happy 尿 year!

白川津 中々

第1話

 男は飲尿趣味があった。

 老若男女問わず、彼は尿を飲んだ。あらゆる手段を用い多くの人間から採尿した。無論逮捕歴は何度かある。しかし、彼は飲尿をやめることができなかった。彼は尿を飲み続ける道を選んだのである。

 尿をグラスに入れた時の、徐々に香る刺激臭……白から濃琥珀まで楽しめる様々な色合い……そして、母なる海を思わせるまろやかな塩味……彼はもはや、尿なしには生きていけなかった。毎晩密かに撮りためた排尿映像を肴に尿を一杯やるのが彼の至極の楽しみであった。


 そんな彼がある日こう思った。自分の尿も飲んでもらいたい。自分の排尿姿を人々に見てもらいたい! と。

 彼の欲望は次第に大きく、厚くなり、もはや彼自身にも止めることができなくなっていた。


 そして年の瀬。東京スカイツリーの頂上に彼はいた。丸出しの下半身は雄々しく猛り、今にも咆哮を上げそうなほど野生的であった。彼の周りには数台のヘリコプターが飛び回り、テレビ局のキャメラが露わとなった下半身を映している。同じくヘリコプターに乗り込んでいるレポーターは深刻そうな顔をして彼の様子を全国実況したのであった。しかし当の本人は、腰に手を当て余裕のある笑みを浮かべていた。「これから致すがなにか?」と言わんばかりの不敵な笑みである。


「It's 小 time! 」


 声高らかに彼は叫んだ。すると真っ赤な亀頭から天に向かって尿が登り、散滴となって地上へと降り注いだ。数多のライトに照らされ、黄金色の尿が虹をつくる。固唾を飲んで見守っていた群衆は皆その奇跡に喝采し、口々に彼に、彼の尿に賛美を送った。ある者はキリストの姿を、ある者は釈迦の姿を彼に重ねた。西暦が廃され、尿歴に移ったのはその少し先の事である。

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