キャラクター紹介(第Ⅲ章終了時点)

 ◎合唱部


 〇42期生(現2年生)

 ・飯田いいだ希和まれかず

 バス。元々は報道編集委員のみの所属。昨年度、片想い相手である詩葉をきっかけに、校内新聞での合唱部の紹介記事を担当。部員との交流のうちに、部の雰囲気や音楽に惹かれていき、やがて入部を決意。

 音程・リズム感・声質など声楽に関するあらゆる面が不得手であり、全体の足を引っ張ったりなど上級生が手を焼くことは多く、自己嫌悪に悩むこともしばしば。その至らなさには後輩からも低い評価を向けられることも。

 しかしひたむきな姿勢から、ある程度の信頼は得ており、また言葉への感性を活かした「ドレミの歌」アレンジ歌詞の考案などを通して、合唱部の新たな魅力にも一役買った。

 3年生引退後は、中村から副部長を引き継ぐ。


 詩葉とは友人としての関係を続けつつも、彼女が結樹に寄せる感情や、陽向との交流を見る中で、「詩葉が自分を好きになることはないのでは」という予感を募らせるように。

 そして詩葉から、彼女の恋愛対象が女性であると打ち明けられたこと、さらに陽向からも同様の告白を受けたことで、「苦しむ詩葉を救ってほしい」と陽向に懇願。


 ウェブ上では「和枝」というハンドルネームで小説を投稿。作品に最初に賞賛を贈ってきた紡とは、メール機能でのやり取りが続いている。彼女からの評価が自分の小説執筆、さらには合唱部での活動にポジティブな影響を与えていることを意識するなど、かなり親密な関係になっている。


 ・ひいらぎ詩葉うたは

 ソプラノ。希和、結樹とは中学時代からの交友がある。

 天真爛漫な気性で、それが行き過ぎて周囲から浮くこともままある。まっすぐなやる気と斜め上の元気さで、上級生女子からはよく可愛がられる。

 昨年度の合同演奏会で出会った陽向の入部を非常に喜んでおり、彼女からの熱烈なアプローチに驚きながらも、深く親愛の情を抱くように。

 また後輩を迎えたことで音楽面でも成長し、澄んだ伸びのあるソプラノに磨きがかかった。


 友人の結樹に抱いている特別な感情に少しずつ違和感を覚え、またステップアップしていくべき自分の将来への不安が募るなど、精神的に落ち込むことが多くなっていた。そんな中、結樹が真田に告白、失恋したという報告を受けたことで、自分が結樹に抱いていたのは恋慕の情であり、自分の恋愛対象は女性であることに気づく。直後、陽向から自身もレズビアンだという告白を受け、彼女に支えを見出すように。


 希和が自分に寄せる感情をどう解釈しているかは不明。だが、男子と接するのが苦手でも彼との交流は続いていること、また結樹への恋を自覚したときに最初に頼ったのは彼であったことから、友人としてはかなり信頼しているようだ。


 ・武澤たけざわ結樹ゆき

 アルト。凛としてクールな雰囲気で、リーダー的な役回りを買って出ることが多い。合唱部では同期のまとめ役となり、上級生の議論に積極的に参加していた。

 満場一致で42期のリーダーに選ばれ、陽子から部長を引き継ぐことに。

 

 真田のことは入部当初から深く尊敬していたが、次第に「尊敬する先輩」を越えて彼に惹かるように。同時に、パートの先輩である紅葉のことも敬愛しており、真田と紅葉の関係は絶対に壊れてはならないと考えている。

 そのためにも、自分の気持ちを抑えようとしていたが、陽子と相談する中で「真田にきちんと気持ちを伝えないと、二人とずっと友人でいることはできない」と結論。コンクール終了後に真田に告白し、紅葉にも幸せを祈る気持ちを伝えた。


