1章 3話 麻友の登場

「はあ〜追いついた〜!おはよぉ〜」



麻友は少し息を切らしながら俺たちに挨拶をした。



「おはよ。麻友、走ってきたの?」



「あはは‥うん。夏波達の後ろ姿見えて、思わず走っちゃった〜」



キラキラした笑顔で麻友は答えた。

その顔を見た瞬間、夏波は、

‥‥平静を整っていたのが一瞬崩れた。

‥一瞬だけ、口元が緩んだのに俺は気づいた。



「ゴホッゴホッ!」



「‥‥!」



俺がわざとらしく咳払いをしたら、夏波はハッと我に返った。



「‥そっかー!わざわざ走ってくれたのね!ありがと!」



「ううん!夏波達と早くお話したかったから!」



‥‥また夏波がにやけそうになっている。



「‥‥あ、あー!麻友ちゃんさ!数学の宿題やった!?こいつまたやってこなくてさ!」



とっさに麻友に話しかける。



「数学?うん!やったよ〜!今回ちょっと難しかったよね。夏波ちゃん数学苦手だし、やってこない気持ち、わかる。」



麻友は優しい。

夏波のこのどうしようもないところもしっかりフォローしてくれる。



「麻友ちゃん、夏波の肩持たないで!夏波が余計にやってこなくなる!」



「うっさいわね!私だってやる時はやるわ!」



いつの間にか正気の夏波が話に参戦した。



「って言っても大体やってこないじゃん」



「数学は本当に無理なんだって!古文とかはやってきてるし!」



「2回に1回は忘れてるけどな」



そんな俺と夏波のやりとりを見ながら、麻友はふふっと笑っている。

きっと麻友は、本当に仲いいなーとか思っているのであろう。

幼馴染。家が隣。昔から知ってるからこそ仲良くできる。

それ以上の関係にならず、踏み出す勇気もなく。



昇降口前。

麻友はあっ!となにかを思い出したのか声をだした。


「私、今日日直だから、日誌取りに職員室行かなきゃ!ごめんね2人とも!ちょっと先にいくね〜!」



そう言い麻友は小走りで職員室に向かった。



麻友の姿が見えなくなると同時に‥



「‥‥ふふっ、ふへへ‥‥」






夏波が壊れた。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染は女の子に恋をした。 @aoi1121

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