第3話 スライム終了

 煙の上ってる方に近づいていくと、何か怒号と金属同士がぶつかる音が聞こえてきた


(まさか、戦闘中なのか? スライムの俺がが行っても大丈夫かな~? ちょっと怖いからこっそり近づいて隠れて様子を見るかな……)


 【高速移動】を駆使して木々の影に隠れながら近づいて行った。平原に出て、背の高い草むらに身を隠しつつ、戦場と思しき場所が近くに見えたので慎重にそこへ移動して【熱感知】を使って様子を見ることにした。


(片方は人だよな? もう片方はゴブリンでいいのかな? 遠くにはいるのはオークかな? 魔物対人間って事なのかな?……あれ? 人と人も戦ってる、ゴブリンとゴブリンもか! 状況が分からないな……お、立派な鎧を着た人が指揮とってるな? 魔物っぽいのは人の兵隊なのかもな……となると国同士の戦争とかかな? 人同士の争いが世界崩壊の原因とか言わないよな?……)


 草むらに隠れて、戦場を観察していると下流の遠方でも煙が上がっているのが見えた。何故だかそっちの方が無性に気になったので、周りに気づかれないように木々に隠れながらこっそりと下流の煙が上がっている方へ移動していくと、そこには小さな村が武装した兵士に襲撃されている光景が広がっていた。【熱感知】を使って見ていた時、周りに住民らしき人影が見えないことに気が付いた。


(ここに住んでいた住民はもう逃げたのかな? 兵士たちは家探ししてるというより、村の破壊をし略奪しているって感じだな……見た感じの装備は兵士なのにやってる事は盗賊みたいだな……【熱感知】で探しても隠れてる人は見つからないしな。どうしようかな~)


「キャァァァァ」

「助けてくれーーーーー」


 村の様子を隠れて見ていると、離れたところから悲鳴や絶叫が聞こえてきた【音波感知】の精度を上げて、どの方向から聞こえてきたのか探ってみた。


(ん、なんだ? うーん――あっちの方から悲鳴が聞こえるな、てか日本語なのか? それとも、こっちの世界の言葉が分かる様になってると言う事なのかな? と、それよりも……今の悲鳴は逃げてる住民かな~?……う~ん、ちょっと怖いが……行って……みるか)


 行くか行かないか迷ったが、意を決して悲鳴のする方へ行ってみると、そこでは一方的な殺戮劇が繰り広げられていた。逃げまどう人々を追いかけ回して嬉々として殺している兵士たち、命乞いをする人までもお構いなしで殺している。もうあきらめているのか歯向かう人は誰もいない、子供も老人もその場にいる全てを殺しつくす勢いで剣を振る兵士たち、悲鳴がこだまする阿鼻叫喚の地獄絵図だった。


(これはひどいな、防衛隊とかいないのか? 誰も武器持ってるやつがいないぞ? 見た目から住人らしい人たちしかいなみたいだな、このままじゃ全滅するぞ! ……助けに入るべきかな~? てか、戦闘方法が体当たりしか思いつかないんだが、俺はあの兵士相手に戦えるのかな? 迷ってても被害が増えるだけだし覚悟を決めるか!)


 『住民の方を助ける!』と、覚悟を決めて兵士に体当たりし手吹き飛ばした。そして、住民たちの方に向かって身体を少しだけ伸ばして村の方を指し聞いた


「おい、お前たちはあっちの村の住人だろ大丈夫か?」

「スライム? しゃ……喋ってる!」


(あ、やっぱり喋るスライムは珍しいのかな?)


「何だ、このスライムは? スライム風情が俺たちの邪魔をする気か!」

「ああ、無抵抗の一般人を一方的に虐殺するのは見過ごせないんでな、邪魔させてもらうよ」

「ふはははは、言葉を発するとはいえスライムの分際で俺たちを止めれるとでも思っているのか?」

「やってみなけりゃ分からないだろ?」


【高速移動】 【硬質化】の体当たりで次々と兵士たちを吹き飛ばす、後方で他の兵士達が生き残っていた住民達に攻撃を再開しだしている


「こいつ! 本当にスライムか?」


(こいつら思ったより強くはないが数が多すぎるな、住民全員を守り切れない)


「パパー、ママーーーー」

「に、逃げろー」

「この子だけは助けてーーー」


 すぐそばで親子が襲われていた。両親は子供を守るため兵士からの攻撃の壁になっていたが、すでに血まみれだった。俺が助けに入ると――。


「そこのスライム! 息子を頼む」

「スライムさん、お願いします、この子だけでも……」

「……分かった」

「やだー、パパー、ママー」


 俺は子供に手加減し体当たりし、気絶させ【捕食】を使って子供の下半身を体の中に取り込んで固定して移動した。後ろの方に意識を向けると、両親が兵士に剣で体を貫かれていたがそれでも必死に兵士を抑えていた。