 旧友である詩葉のことは手の掛かる妹のようにも思いながら、自分の一番弱い所まで見せられる大切な親友であるとも感じている。


 ・朝井あさい春菜はるな

 アルト。詩葉たちとは高校入学後に仲良くなった。

 基本的に人と関わるのが得意でないため、大人しくしていることが多いが、部内での言動はかなり明るくなった。周囲への目配りが細やかで、さりげない親切が習慣づいている他、人間関係にも敏い。希和が詩葉に対し抱える感情についても、かなり早くから感づいていた。

 

 歌唱に目立った個性はないものの、音程やリズムは正確であり、表現の呑み込みも早い優等生である。しかし本人は、それぞれ違った方向に才能を持つ部員の中で、取り立てた武器がないとコンプレックスを感じている。


 ・藤風ふじかぜあき

 ソプラノ。校内でも目立つ華やかな雰囲気。他の同期部員とは当初は交流が少なかったものの、結樹の歩み寄りもあってすっかり打ち解けた様子。

 元々やりたかったのは合唱というよりも、軽音系のボーカルだった。入部当初は歌の楽しさと共に不満も抱いていたものの、次第に合唱の魅力にも気づき出すように。昨年度の合同演奏会ではアコースティックギターでの伴奏を通して活躍。

 本年度の碧雪へきせつ祭でも、「ドレミの歌」に取り入れた英語ラップパートに立候補。以前は快く思っていなかった希和との共同作業を通し、出会いが自分の可能性を広げることを実感。

 

 〇41期生(現3年生)

 ・鷹林たかばやし陽子ようこ

 アルト。部長。明るくサバサバとした、外見・気性ともにボーイッシュな女子。オタク気質がたまに暴走するものの、曲者が多い41期のまとめ役でもあり、後輩への面倒見もいい。

 和可奈から部長を引き継いでからは、これまでとは違う「攻め」の合唱部を目指し、新しいスタイルに挑戦。優れた先輩・同期に及ばない自分に悩みながら、また進路を巡る両親や教師との摩擦に悩みながらも部を引っ張り、コンクールでの金賞を実現。


 日常的に遠慮のないやり取りを繰り広げる中村のことは仲間としても信頼していたが、3年になってからは、不安に潰れそうなときはスキンシップを求めるなど、向き合い方も変化していた。

 そしてコンクール後に中村から告白を受け、自身も彼が好きだったことを告白。晴れて彼との交際が始まった。


 ・中村なかむら直也なおや

 バス。副部長。取材に来た希和を気に入り、彼が入部するように仕向けてきた。入部後は同じパートとして最も近くで希和を指導し、彼の苦手の多さに苦労しながらも根気よく成長を導いてきた。

 碧雪祭では藤風と共にラップを担当し、見事にポテンシャルを発揮。

 変化していく合唱部に少しの不安を覚えながらも、これまでを築いてきた先輩からの応援を受け、新たな部の成長に貢献。

 

 仲間としても友人としても距離の近い陽子へ、信頼と共に好意を寄せ続けていた。そして、最上級生としての務めを終えてから告白。晴れて交際が始まった。

 秀でた能力と同時に辛い過去を抱えている由那、真田、紅葉と比べ、自身を「よくも悪くも普通」と感じており、彼らがいなければ自分は輝けず、同時に彼らが部活で居心地よくあるためには自分が必要である、という双方向の依存関係を意識している。

 それらを含め、同期とは一生モノの絆で結ばれていると感じている。


 ・加藤かとう由那ゆな

 ソプラノ。中学では学校に馴染めず、長い間不登校であった。そうして閉じこもりがちだった故、見学に訪れ心惹かれた合唱部へ入部を躊躇していたが、陽子たちの説得により入部。その後は部員との交流を通し、少しずつ明るさを取り戻していった。

 自分を変えてくれた陽子に深い友情と感謝を抱きながらも、最近は陽子からのべったりとした接し方に呆れたツッコミを入れることもしばしば。


 部員随一の高音の伸びを持ち、和可奈が引退した後のソプラノを引っ張る他、碧雪祭での「ドレミの歌」やコンクール自由曲の「ヒスイ」では見事なソロを披露。

 またイラストやデザインにも優れたセンスを持ち、昨年度の希和の記事作りや体育祭の準備でも活躍した。


 ・真田さなだ恵一けいいち

 テノール。奏恵の彼氏であり、彼女が喜ぶことを何よりも優先する。合唱部での活動も、元々は彼女に寄り添うため。先輩の引退後は、彼女がやりたい音楽の実現を共に目指してきた。 端正な顔立ちと、あらゆる音楽を歌いこなす歌唱力から、様々な層から厚い支持を集め、合唱部のステージの華やかさに貢献。


