部屋

「眩しい…」そう思い目を開けると

そこには青が広がった…




もう朝か…学校行かなな。


天井に貼られた数枚の青の写真を見ながらため息をつく。



学校が嫌な訳では無い。ただ面倒だと思ってしまう。



友達はいるがわざわざ学校に行ってまで話すほど楽しいとは思わない。

勉強はどっちかと言うと苦手だが、だからといって学校をさぼるほど嫌という訳では無い。



ふう…行こ…


ぱぱっと朝食を食べて家を出る。



軽いカバンを抱えてバスに乗る。


カバンにはカメラ以外入っていない。


勉強道具は学校にある。




バスのひとり席に座るといつものように前の席に入学時からすっかり顔見知りのおじさんが座る。



いつものようにぼーっとしていると学校に着いた。



まだショートまで50分ある。


学校にある図書館でひっそりと課題をする。


こそこそ話す後輩達の声が聞こえる。

どうやら朝の単語の小テストが嫌なようだ。平和だと思う。



ショートの10分前に図書館を出る。



10分前にも関わらずクラスには3分の1程度にしかクラスメイトがいない…


自分のクラスながらそれぞれのやる気のなさに苦笑する。


席が近い友人に社交辞令の挨拶をする。


約6時間大人達が話すのを聞いて下校する。


バスでカメラの本を開いているうちに寝ていたようだ。



起きた時には全く名前の知らない砂浜に来ていた。



砂浜は好きでない。景色は綺麗だけど髪の毛がバシバシになる。



こうなるとお風呂の時にシャンプーするのが非常に手間がかかる。そう長くない髪の毛だが絡まりやすいもので困る。



でもそこの浜辺は人がいなく何故か落ち着いた。



そっと砂浜に座り、ぼーっと海を眺める。



なんとも絵になる光景だ。

カメラを取り出し、細かく設定を変え50枚ほど写真を撮った。


ネットには100枚ほど同じ写真を撮ると写真が上達すると書いてあった。



正直言うと私に設定をちょこちょこ変えながら100枚も同じ写真を撮るほどの忍耐力はない。



どうでもいいが、小学校の時入っていたミニバスは5か月しないうちに辞めてしまった。




そんな訳で適当に写真を撮ったあと帰りのバスの時間を調べてなかったことに気づき、急いでバス停へと戻った。



幸い三分ほど待ったらバスがきたのだが、あの砂浜はどうやら家の近くのバス停からバスで5分ほどの場所のようだった。


あんな場所があるなんて全く知らなかった。少し得した気分だ。



家に帰っても人はいない。母親はこの時期忙しく夜遅くまで帰ってこない。



唯一家にいたのは母親の好きな柴犬だ。やはり動物には癒される。人なでして餌を置いておくと尻尾を降って食べていた。



どうせ暇なので近所の塾に行って授業を受け。母親の帰る時間に合わせて家に帰る。


父親は離婚したのでいない。


寝る前にカメラのデータを確認すると、とても綺麗な青の写真が沢山あった。


初めて自分の好きな写真が撮れてうれしくなった。



それから平日には学校の補習のない水木以外の日はしょっちゅう放課後にあの浜辺に行った。



日によって好きな本を読んだり、砂浜で寝たりしている。


おかげで学校に行くのにカメラとカメラの本とレジャーシートは手放せなくなってしまった。



何故かわからないがこの浜辺は風が少なく髪が絡まらないので本当に助かる。




その二週間後の日曜日。暇だったので犬の散歩ついでに家から砂浜まで歩いていってみることにした。


めんどくさがりの私にしてみれば初めての試みだ。



やはり歩きだと少し時間がかかったが、時間があればゆったりと行ける距離だ。



いつものようにカメラとカメラの本とレジャーシートと犬の好きなボールを持っていった。



犬がいるから流石にカメラは使えないと思っていたがそういえばこの砂浜には人はいつもいないので犬のリードをとってもいいかと思い、リードを取ってボールを使って遊んだ。




いつもより広い場所で遊んでいる犬は心無しかたいへん笑っているように思え、パシャリと写真を撮って好きな犬と好きな風景のコラボを楽しんだ。



砂まみれの犬を連れて歩いていると丁度夕飯の買い出しから帰った母親とばったりあった。


「なんでそんなにドロドロなんよー」と少しめんどくさそうにいう母親にへらっと笑って「遊んできた」と伝えた。



「ちゃんと洗ってあげてよなー」と言われたのでそのままお風呂場に向かい犬を洗った。



やっぱり動物は可愛い。




また寝る前に写真を見返し満足して眠りについた。(明日は学校帰りに写真を印刷しよう)



次の日、写真を2枚大きいサイズで印刷した。



家に帰ると犬がまた砂浜に行きたいと言うように擦り寄ってきたが、もう遅いので我慢してもらった。



部屋の天井には犬と青のコラボの写真と青と砂浜の写真が追加された。


幸せだ。



その日は青空の下海の上で犬と浮いている夢を見た。



いつ溺れるのかと案外怖かった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@moron

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