@moron

浜辺



「眩しい…」そう思い目を開けると

そこには青が広がった…




怠けた脳を働かせて上半身を起こすと、果てのない海が見える。



先に何も無いただただ続く青い海。

その海に負けないくらいに青い空。

この景色を見ているだけで心が満たされる。



この海に浮かぶ、小さな小さな俺の島に自分専用のリクライニングのきく椅子を置いて読書をするのが日課だ。(と言っても他にすることなんてないのだが。)


腰を曲げて地面に落ちてしまっている本を拾う。



本を顔に被せて寝たつもりだったのだが、寝ている間に落ちてしまったようだ。


ここに来たのが朝の10時くらいだったからいまは12時頃だろうか。



小さい頃から病弱で両親と離れて祖母の住む空気の綺麗な大松島に住んでいる俺は、15歳までは家庭教師がいたのだが、教えてもらうことがなくなったのでこの2年は毎日のようにこの小さな小さな俺の島に読書をしに来ている。



小さな小さな俺の島は大松島の浜辺から100mくらいの所にぽつんとある砂山だ。

砂山であるにも関わらずいつもここにあるのだ。

なのでいつも自分専用の椅子を放置している。




学校も行っていないから顔を合わせるのは祖母か家から海岸までくる道で会うじいさんかばあさんぐらいだ。

一応大松島には小中高とあるらしいのだが、家からこの俺の島まで以外歩き回らない俺には学生に会うことはまずない。



昼時だと思われるから家に昼食を食べに帰ろうと少しひんやりとした海に浸かる。この辺は浅瀬だから水面は高くても膝上ぐらいまでしか来ない。いつものようにざばざばと砂浜へと向かう。




砂浜はいつも綺麗だ。ゴミなんて捨てる人もいない。落ち葉などが溜まっても暇なじいさんばあさんが拾ったりしている。



家に帰って祖母と昼ごはんのチャーハンを食べ終ると、祖母に畑を手伝うよう頼まれ、手伝っているうちに夕飯時になったので祖母と夕飯を食べた。




翌朝七時に起きて、祖母と朝食を食べ、

祖母と一緒に朝ドラを見他あとで

9時頃俺の島に向かった。




いつものように砂浜に出ると波の近くに本が落ちているのを見つけた。





自分が落としたのかと思ったが、昨日読んでいた本はまだ読み終わっていなく、俺のリュックに入っている。


このまま放っておくとゴミになってしまうし何より本が波に濡らされてしまうと思い


その本に近づき手に取ってみる。



ピンクの紙に押し花のしてある綺麗なブックカバーが被せられていた。


中を開いてみると一眼レフカメラ?の使い方のようなものが書いてあった。


ふむ。少ない旅行客か誰かが忘れていったのだろうか。


この浜辺は島の人にもあまり知られていない穴場なのによく見つけたな…



とりあえず本を波と離れた石の上に置いておいた。



もしまだこの島にいるのならまた探しに来るだろう。



俺はいつものようにざばざばと波に逆らって俺の島に戻った。



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