 奏恵を虐待していた彼女の母親とは、彼女の代わりに連絡を取り合っている。紅葉母娘の関係が良好だった頃を知っているだけに、家族の絆が母親にとって壊されてしまったことには深い悲しみを覚えており、未だに割り切ることができずにいる。しかし奏恵の前では強い自分でいることを課しており、誰かの前で弱みを見せることは稀。


 異性からの人気は圧倒的だが、奏恵以外の女子からの恋愛的な誘いは一切断っている。

 しかし、奏恵にとって一番の後輩となった結樹からの好意はかなり重く受け止めており、告白された際には感謝を伝えていた。


 ・紅葉もみじ奏恵かなえ

 アルト。かつては母親から虐待を受けており、今は両親から離れて生活している。恵一に深く依存しているが、合唱部での人間関係も居心地よく感じている。特に同期に対しては、「生きていて良かったと思えるのは、みんなのおかげ」と深い愛着を抱いている。


 音感に優れ、練習での評価・分析をよく任される他、既存楽曲の新たなアレンジも主導することで、合唱部の新たなステージの実現に貢献してきた。高い音楽的センスの反面、程度の低いメンバーへの当たりはきつい。


 また恵一との関係に干渉されるのも大嫌いであり、そういったシーンでは苛立ちを隠さない。しかし、大事な後輩である結樹が恵一を好きでいることには、苛立ちではなく板挟みの苦しさを感じていた。そして告白した結樹へ謝りながらも、この先も続く友情を約束した。



 〇43期生(現1年生)

 ・月野つきの陽向ひなた

 ソプラノ。強固な意志と、それを実現する高い行動力を併せ持つ。

 昨年度の合同演奏会で雪坂合唱部の演奏、特に詩葉の姿に魅了され、演奏後の詩葉(と、居合わせた希和)に入部を宣言。その言葉通りに入試に合格し、すぐに入部を決めた。

 私立の中高一貫である秀統しゅうとう大学附属学園の中等部に通っていたが、ある事件をきっかけに学園に強い嫌悪感を抱き、高校は雪坂を選択。


 自身がレズビアンであると自覚しており、一目惚れした詩葉もそうであることを推察し、彼女に熱烈なアプローチを続けて着々と距離を詰める。一方で、希和の詩葉への好意も察知しており、実らない片想いを募らせ、かつ合唱部員としても能力の低い彼を疎ましく感じていた。

 しかし詩葉が自分の恋を希和に打ち明けた際に、希和の想いの深さを認識。女性への恋を自覚し動揺する詩葉に「自分も同じだから」と寄り添うと共に、男性である以上は詩葉の恋愛対象にはなれない希和に、詩葉を諦めるよう願う。


 ・倉名くらな香永かえ

 アルト。OBである栄太の妹。兄とは正反対の、活発で豪快な性格。

 合唱経験者であり、豊かで力強い歌声を持つ。旧友の沙由を「嫁」と溺愛。また兄のこともタイプが違うなりに懐いている。


 ・うるし沙由さゆ

 ソプラノ。元々合唱には馴染んでいなかったが、旧友である香永に連れられて入部。

 お人形のような可憐な容姿で、多くの女子部員に猛烈に可愛がられている。


 ・清水しみず礼汰れいた

 テノール。中学時代にハマったアニメの舞台が合唱部だったことから入部するなど、ミーハーなオタク気質。陽気で、素直な言葉がぽんぽんと飛び出る。

 希和とは趣味が合うこともあり、気の合う先輩として親しんでいる。


 ・福坂ふくさかしょう

 バス。合唱経験者であり、一度は合唱に対する熱を失っていたが、見学するうちに再び歌おうと決めて入部。以降は、合唱の楽しさをまた感じている様子。

 口数も表情の変化も少なく、何を考えているか分かりづらい。ただ合唱のスキルは確かであり、相手が先輩でも指摘や提案は行う。


 〇40期生(昨年度に卒業)

