第9話

 じっとりとした冷たさを運ぶ陰鬱な雨が上がってしまうと、初夏の陽射しは汗ばむほどだった。キイラはガウンの袖を捲りあげた。このガウンはレイガンの弟子になった次の日に貰ったユタのお下がりで、キイラには少し大きい。それに、ドルムたちの着ている魔術師のガウンと違って裾と袖口の縫取りがない。見習いから下級魔術師、上級魔術師と位が上がるにつれて、この縫取りの線が足されていくことになっている。つまり、ユタやドルムの袖には一本、レイガンやジストフィルドは二本だ。


「それで、なにか困っているのだろ?」

 ドルムが髪を後ろで束ねながら、のんびりした口調で尋ねた。

「僕が力になれるかは分からないが、話してみたまえ、おちびさん」

「おちびさん?」

 キイラは思わず復唱した。

「わたし、もう十四なんだけど」

「おや、そうだっけ? ごめん、きみ、小さくってかわいいからさ」

 これにはキイラもかなり気分を害した。ドルムがこんなふうに言ったのは明らかにわざとだ。年齢のことなんか、レイガンから聞いてとっくに知っているに決まっている。第一印象でなんだかいやな感じがしたのは、やっぱり正しかったのだ。キイラは口を引き結ぶと、ドルムを置いて猛然と歩き始めた。ドルムは慌てたように追いすがった。

「おい、褒めたつもりだよ」

「褒め言葉には聞こえなかったわ。訂正して」

「でも、僕まだきみの名前をきみの口から聞いていないんだぜ」

 キイラははたと立ち止まった。その通りだった。自分も、出会ったばかりの兄弟子に対して少し失礼だったかもしれない。

「挨拶が遅れてごめんなさい。わたしはキイラ」

「よろしく、キイラ。僕はドルムだ。レイガンの一番弟子で、この春に独立したばかりだ。あの人に散々嫌味を言われつづけてきたからさ、きみの気持ちはわかるつもりだよ」

 そう言って、ドルムは手を差し出し、キイラの手を握った。ドルムの手はすらりとして一見して華奢にも思われたが、それでも自分の手と比べれば大きく、力強く感じられた。あたたかい、十九の男の手だった。手を離しながら、キイラはぽつりと零した。

「操水魔術の第一節ができないの」

 口に出した途端、惨めな気持ちになった。前評判通りであれば、この若い青年は優秀な魔術師であるはずだ。とても。自分の妹弟子がこんな——こんな簡単なところで躓いていると知ったら、落胆するかもしれない。

「何度やっても、成功しないの。やり方は分かってるのに。そう、わたし、こんなことしていないで練習しなきゃ。昨日も一昨日も、わたし……」

「まあ、そう慌てなさんな」

 ドルムがいっそ軽やかな口調で言った。

「今まで、部屋に籠って一人でやってきたんだろう? それでもきみは成功しなかった。つまり、そのやり方じゃだめだってことだ。そのままではいつまで経ってもきみはできない。小皿を見つめたまんま、おばあさんになっちまうよ」

 それは意地の悪い言い方にも聞こえた。さっきまでだったら、キイラはやはり気分を害してその場を立ち去っていただろう。しかし、キイラはそう言うドルムの声が柔らかな響きをはらんでいることに気づくことができた。多分、彼の手の温かさが、まだ掌の上に残っていたからだ。

 ドルムはふと近くの水溜りに手を翳し、ごく短い一節を唱えた。水は勿論小皿の中の分量よりもずっと多かったが、命ぜられるまま浮き上がり、球体となると、再び音を立てて地面の上に広がった。

「どうぞ、きみもやってみて」

 ドルムがそう簡単な物言いをするので、キイラは首を横に振った。

「皿の中の水だって動かせないのに、こんなたくさん動かせるはずないよ」

「やってみたのか?」

「やってみてはいないけど」

 キイラは渋ったが、やがて無言の圧力に敗れ、同じように水溜まりに手のひらを翳した。呪文をぶつぶつ呟く。水の表面が戸惑ったようにてんでばらばらの方向へ波打ち、そして沈黙した。いつも通りだ。ドルムはその様子を熱心に見ていた。

「ほら」

 キイラは投げやりに言った。

「言った通りでしょ。さっぱりうまくいかない」

「ううん、どうもきみ、集中できてないような感じだな。なんというか、こう情緒の乱れが……」

 ドルムがレイガンのようなことをあっけらかんと言うので、キイラはむっとした。

「情緒を一定にってレイガンも口癖みたいに言うけど……そんなこと言ったって、レイガン自身だってできてないじゃない。彼、今禁煙で苛ついてるのよ」

「キイラ、そういうことじゃない」

 分かっていた。でも、心が納得しないのだ。

「私は、言われた通りにやってるわ! それなのに……」

「『言われたことをやるだけなら、三つの子どもにもできるな』」

 キイラははっとして口を閉じた。目の前の青年をまじまじと見る。口調も声色も、レイガンにそっくりだった。キイラの表情を見て、ドルムが笑った。

「レイガンによく言われたよ。どうやら、きみもおんなじみたいだな。いいかい、キイラ。もう何度も言われているだろうけど、魔術を扱うときは頭の中をできるだけ空っぽにする、そして……」

