1章 2話 俺の好きな人

玄関から出てきた女子高生。

栗色の緩く巻いてある髪。

バッチリ極めてある派手な化粧。

低くもなく、高くもないごく普通の身長。

それなりに細い体型。

リボンを下げて、着崩している制服。

見た目は完全にギャル‥‥というかイケてる女子。

リア充です!といわんばかりな彼女。

坂口夏波(さかぐちかなみ)は俺の幼馴染だ。



「おう、おはよー」



彼女と俺はほとんど同じタイミングで家を出る。

幼稚園から現在高校まで同じ学校に通っていて、高校からはほぼ毎日一緒に登校している。

彼女の話を聞くことが、俺の日課だ。



「ねえねえ歩〜。今日の数学の宿題、やりました?」



歩きながら、彼女は話しかける。



「もちろん俺はやりましたよ。優等生ですから。」



「うわ言うね〜!じゃあさ、その宿題、見せてくれませんかね?お願い!」



夏波がパンっと手を合わせて、お願いしますと訴える。

彼女の数学嫌いは熟知している。

今日の宿題もやってないことは予想済みだ。

‥‥というか、数学の宿題に関してはまともにやってきたという記憶が全くない。



「またやってないのかよ。数学になると毎回だな。」



半ば呆れを交えて言う。



「だってー全然わからないんだもん。暗号だよあんなの。お願い!アイス奢るからさ!ね?」



ね?と首を傾げる。

その仕草は反則だろ‥。

ギャルっぽい見た目は俺の好みのタイプではない。

が、大きな瞳に見つめられてお願いされたら、多分誰だって‥‥



「‥し、仕方ないな!今回だけだからな!」



‥‥こうゆうであろう。



「やった〜!!!じゃあ今日家にいてね!ガリガリくん買ってくるから!」



「やっすいな!!!俺の宿題!!!」



やった!やった!とニコニコしながら喜ぶ夏波とやれやれと呆れる俺。



俺はずっと前から、小さい頃から夏波が好きだ。恋愛感情として。

だからか、夏波のことになると少し弱い。

宿題見せて!や

購買行くならジュース買ってきて!

なんかはしょっちゅうだ。

言われすぎてもう慣れてきた。

別に、意地悪をして宿題を見せない、買ってこないってこともしない。

夏波がお願いすることを先回りすることもしない。

見せてーや買ってきてーって話しかけてもらえることが、俺は嬉しいのだろう。

俺を頼られていることが、必要とされてることが嬉しい。

だから、宿題の話も夏波からふっかけてくるまでしない。

‥‥俺は決めている。



「そうそう!昨日テレビでさー‥‥」



夏波は昨日のテレビの話を始める。

夏波の話はさまざまだ。

学校での話、テレビの話、家での話‥‥

世間話だ。

だが、夏波の話です1番多い話は‥‥







「あ!夏波!歩くん!おはよ〜!」



学校付近。女の子らしい可愛い声が俺たちを呼んでいる。

夏波はその声に‥‥

一瞬固まった。

そして、一呼吸おいて、後ろを振り返る。

俺も、そんな夏波の様子を見ながら振り返る。



黒髪のふわっふわしたくせっ毛の短い髪。

小さめの身長。

大きい目。小さい顔。

薄い化粧。

着崩しの少ない制服。



橋本麻友(はしもとまゆ)が小走りで俺らの方に向かっていた。








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