美少女化したオリキャラまで参戦してきてハーレムの主が疲労困憊 4
「ぷ……あははははは」
アイスの肴に、昼休みの出来事を話してみると……秋陽は笑い出した。
そりゃぁ他人事なら笑える話だけどさ。それにしたって、笑い過ぎじゃない?
いや秋陽が元気になってくれるのは嬉しいよ。
俺からしたら、久し振りに見られた彼女の笑顔だし。
俺が来た時は秋陽の顔色もちょっと悪かったけど、今は微かに頬に朱が差していたし。
いやでも今度は咳込んで顔真っ赤になってるよ。そろそろ落ち着こう?
「弥会長は、相変わらずだなぁ」
やっと笑いと咳が収まった秋陽。
「え、如何いう事?」
そう言えば秋陽、全然驚いてないね。あんなインパクトのある弥弁当をさ。
もしかして、弥会長の料理の事……知ってるの?
「大変だったよ? バレンタインの時、チョコ作る練習に付き合え……じゃなくて、私がチョコを作る練習に付き合ってやるから有り難く思えって言われて、大量のカカオ豆持ってきたんだよ」
マジか。そんな事があったなんて全然気付かなかった。秋陽のチョコが普通に美味しかった記憶しかない。
一肌脱ぐくらいなら良いかと思ったら、身包みはがされた……そんな感じだったと、ちょっと遠くを見ながら秋陽は言う。
詳細は語ってはくれなかったけれど、大変だったんだろうなという事は分かった。
「最初は弥会長も、自分の料理のセンスが人とちょっとズレてるって自覚あったみたいなんだけど。ほら、龍二さんが……弥の料理は不味くない、世界一美味しいって言っちゃうでしょ? だから、自信付いちゃったみたいで」
ああ、その結果が凄い弁当なのか。自分の首を真綿で絞めてるんだなぁ龍二って。
「別に料理しなくても良いと思うんだけどなぁ」
だって自宅に板前さんもシェフも専属の人がいるんだよね、弥会長の家って。出来なくたって全然困らない筈なのに。
「龍二さんには彼女の手料理、将来産む子供には母親の手料理を振舞いたいんだって」
その夢は素敵だと思うけど絶対やめた方が良いと思うんだ。
でも弥会長の料理の腕って、あれが素なんだね……別に、ネット小説の影響を受けた異変じゃないんだ……それもそれで如何なんだろう。
いっそあのネット小説の所為であった方が良かったんじゃないかなぁ。だってあっちで起きてる事を正したら、弥会長の料理の腕も直る訳でしょ?
でもそうじゃないって事は、周りの人間が矯正するしかないんだよね。しかも現在悪化の一途を辿ってるし。
「あ……そうだ、秋陽。話、変わっちゃうんだけどさ」
「うん?」
思い出した以上、俺は秋陽に聞かなくてはならない。いや、避けては通れない話題なんだけどね。
「災厄姫シリーズ、あるじゃない?」
「あ、続き、読んでくれたの?」
秋陽は嬉しそうに笑って、それを見るとちょっと胸が痛んだ。
「読んでるけど。今日は……災厄姫シリーズについて、聞きたい事があって」
「もしかして、分かりにくい所があった?」
「そうじゃなくてさ……秋陽、あれを書き直したりした?」
秋陽はきょとんという表情を浮かべて俺を見つめる。
「うーん。誤字とか、表現の方法とか、変えた方が良いかなと思う所は変えてるかな」
その様子だと、ネットのは秋陽が書いているのではないみたいだ。
だったら、尚更ショックを受けるかもしれない。謂わば、盗作されてるようなものだからね。作者としては、きっと嫌な事だろう。
「……秋陽、落ち着いてこれを見て欲しいんだ」
俺はジャケットのポケットに入れてあるスマホを取り出した。画面を付けて、ウェブブラウザを立ち上げる。
そして、『災厄姫に幸福を』の目次のページを開いて、秋陽に渡した。
秋陽は俺のスマホを手に取り、操作を行う。タップやスクロールを数度行い……呆然とした顔になった。
「……似てる、ね」
やっと秋陽の口から言葉が出たのは、数分経ってからだ。秋陽は俺の手にスマホを返し、力なく頭を垂れた。
「俺、最初これを見た時……秋陽が書いてるのかと思ったんだけど」
「私じゃない」
下を向いたまま、秋陽は首を横に振る。
「……うん、みたいだね」
そのまま俺達の間に訪れる、沈黙。
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