第27話恐


あれから約1週間がたっていよいよこの現場ともおさらばだ。

体が慣れたころに終わってしまうのもどことなく切ない気もする。


「今日はあとこれ運んで終わりだ。」州夜が笑顔で言う。

「了解です。」

そう言って俺は州夜の指差す瓦礫をトラックに乗せた。

「疲れたろ?」

「俺もこんな大変な仕事だとは思っていなかったよ。初めてお前がすごいと思ったよ。」

すると州夜は不思議そうな顔をした。

「土岐人が俺の所に手伝いに来ると決まって同じセリフを言うよな。それが決め台詞かなにかなのか?」

しまった!

俺の知らないところで俺は同じことを言っていたのか。それもそうだよな。同じ人間、ましてや同じ俺なのだから。

「毎回そうやって思い知らされるんだよ。」俺は引き笑いで言った。

「そうなのか?ふーん。」

なんとか誤魔化せられたようだ。しかし自分の言動には注意しなくてはならないみたいだ。


あの日から俺の能力は戻ってこない。だがそれはそれで楽しかったりもする。

 いわゆる充実感ってやつかな。今まではやり直せる人生だった。だが今はやり直せない人生だ。だからこそ一日一日をしっかりと刻んでいこう。


「ほら行くぞ?」

州夜がトラックのエンジンを掛けながら俺を扇いだ。

「ごめん今いく。」俺は急いでトラックに飛び乗った。

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君のために出来ること 新風学 @shinpu-manabu

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