軍隊時代10

S部隊の皆は先程の攻撃ほとんどが全滅し、生き残った人達も戦えるような状況ではなかった。なので私は

「皆さんここは私が引き受けるので一度戻っ て下さい」

と言った。

「あぁ、すまない。後は任せた」

「ごめんなさいね雪ちゃん・・・力になれく て本当にごめんなさい」

仲間達は私に謝罪の言葉を言い負傷者を担ぎ上げ応急処置をするために国へと帰って行った。私はその背中を見つめ

「さよなら皆さん・・・今まで本当にありが とうございました。今度こそは誰も巻き込

 んだりしないから安心してね。皆を助ける にはあの禁じられた死の力を使うしかない の・・・。大丈夫、この国だけは守ってみ せる!私がいなくてもこの国ならやってい けるよ、きっとね」

と言った。そして私は同じ過ちを繰り返さないように無線を使いこう呼びかけた。

「私の半径1㎞以内にいる者は今すぐに離れ て下さい。大型の攻撃能力を使うので巻き 込まれるおそれがあります。繰り返しま  す。私の半径1㎞以内にいる者は今すぐ離 れて下さい。私は今から一分後に能力を発 動します」

言い終わると同時に涙が止めどなく溢れてきた。

「死ぬことは怖いことじゃないから泣かない で私・・・。歌えばきっと大丈夫になるよ ね」

私は止めどなく溢れてくる涙を止めるように明るい曲を歌い始めた。

「仲間に出会えて私は変われた気がした~♪

 いつもは一人でしていたことでも仲間と共 にすれば楽しくなって掛け替えのない思い 出になっていく~♪だから私は私が生きる 意味をあたえてくれた私の人生に命を吹き 込んでくれた仲間を守る為なら喜んで命  だって神に捧げよう~♪」

私はなんだか歌っていて今の自分に似ていると思った。だけど大きく違うのは私の人生に命を吹き込んだのは朔夜兄さんで、主人公の人生に命を吹き込んだのは仲間だというところだ。

「もう一分経ったからそろそろやろうかな」

私は力を全て解放しピアスの力も限界まで大きくした。

「紅蓮の業火よ我が命をもって全てを焼き尽 くせそして国を守りたまえ」

一瞬で敵の基地は全て消し炭となった。そして私もその炎が燃え盛る場所へと落ちて行った。自分はもうここで終わるのだろうと確信し目を閉じようとした。だがとある声が聞こえてきて私はそちらを見て目を見開いた。

「雪、勝手に死のうとしないでよ。俺をまた 一人にするつもり」

そう声がした先にはボロボロの楓が立っていた。

「どうしてそんなところにいるんだよ楓!!

 離れろって言ったでしょ」

私がそう言った後楓は炎に巻かれてしまった。私は残り少ない力を使い地面すれすれのところで風の能力を使い自分の体を浮かせ、炎に巻かれてしまった楓も宙に浮かせた

「楓、どうしてこんな無茶なことしたの?」

「ゆ・・・き・・・・をひと・・・・・・り にする・・・と・・・おこ・・・ら・・・ れちゃ・・・う・・・か・・・らね」

楓はそう言うと動かなくなってしまった。私はそれを見て初めて気がついた。私はもう私だけのものじゃないということに・・・。

「楓やっと分かったよ。ねぇ、だから目を覚 ましてお願いだよ。もう一人は、大切な人 を失うのは嫌なの・・・」

私は全てを消し炭にした炎を止め楓を地上におろした。

「朔夜兄さん私、また一人になっちゃったみ たい。あれ、泣く資格もないのに涙が出て きた。せめてもの償いとして楓には神聖な 火を見せてあげるね。どうか天国から見て いて」

私は大分昔に習った神に捧げる舞を思い出し力をこめて歌いながら踊りだした。

「紅蓮の炎よ彼の者の魂を神聖な炎で送りた まえ~♪彼の者の栄光を称えるためにたく さんの煌めきを~♪」

すると楓の体が光り出した。

「嘘、でしょ。今度は一体何?」

「雪、楓が怒らせちゃってごめんな」

「朔夜兄さんっ!?」

姿形は楓だったが確かに中身は朔夜兄さんだった。

「朔夜兄さん私こそごめんね」

「いいよ。気にするな俺の不注意が生んだこ とだから。だけどそれ以上後ろ向きのこと 考えたら祟ってやるからな」

「あはは、分かった絶対に考えないよ。約束 する。私、朔夜兄さんと話せて良かった」

「これからも弟の楓のこと頼むな。少し生意 気だけどいい奴だから」

「分かってるよ兄さん。私に任せて」

「ありがとう。・・・大好きだよ雪。この世 の誰よりも雪のこと愛してるからな」

「私も大好きだよ朔夜・・・。いつまでも朔 夜のことだけを愛してるからね。何回生ま れ変わっても私は朔夜のことを想って恋を する」

「来世で必ず俺のこの手で幸せにする。だか らほんの少しだけお別れだ雪。さよならな んて言わないまた会おうな雪」

そして再び楓の体が光りその後しばらくして楓は目覚めた。

「おかえり楓」

「ただいま雪!兄さんに美味しいところ全て

 持って行かれちゃった」

「何バカなこと言ってるの帰るよ。私達の国 にね」

「俺、雪にあんな酷いこと言ったのにまだ家 族でいてもいいの?」

「もちろんだ。だって家族の絆は切っても切 れないほど太いからね」

こうして私達は国へと帰って行った。私は帰ってかなりいろいろな人に怒られた。でもその度に実感したことが一つあるんだ。

「私が気付いていなかっただけで私の周りに はこんなにたくさんの私を想ってくれてる 人がいたんだね。気付かせてくれて、あり がとう朔夜」

私は一人空を見上げてそう言った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

HERO 桜吹雪 @sakurafubuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