哲学的なまでに予想外の着地点に導いてくれること請け合いです。いや、実に素晴らしい!
勇者を復活させ、魔王を倒すという王道ファンタジーRPG風でありながら、その基幹はSF的。街の中には自動車が、魔術は演算を利用して。 世界を動かすエネルギー源とは、魔王の正体とは、魔王復活の度に魂を蘇らせる勇者とはいったいなんなのか。不条理のなかに救いがある、そんな物語です。
ファンタジーの王道をゆく内容、それこそテンプレ「魔王討伐をする勇者」を描いている。でもそれって大抵、長編ファンタジーなんですよね。なのに1話……で、完結? え?? という疑問から読みました。1話だけできちんと完結して、しかも内容がファンタジーというよりSF寄りだったという。おー、と思いました。物足りなくないです。私と同じく1話だけで魔王と勇者を描けるのかっ!? と疑問の方はご安心を!
勇者と旅をする聖職者の物語。まるでRPGのようなあらすじですがアイデアはSF的。ネタバレを避けるため多くは語れませんが、主人公と共に旅する勇者は特殊な「意識」を持っており、それもまたRPGを連想させます。ですが後半、これが単なるパロディではないことが明らかに。〈カクヨム計劃トリビュート/〉参加作という事もあり、捻りのきいたどんでん返しが待っています。そして最後には、伊藤計劃氏の記さなかったある種の救済も。どこかニーアレプリカントを連想させる雰囲気も切なくて好きでした。