美少女化したオリキャラまで参戦してきてハーレムの主が疲労困憊 3

 セラスの『愛情表現かっこぶつり』は、決して作者による誇張ではない。

 瀧永さん程ではないけれど、弥会長もまた格闘技の実力者である。合気道に剣道に柔道……あと何だっけ。兎に角、色々段とか帯とか取ってるらしい。


 そして女子に手を上げない主義の龍二はどんな時でも反撃などは一切せず、ひたすら受け身に徹している。


 でも龍二もたまには怒って良いと思うんだよね。


 だってさ……一段目の重箱の中身、日の丸だよ? 二十センチ四方の器にみっちり敷き詰めた白米の真ん中に、梅干しが一つって如何なの?


 蓋を開けた龍二自身も固まってるし。龍二を囲んでいた女子も目を丸くしてるし、俺達も似たような反応だ。


 重箱にするとしたら……せめて、中身の違うおにぎりとかサンドイッチとかを詰めるモノじゃないの?


 何で弥会長、そんな誇らしげに胸を張っているの?


「嬉しいだろう? 龍二は身体を動かす事が多いからな、エネルギーになる炭水化物だぞ」


 日本人としては白米は嬉しいけど、限度ってあると思うんですよ会長。


「あ、ああ。ありがとうな」


 龍二も何とか笑顔を作ってたけど、引き攣っている。


 でも二段目はおかずが入ってる……んだろうし、量が多いだけで大丈夫だよね?


 なんて思ってた俺は、甘かった。

 正直言うと、ごはんと同じ感じで出汁巻き玉子がぎっしり入ってるとかだと予想してた。


「なぁ弥、これ、何だ……?」


 重箱の二段目は、一面のピンク色だった。龍二だけじゃなくて、全員の頭の上に疑問符が浮かんでいる。


「ふふ、良く聞いてくれた! それは豆腐、冷奴だ!」


 弥弁当のおかずは、俺の予想の斜め上だった。


「家が贔屓にしている料亭で使っている豆乳を私が固めたんだ。他が濡れないように配慮して作ったんだぞ」


 弥会長多分、苦汁の量間違えたんじゃないですかね。

 いや……凄い堅そうだしさっきの台詞もあるし、もしかして寒天とかゼラチンを多めに使ってません?


 百歩譲ってあれが豆腐だとして何で色がピンクなの? 何を入れたの?


 龍二も同じ疑問を持ったようで、それを察した弥会長は人差し指を天に向けて立てながら自信満々に答えてくれた。


「苺のチョコレートを隠し味に使ったからな。可愛いだろう!」


 ああ、うん、最近スイーツみたいに濃厚な豆腐って出てるよね。俺、あれにメープルシロップ掛けて食べるのが好きだな。


 いやね、デザートとしては有りだと思うよ。でも白米のおかずとしてはちょっと……ない。


 あと隠し味って間違ってると思う。隠せてないし隠す気もないよね多分。


「その下は龍二の好きなおにぎりだぞ!」


 えええええええ日の丸弁当があるのに更におにぎりなの⁉


 驚いた龍二は更に三段目を開いてみる。本当におにぎ……り?


 いや、何ていうか……こう、見た目はどっちかというとおはぎだ。俵型に握ってあるご飯が、何か黒い物に包まれている。

 俺の位置から分かるのは、取り敢えずそれが餡子ではないという事だけだ。


「最高級の岩海苔の佃煮だぞ」


「お、それは旨そうだな」


 何で佃煮で包んじゃうんだろう。普通の海苔の状態で巻けば良いのに。


 ただ龍二の言うように、弥会長が使用する物だもん、美味しいんだろうなぁとは思ったけど……それだけで終わる気がしないんだよね。


 案の定、そのおにぎり(?)を一口食べた龍二は目を白黒させた。


 そして水の入ったペットボトルを手に取り……がぶ飲みっていう勢いで飲み干す。


 それでも足りないらしく、靴を履くのもそこそこに、一番近くの水道まで疾走していった。


 暫くして、如何にか復活したらしい龍二が戻って来て、弥会長に一言。


「何でこのおにぎり、甘いんだ?」


 甘いって如何いう事だ。


「砂糖をまぶしてあるからだが?」


 しかし弥会長はきょとんとした顔をしている。

 甘いおにぎりの何がいけないのか理解出来ない、とでも言いたげな表情だ。


「疲れた時は甘味が脳に効くんだぞ、知らなかったのか?」


 だから、龍二の為に砂糖をたっぷり使ったんだと弥会長は笑った。


 ねぇこれはもしかしてさ……既に弥会長に異変が起きているんじゃないの?

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