹羽と滝川は、お化けなどいないというのだが・・・。お化けたちが姿を現す。
「なんだ!? おまえたちは!?」
「か、囲まれているぞ!?」
「でた! お化け!」
サルたちは、お化けに囲まれてしまった。しかし、お化けを目を凝らして、よく見てみると、どこかで見たような、宇宙鎧侍だった。
「おまえたちは!? 武田の宇宙鎧侍!?」
「なんだと!? 武田は滅びたはずでは!?」
「やっぱり、お化けだ!?」
お化けの正体は、旧武田信玄の家来たちだった。しかし、こいつらは死んだはず。なぜ生き返ったのだろう?
「あれは山本勘助!?」
「山県昌景も!?」
「真田幸隆!? 高坂昌信もいるぞ!?」
歴代の武田信玄の家臣たちが勢揃いしていた。まさに全盛期の武田家の栄光を見ているような光景であった。
「おまえたちは、信玄さまの復活のための生贄になってもらう。」
「生贄だと!?」
「どういうことだ!?」
「おまえたちに話す口は持っていない。全員、かかれ!」
武田家の軍師、山本勘助の号令で、武田家の宇宙鎧侍20機前後が、織田軍の3人に襲い掛かる。
「うわあ!?」
「信長さま!? 助けてください!?」
「ギャア!?」
丹羽長秀、滝川一益、羽柴秀吉の姿は、悲鳴と共に躑躅ヶ崎城に消えていった。
ここは宇宙越後。春日山城付近にやって来た、信長の安土城。
「なに!? 勝家の軍が壊滅しただと!?」
「はい、現在、柴田勝家さまと連絡が取れていません。」
「なんということだ!? そんなに越後の龍は強いというのか!?」
さすがの信長も柴田勝家が負けたと聞き、上杉謙信の武力を恐ろしく感じていた。
「それでも天下統一の夢のために、俺は戦う。」
信長は、改めて自分の気持ちを確かめ、天下統一を誓うのであった。その時、ブリッジのレーダーに敵の反応があり、ブーブーっと警報が鳴る。
「敵襲です! 1機で向かって来る宇宙鎧侍があります! 早い!? 通常の宇宙鎧侍の10倍の速さで近づいて来ます!? ありえない!?」
謙信だ。謙信が単独で現れた。そして織田軍にも好奇心が大生な武将が1人いた。
「政宗機!? 勝手なことはするな!? 政宗機!?」
「どうした?」
「伊達政宗が1機で敵の機体に向けて、出撃しました!」
「なんだと!? 早まった真似を!?」
伊達政宗が上杉謙信と戦いたくて、単独で迎撃に向かってしまったのだ。そんな政宗から信長に通信が入る。
「信長さま、俺が上杉謙信を防いでみせます。見ていてください!」
「政宗!? 戻ってこい! おまえじゃ無理だ!」
「何を言ってるんですか? 大丈夫で・・・うわあ!?」
「政宗? 政宗!?」
以後、政宗と連絡が取れることは無かった。上杉謙信の放った1撃のエネルギー破をくらった伊達政宗は、存在が消えてしまった。
「全ては、神のご加護だ。」
上杉謙信は、伊達政宗と戦うまでもなく、1振りで倒してしまった。なんと恐ろしい強さだろう。まさに、その強さ、神の如し。
「政宗!? クソ! 俺が出る! 勝家と政宗の敵討ちだ!」
信長は、ブリッジから宇宙鎧侍デッキに移り、自分の赤金色の宇宙鎧侍に搭乗する。
「信長。出るぞ!」
そして、上杉謙信に立ち向かっていく。ついに信長と上杉謙信の最強と天下人の夢をかけた戦いが始まろうとしていた。
「邪魔する者は、俺が全て斬り捨てる!」
「こい。神を恐れぬ、不届き者よ!」
両者の刀と刀がぶつかる。激しい火花が散る。果たして信長が北陸を平定するのか? それとも上杉謙信が逆転で天下人となるのか? この戦いの決着で全てが決まろうとしていた。
「上杉謙信。おまえが例え、神であっても、俺はおまえに勝つ!」
「なんだと?」
「それは、俺自身が1番神に近い人間だからだ!」
「人間が神を語るだと!? 人間が神になることはできないのだ! 神を汚す発言は許さん!」
信長と上杉謙信の激しい戦いが始まった。信長は、フェニックス隕石を内蔵した宇宙鎧侍に乗っている。しかし、上杉謙信も、幻獣隕石を持っているのだった。
そして、その上空。
「いかに信長と上杉謙信が強いとはいえ、両者が戦っては、お互い、ただでは済まないだろう。そうなった時が、私の出番ということだ。」
緑黒い宇宙鎧侍がいた。そう、明智光秀だ。明智光秀は、信長と上杉謙信が戦い両者がダメージを受けて傷つき動けなくなるのを待っていたのだ。漁夫の利を得ようとしていた。
「最初は、幻獣隕石の力を集めて封印を解こうと思っていたが、上杉謙信には神が宿っている。あの方を霊界から呼び戻すには、惹かれ合う魂同士、謙信を手に入れる方が、きっと成功するに違いない。」
明智光秀は、何かを企んでいるようだ。当初は、サラマンダー隕石や、シルフ隕石、ウンディーネ隕石を集めて、何者かを甦らせようとしていた。しかし、信長たちの手に幻獣隕石が奪われる中で、考え方が変わってきたのだ。
「もうすぐだ! もうすぐ、あの方の力を得て、私は天下人になるのだ! 日本だけではない、世界、いや、地球すべてを私、明智光秀が支配するのだ!」
明智光秀の野望。信長を倒し自分が日本国を天下統一することだった。光秀の野望を叶える準備は、着々と進んでいる。死んだはずの旧武田家の家臣が甦ったり、果たして、光秀の言う、あの方とは、誰のことなのだろうか?
今は廃城の躑躅ヶ崎城など、魂の器にしか過ぎない。あの方が甦る場所は・・・。」
信長と明智光秀の最終決戦も近づいている。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。