欲しがり者4
ある所に神様の見習いがいました。その神様の見習いはある日、神様に呼ばれ、こう言われました。
「これからお前には、百の願いを叶える力を授ける。その力をすべて、好きにあの二人に使いなさい」
神様の指をさした先には、男がいました。
二人の男は体格も貧しさも同じで、体は細く、生活は豊かではありませんでした。
さっそく神様の見習いは、二人の男を幸せにしてあげたいと存分に力を使おうとしました。神様から百の願いを叶えられると言われたので、それぞれに五十ずつ、同じように幸せにしようと思いました。
神様の見習いは、二人の男の仕事が順調にいくようにと力を使い始めました。すると、二人の男はさっせと働き、充実した日々を過ごし始めました。
神様の見習いは、更に力を使います。二人の男の仕事は増々忙しくなり、生活は豊かに過ごせるようになってきました。
神様の見習いはうれしくなりました。このまま二人の男を幸せにし、自分も神様になれる日が近づいたと満足した日々を過ごしました。
しかし、ある日のことです。二人の男に変化が起きました。
一人の男は豊かな生活を送り、傲慢になってきました。全部、自分のお蔭だと言い、好き放題に振る舞うようになりました。なにかをもらっても、
「もっとくれ、もっと!」
と、満足することもありません。
しかし、一方の男はどうでしょう。つつましい生活を送り、謙虚になっていきました。今の生活はみんなのお蔭だと言い、恩を返したいと笑顔で過ごしています。なにかをもらうと、
「ありがとう」
と、ささいなものでも深々と頭を下げます。
神様の見習いは神様の言葉を思い出しました。
「これからお前には、百の願いを叶える力を授ける。その力をすべて、好きにあの二人に使いなさい」
それぞれに五十ずつ、同じように幸せにしようと思ってた神様の見習いでしたが、二人の男を同じように幸せにはできませんでした。
神様の見習いはショックを受け、どうしたら二人の男を同じように幸せにできるのかを考えました。
残っている力は、あと三十回分です。
神様の見習いは力を使うのを止め、しばらく二人の様子を見守ることにしました。
謙虚な男はそれでも豊かになっていきました。
傲慢な男は次第に貧しくなり、人々も離れていきました。
神様の見習いは時折一回ずつ力を使い、再び二人の様子を見守りました。
すると、謙虚な男は傲慢な男に話しかけるようになりました。
また、神様の見習いは時折一回ずつ力を使い、再び二人の様子を見守りました。
すると、二人は互いにない部分を補い合いながら、一緒に商売をするようになりました。
謙虚な男と傲慢な男は刺激を受け合いながら切磋琢磨し、神様の見習いが力を使い終るころには、二人は親友になっていました。
全ての力を使い切ったとき、神様の見習いは神様に呼ばれました。
「ご苦労であった。実は今回、パラレルワールドを使用し、お前を含めて四人の見習いに実習をさせていた。この実習が終わったのは今日だ。つまり、お前が一番最後だった。もう何十年も何十年も長かったであろう。はやく力を使い切りたいとは思わなかったのか? はやく見習いを卒業し、神になりたいと思わなかったのか? お前は、この実習でなにを思った」
神様からの言葉に、神様の見習いは陳謝しこう言いました。
「神様、実習を長引かせてしまったのは申し訳ありません。ですが、私には力をはやく使い切りたい、見習いを卒業したいという思いはありませんでした。私が願ったのは、二人の男を同じように幸せにしてあげたいということだけ。ですが、その考えは間違っていたと気づかされました」
ほう、と神さまは言いました。神様の見習いは続けます。
「人は、誰でも自力で幸せになる力を持っています。私たちは、それをわずかに手助けするに過ぎません。過度にすれば誤った道を選択させてしまうこともあったでしょう。いいえ、私たちが力を過信してしまえば、不幸な結果を招くことだってあったのかもしれません。私は間違っていました。二人の男を幸せにするために、神様が私に力をくれたのではありませんでした。私は、あの二人の男に、実習のために得た力を、私が実習を終わらせるために使わせてもらっただけでした。多分、あの二人の男は、力を使わずとも、やがて互いに助け合い、親友になったのでしょう」
実のない果実 呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助) @mikiske-n
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