美少女化したオリキャラまで参戦してきてハーレムの主が疲労困憊 5
でも、これを書いているのが秋陽じゃないなら……作者は一体、誰なんだ?
「秋陽さ、USBとか失くしてない?」
まぁそれが一番有り得そうな線だろう。
あと考えられるのは、秋陽の使ってるパソコンがウィルスに侵されててデータが流出した、とか。
でも確かあのパソコン、今年の四月に買ったばっかりじゃなかったっけ。多分セキュリティソフト、まだ期限切れてないと思うけど。
秋陽は少し考えたけど、首を横に振った。
ああうん、よく見たらパソコンのUSBポートにメモリ刺さってるね、猫の形の可愛いヤツが。
「うーん、電車降りる時に手帳を落としたくらいかなぁ」
何でも、もう直ぐ駅に着きそうなのに気付かなくてメモを続けてて、慌てて降りようとした時に手帳を落としてしまった事があったらしい。その時近くにいた人が拾ってくれたんだって。
「でも短時間じゃ覚えるなんて無理だと思うよ」
「うん、俺もそれはないと思う」
秋陽は普段から、思い付いたネタとかを直ぐに書き留められるよう、小さな手帳を持ち歩いてた。
でもあの手帳、俺も見せてもらった事あるけどさ。本当にアイデアがそのまま書き留めてあるだけだから……他人が読んだって訳分かんないと思うよ。時々秋陽本人も分かんないんだから当然だよね。
「でもその時は丁度、キャラクターと世界観だけはまとめてたよ」
まぁそうだったとしても凄い記憶力だよね。見られるとしても一瞬じゃん。瞬間記憶能力持ってる人なんてそうそういないって。
「結局、誰か分かんないね」
「うん」
ちょっと怖いなぁ、と秋陽は呟いた。普通に考えればそうだよね。
というか……これを言ってしまうのも何だけど、あの小説は盗作する価値はあんまりないと思うんだよ。
だってあれは、誰もを楽しませる為の小説じゃないから。他人が読んで面白いようには、秋陽は書いてない。
究極……大好きな友人や家族、秋陽の周りの人だけが楽しめたらそれで良いんだ。だからネット公開もしてない。目にするには、俺みたいに秋陽が印刷した原稿を基本的に読みするしかないんだよね。今は確か、第一章だけが回し読みされてるんだっけ。
兎も角、あれは『自分達が出演している』という、俺達にしか価値がない物なんだよ。手帳には、もっと面白いストーリーの物だってあった筈だし。
うーん、謎だなぁ。
まぁ俺にはもっと謎であり訳分かんない事があるんだけども。
「あとさ……もう一つ、信じられない事があるんだ」
「え、まだ何かあるの?」
秋陽の顔が強張った。そりゃね、これ以上何があるっていうんだろうね……警戒するよね。
「実は俺……『災厄姫』の世界に行ったんだ」
数秒間たっぷり間を置いて、秋陽は俺の顔を真剣に見つめながら言った。
「綴君も、ゆっくり休んだ方が良いよ?」
「いや違うんだって! 本当に!」
言ってて俺も思ったけど、普通はそう思うよね。
でも俺は秋陽に信じてもらおうと必死だった。
「秋陽の原稿を枕にして寝ると、向こうの世界に行けるんだよ!」
「何だ、夢の話かぁ」
「いや違くて!」
結局その日の夜に試そうという話になるまで、秋陽を説得するのに夕方まで掛かった。
君の書いたファンタジー小説の世界へトリップする事になった 璃羽 @siren-plm
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