 ドルムはそこで唐突に沈黙した。キイラは言葉の続きを待ったが、ドルムはそのまま少しの間黙ってなにか考えているようだった。そしてなにも言わないまま、自分でもう二、三度操水の基本を試した。それが乱暴なので、水飛沫が飛び散り、キイラのガウンの裾を濡らした。そのため、キイラはそれ以上借り物のガウンを汚さないように一歩下がらなくてはならなかった。気が済むまで水を弄ぶと、ドルムは指で顎を擦りながら、尋ねた。

「何を想像している?」

「えっ?」

 それが出し抜けな問いのように思われたので、キイラは思わず聞き返した。

「きみは魔術の力をどんな形でイメージしている? 例えば、僕は一枚のしなやかな布だ」

 ドルムが人差し指をくるくると回すと、キイラの周りを涼やかな微風が取り巻いた。その風は繻子のようにやさしく頰に触れたあとでキイラから離れ、石畳の間から生えているキンポウゲの茎をそよがせた。

「この布の形は自在に変化する。手巾一枚分の大きさにもなれば、大広間を丸ごと覆ってしまえるほどの大きさにもなる。僕はこの布を折り畳んだり、ぴんと張ったり、くしゃくしゃに丸めたりして色々なことに使う……例えば水を持ち上げるときは、その下に滑らせるようにして包む」

 再び水がキイラのすぐ傍まで浮かび上がり、その球体の中に、東の尖塔が上下逆さまに映り込んだ。水の球がパシャンと音を立てて弾ける。飛沫がキイラの胸元をまた少し濡らした。

「おっと、ごめん。それで、きみはどんなふうに?」

「手」

 キイラは答えた。昔からそうだった。

「目には見えない二つの手……」

「手か」

 ドルムは頷いた。

「いいね。なら、それをどう動かしたらいいか考えるんだよ、キイラ。きみのそのか細い手で、水を汲みあげるには?」

「指をぴったりつけて……」

「そうだ。しっかり、本当に見えるくらいまで想像するんだ。きみは、きみの手のひらで水を掬い上げる。包み込むようにさ。指先で掻き集めるんじゃない」

 言われるがまま、キイラはもう一度試そうとして手を持ち上げ、そして躊躇いがちに下ろした。キイラは首を振った。

「できないわ」

「できる」

 ドルムの思慮深げな鳶色の瞳の中に、優しげな光が閃いた。その光に、キイラは言い知れぬ親しみと胸が締めつけられるような懐かしさを感じた。その感情の理由は分からなかった。キイラは黙ってもう一度手を翳した。意識を集中させ、呪文を声に乗せる。あたたかくもつめたくもない風が一陣吹き抜けたような気がした。そのとき、確かにキイラには〈手〉が視えていた。うつくしく透き通るそれは、最早〈見えざる手〉ではなかった。そうだ、とキイラは思った。物心ついたときからずっとキイラに寄り添っていたのは、これだった。どうして忘れていたのだろう。キイラは水を掬い上げ、形成した。呆気ないほどにたやすかった。仮想の手のひらに触れる水の心地よい冷たささえ、キイラにははっきりと感じられた。やった! キイラは微笑もうとした。

「すごい!」

 突然嗄れた声が叫んだので、キイラたちは飛び上がった。〈手〉が瞬く間に霧散した。水が飛び散り、ドルムとキイラとを全身濡れ鼠にした。

 カドが昂奮気味に続けた。

「やったではないか」

 前髪から水を滴らせたドルムが狼狽えたようにきょろきょろと辺りを見回し、やがてキイラを凝視した。キイラは溜息を吐きながら指環を引っ張り出した。

「カド」

「やあ、めでたい」

 ドルムが唖然とした。彼はしばらくの間口を開けたり閉じたりしていたが、やがてやっとのことで尋ねた。

「それ、なにかの魔術?」

「操水の基本もできなかったわたしにそんな高度なことができると思う?」

 キイラはうんざりしながら言った。

「魔術じゃない。勿論、聞き間違いでもあなたの頭がいかれてるわけでもないわ。正真正銘指環が喋ってる」

 そして、キイラは仕方なしにカドのことを説明した。とはいえ、キイラ自身分からないことばかりなので、ほとんど説明できることはなかったのだが。

「それじゃあ」とドルムが顎を指で擦りながら言った。

「この間のあれは、やっぱり聞き違いじゃなかったんだな」

 キイラは頷いた。ドルムはまだ困惑しているようだったが、出し抜けに手を伸ばすと、キイラの指環に断りもなく触った。

「やめろ!」

 カドが喚いたが、ドルムは構わず一頻り光に透かしたり傾けたりして眺めた。今は深い夜の黒は影を潜め、蜂蜜色を帯びた陽光が彼の手のひらのなかできらめき、弾け、散らばる。それでも、キイラは不快ではなかった。彼の指環の扱いには、それでもある種の敬意が感じられたからだ。当のカドのほうはといえば、キイラの元に戻ってくる頃には怒り心頭といった具合だった。