「おい、スライムとガキ一匹逃げたぞ! 追えー! っこの死にぞこないどもが離しやがれ!」

「俺が追うから、お前らは残ったやつらを皆殺しにしろ」

「了解しました、隊長!」


 隊長と呼ばれた兵士がかなりの速度で追ってくる。こっちは子供がいるので【高速移動】が使えないので、このままではすぐに追いつかれてしまう。


(これは逃げきれないな……何とか倒すしかないか……隊長とか言われてたし強そうだな……はぁ~、勝てる気が全くしねー! けど、やるしかないか)


 覚悟を決めて子供を川の近くにある木の側で解放してから隊長と呼ばれていた兵士……いや、敵に向かって【高速移動】からの【硬質化】の体当たりをした。


「くらえやー人間!」

「く、スライムにしては早いな……だが、攻撃が軽いわ!」


 盾で簡単に弾かれたが気にせずあらゆる角度から同じ攻撃で襲い続けた。

――――

 攻防が続いていたが、知らぬ間に子供のいるとこまで押し込まれていた。そして敵に子供が見つかり、膠着状態の戦いに見切りをつけて、子供を先に斬ろうとしていた……俺は……。


(させるかーー!)


「フッ、掛かったな」


(しまった、誘われた)


 そう思った時には既に遅く、振り返り様放たれた斬撃を受けてスライムの身体が縦に二つになった


(痛みとか感じないけど……これはいくらなんでも死ぬんじゃないのか? でも、ただで死ぬ気はない!)


「消えろ、スライムー!」


 意識の残された身体を強引に『硬質化』『高速移動』で突進した


「お前も道連れだー!」


 さらに横に真っ二つにされたが勢いそのままにぶつかって敵の後方の川に一緒に落ちた所で……目の前が真っ暗になり、意識が薄れていった…………。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「うわぁぁぁぁぁ!――こ、ここは?」

「宏太、気が付いた?」 


 そこは、以前見た薄暗い部屋、目の前にいるのは女神リエル。


(ここは……ん?  戻って……来たのか?)


「リエル?……もしかして、俺って死んだのか?」

「死んだよ~割とさっくりと死んだよ~お・つ・か・れ~」


(こいつは~~~人が……いやスライムか? が死んだというのをあっさりと軽く言ってくれるな! 相変わらずだな……てか、今の俺スライムの身体だな)


「そういえば、俺が守ってたあの子はどうなったんだ」

「それは大丈夫、あの後すぐあの子の住んでた国の兵士に助けられたよ」

「そうか……」


(よかった。無駄死ににはならなかったな、あの子の両親にも顔向けできるってもんだ)


「いや、マジでよかったよ~あの子ってさ【勇者の卵】ってスキルもってたんだよね~、しっかり育てば将来は孵化して【勇者】となって世界を救う手助けになるはずなのよね~」

「え? そんなすごい子供だったのか……えーと、それでさ、俺はなんでスライムに転生したんだ?」


(これは聞かずにはいられないだろう、何の意味があってスライムを転生先に選んだのか、きっちり説明させよう!)


「ランダムなんで!」

「は?」

「んー、ランダムなんで?」

「いや、疑問形に変えられても! って聞き逃したんじゃないよ? ランダムってなんだよ?」

「ランダムはランダムだよ! 宏太の世界にあるガチャガチャみたいなもんだよ、何が出るかは出てみないと分からない~みたいな?」


(スライムに特に意味なかったのかよ!)


「何その適当さ……だいたいスライムで世界なんて救えるか! 無理ゲー過ぎるだろ! もう、生まれて速攻詰んだようなもんだぞ!」

「いやいや、結構助かりましたよ? あの子を助けただけでもスライムにしては大金星です! 満足してます! さようなら~」

「そうなのか……って、おい! さようなら~ってなんだ?」

「いや、死んだんで、もう用はないからさようなら~、かな~と、こう~ポイッと」

「俺は使い捨てかよ! ゴミ箱行き感覚かよ!」

「冗談冗談、ちゃんと報酬あるよ(コホン)『前の世界に普通の人生確約で転生、記憶は魂からも切り離されてリセットの完全産まれなおし』と、なってまっすよ~っと、普通に生まれるて普通に生きれるはずだよ~よかったね~」

「普通……ま、波乱万丈っていうのも疲れそうだし普通が一番か……で、その言いようだと、この世界での俺はここで終わりってことでいいんだよな?」


(これで終わりか~なんかな~いまいち、やり切った感が無いんだよな~)


「宏太~、転生までの残り時間なくなってきたんで送るよ~」

「そんなすぐにか……まぁ、分かった、頼む~」

「ま~色々あったけど感謝してるよ~ありがとね宏太、さようなら!」

「おお! 大したことできなかったけどな……ま、がんばれよリエル! さよならー」


 そして光の中で俺の意識は消えていった。 そして、短かったスライム生を完全に終え、また人間として生きていくことになる。


 END

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転生~スライムだった~ 樽谷 @nitro-

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