 ・山野やまの和可奈わかな

 ソプラノ。元部長。

 同期が辞めていく悲しみを抱えながらも、後輩たちを明るく導き、コンクールでは数年ぶりに銀賞を獲得。また希和の取材を、部のプロモーションと男子加入のダブルチャンスと捉え、積極的に対応。引退後も頻繁に部員を応援し、新しい方向へ進もうとする彼らを嬉しく感じていた。

 部員の間では明るく頼れるお姉さん像を目指していたが、彼氏である弦賀に対しては甘えっきり。

 

 高校卒業後は、地元の信野のぶの市立大へ進学。現役部員との交流は続いており、悩む後輩たちを支え続けていた。コンクールの応援に来た際は、部員の成長を目の当たりにして号泣。

 また信野大では、弦賀と共に何やら画策しているようだが……?


 ・倉名くらな栄太えいた

 バス。元副部長。和可奈の歌声や人徳を高く評価し、彼女が才能を最大限に発揮できるように、アシストに力を注いできた。また希和に過去の自分を重ね合わせ、それを打ち明けることで彼の背中を押した。歌が苦手だった当初から三年間、研鑽を続けてきた努力家でもある。引退後も、たびたび希和のことを気にかけていた。


 自身の同性愛を自覚しており、弦賀には深い恋慕を寄せ続けていた。しかし和可奈と弦賀の、そして自身と和可奈の関係を壊さないために、その想いは誰にも打ち明けていない。

 地元から遠く離れた大学に進学し、コンクールを期に帰省。想像以上に成長した後輩たちを前に、自身のこれまでへの肯定感が強まるのを感じていた。


 ・畠野はたの実久みく

 医学科受験を理由に、二年生の冬に退部。それ以来、和可奈たちとの交流は途絶えていたが、コンクールに足を運び気持ちを伝えることで、交流を取り戻した。

 その後は志望していた進路を実現。



 ◎教師陣

 ・海野うんの和幸かずゆき

 社会科。合唱部の前顧問。温厚で、生徒の主体性を尊重しており、若い部員たちが伸び伸びと活動できるようにと願っている。定年を前に退職した。

 コンクールにも応援に訪れ、部員たちへの手紙で労いと激励を伝えた。


 ・松垣まつがき奈々なな

 音楽科。合唱部の現顧問。音大を卒業したばかりで、感覚の近い部員たちともすぐに仲良くなった。賑やかで涙もろい。

 歌唱力も指導力も抜群であり、たびたび部員を魅了している。自分が受け持つ生徒には、のびのびとやりたい音楽を追求してほしいという想いから、陽子たちのスタンスも全面的に受け入れていた。

 

 ◎学校外

 ・弦賀つるが陸斗りくと

 雪坂高校OBであり、信野市立大学の二年生。かつては合唱部の伴奏者として、共にステージを創り上げていた。和可奈の彼氏でもあり、似合いのカップルとして周囲からの尊敬を集めている。

 大学で組んだバンドではギターも弾いており、マルチプレイヤーとして活躍の場を広げている。遊びに来た陽子と中村にジェームズを紹介していた。


 ・James Freddie Lucas

 信野市立大学の三年生。出身はアメリカだが、日本語も堪能。ゴスペルに対する愛情が深く、合唱部に興味を持っているらしい。


 ・つむぎ

 和枝(=希和)の発表した二次創作小説に、賞賛のコメントを送ってきた人物であり、彼とウェブ上での文通を通して交流している女性。高校三年生だが、ほとんど学校には通えておらず、図書館などで自習を進めている。

 かなりの読書家であり、言葉や物語への感性は豊か。最近では和枝の小説について彼と意見交換をするなど、同志のような存在となりつつある。また、部活での自身を卑下しがちな彼を励まし、合唱部での彼の在り方にも影響を与えている。

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