マジカル・バトル・ロワイアル

東雲八雲

チュートリアル

突然だった。



3月11日の夜。何気なく携帯をいじっていたら、着信が来た。



それはとあるイベントの参加メールらしい。内容はこうだ。



『このメールが届いたあなたはとてもラッキー!あなたは我が社が主催するイベント『マジカル・バトル・ロワイアル』の参加権を獲得しました!詳しくはこちらのサイトへ!』



見るからにして、怪しさが隠しきれない。普通に考えれば無視してほっとくものだろうが、思春期真っ只中の彼女はそんな事は露にも思わず、好奇心で文面に書かれているアドレスのリンクをタップした。



すると、画面はきらびかやなサイトページを映し出した。



画面の所々に、金色を基調としたひし形模様が散りばめられており、更に怪しさを見せつけていた。


次に映し出された画面には、こう書かれている。



『参加確定しました。あなたのマジカルネーム、魔法、ステッキ、パラメーターは以下の通りとなります。


マジカルネーム:エアロ

魔法:浮遊

ステッキ:ほうき

パラメーター:攻撃力C 防御力D 射程範囲B 持続性A 操作性S 素早さB


開催は翌日3/12となります。振るってご参加ください』



「……?」



ただサイトを開いただけなのに、参加する事が決定していた。


しかも開催日は明日。学校がある日だ。



どうにか不参加を伝えようと、主催者側のアドレスや電話番号をサイトから捜したが、見つかる事はなかった。



書いていたのは上記の文だけ。それ以外は見つからなかった。



何だったんだろう。と彼女はサイト画面を消して、布団にくるまって眠りについた。



しかし、彼女はのちに知ることとなる。



この温もりを、安心して感じる事が出来る事が、この日をもって最後だという事に。



*********



『参加しなさいよ』



SNSサイトを開いていた『安部山真織あべやままおり』は、怪訝気味にメッセージを見た。


相手はクラスメイト、ただしいつも自分を顎で使ってくる嫌な奴だ。正直会いたくないのだが、そんなのお構いなしに、あちらから次々と命令してくる。



何故このメッセージが送られてきたかと言うと、数分前、真織の携帯に一件のメールが届いた。



内容は『マジカル・バトル・ロワイアル』の参加権を得た。というものだった。


気になってサイトを開こうとしたが、その前にクラスメイトからメッセージが届く、内容からして、クラスメイトにも同じ内容のメールが来たようで、そっちにもメールが来なかったか?と尋ねてきた。



隠す必要はないと思い、真織はメールの件を伝えた。



その後に先述のメッセージが届いたのだ。



話すべきでは無かったと後悔した。しかし言ったところで、彼女には逆らえなかった。何をされるかわからない。


靴に画鋲で入れられる程度では済まないかもしれない。愛用しているノートをズタズタにされるだけでは済まないかもしれない。



傷つきたくない一心で、真織は渋々参加する意志をメッセージで伝えた。この時、やけに文字を打つ指が重いと感じた。



*********



「メールの準備は出来たかしら?」



「大丈夫。ちゃんと確認したよー!」



「うぅ……失敗しませんように……」



とある建物の一室、女性たちは言葉を交わす。



一人は真面目に、



一人は無邪気に、



一人はおどおどと。



「もうすぐ、12時を回るわ。準備を始めなさい」



誰よりもきっちりとした声色を最後に、ひと時の静寂に包まれる。


そして一同は、手元に携帯の画面を開いて、確認するように壁にかけられている時計を一斉に見遣る。既に時計の長針と短針が、12の位置に重なっており、それの後を追うように、一番細い秒針がゆっくりと近づいてくる。



「第14回、『マジカル・バトル・ロワイアル』。開始スタート



一人の女性が合図するように声を上げると、秒針が12の数字に重なった瞬間、部屋にいる女性たちは携帯のボタンを一斉に押した。



『メールが送信されました』



女性たちの手にしている携帯の画面には、その一文が浮かび、ぴろりん♪という軽快な音色が流れた。



それは思春期の少女たちが織り成す、華やかで血みどろな戦いを告げる号砲のようだった。

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マジカル・バトル・ロワイアル 東雲八雲 @nomeyaku

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