「いいだろ、触るくらい」

「気安く触るんじゃない」

「指環のくせして気位だけは高い」

 ドルムは肩を竦め、キイラのほうに視線を寄越した。

「喋るところを除けば、いい指環じゃないか。まあ……レイガンが見逃したなら危険なものじゃあないんだろ」

  その口ぶりには確かに師としてのレイガンへの信頼が感じられたので、キイラはどこか居心地の悪いような気分になった。ドルムはふと首を傾げた。

「そんな立派な貴石をぶらさげてるもんだから、一瞬心臓石かと思ったよ」

「心臓石?」

「聞いてないのか?」

  キイラは首を横に振った。

「あの人は反対派だからな」

「心臓石とは?」

  カドが口を挟み、キイラの代わりに尋ねた。声色から察するに、まだ機嫌を損ねているらしい。

「ただの貴石だが……一言で言うなら、魔力の増幅器だ。見えざる力を選択的に透過し、あるいは反射し、循環させる。道具というよりも寧ろ、魔術師の新しい器官と呼んだほうがいいかもしれないな。体の一部のように、呪文によって深く結びつけられるものだから」

「もしかして、レイガンのつけているフィビュラがそう?」

「ああ。ユタの耳飾りや、ジストフィルドの指環もそうだ」

「あなたのそれも?」

  キイラがドルムの耳元に揺れるオリーブ石を指し示すと、彼は自分の指でその石に触れ、苦笑した。

「いいや。これは心臓石じゃない。だけど、多分そのうちにそうなるだろう。魔術師が石を選ぶのと同様に、石のほうも魔術師を選ぶ。肌身離さず身につけて、よく馴染んでいる石ほど心臓石に適する」

  ドルムは耳元から手を離し、軽く自分の胸を叩いた。

「僕も、本当はもっと早く心臓石を持つはずだったんだ。レイガンが渋ったせいで遅れてる」

「レイガンとなんの関係があるの?」

「心臓石と術者とを結びつける呪文は、その師にしか唱えられないのさ。そういうふうになっている。誤ったものに力が渡らないための、人為的な一種の防御機構だ。ただ……これはまだ非常に新しい術式なんだ。人と貴石とを繋ぎ合わせること自体、危険が伴う。術式が不完全だから、心臓石が暴走する事故も多い。そして、大抵の場合それはとても不幸な事故になる」

「不完全で危険なのに、どうして心臓石を持つの」

  怖気付いてキイラが言った。

「そんなに危険なら使わなければいい」

「その危うさに目を瞑っても使わずにはいられないような、強大な力が手に入るのさ」

  ドルムが口角を歪に引き上げた。

「今は情勢が悪い。フタル人があちこちで勢力を拡大しているし、新しい軍事技術に対抗するためには心臓石は不可欠だ。そのうちに、神殿つきの全員が持たなくてはならなくなるだろう……」

  暫く沈黙が流れたが、ドルムはすぐに取りなすように首を振った。そしてもう一度キイラの指環に目を留め、破顔した。先程引っ張り出したまま、服の下に仕舞うのを忘れていたのだった。

「しかし、カドか。〈光り輝くものカド〉……ぴったりの名前じゃないか。古アルスル語をいったいどこで習った?」

  不意に、猛烈な既視感がこみ上げた。キイラは突然自らの心に押し寄せた正体不明の感情に戸惑い、瞬きができなくなった。それは、先程も覚えた一種の懐かしさに似ていた。ドルムは微笑んだまま続ける。

「綺麗な石だ。きみの瞳の——」

 そのとき心がカチリと音を立て、キイラからすべての音が遠ざかった。ドルムが口を動かしてなにか言っていたが、聞こえなかった。

 そうか、と思った。

  キイラは、ずっと胸に痞えていた大きな塊のことを思い出した。腹から喉までを息苦しく埋めるこの塊の正体を、キイラは知らなかった。今ようやく、これは「悲しみ」だったのだと気づいた。あまりにぴったりと、そしてしっかりと「怒り」や「憎しみ」に覆われていたために、それと分からなかっただけだった。

 キイラは両腕の力を抜き、体の脇にぶらりと下ろした。そして、淡く息を吐いた。ドルムが不思議そうにキイラを見つめた。キイラも見つめ返した。ドルムの顔を。

 キイラはかすかに微笑んだあとで、すぐにその笑みを打ち消した。

「あなた……わたしの知ってる男の子に、少し似ている」

 ドルムが首を傾げ、戯けたように言った。

「そいつも僕みたいな美男子だったのか?」

「背ばっかりひょろひょろ高くって、喧嘩は弱いし、こまっしゃくれてて」

「おい……」

「でもいい子だった。フタル人に殺されて死んだわ」

 そうだ。死んだのだ、ユトーは。

  亡骸を見ていない。どこかでまだ生きているような気がしていた。ただ、今は見えるところにいないというだけで。でも、やっぱりユトーは死んだのだ。

「キイラ」

  やさしく声を掛けられ、キイラは我に返った。キイラは胸元に揺れる指環を右手で握りしめた。手の中でカドの側面、全き黒が瞬き、そのひえびえとした闇の色がキイラの精神をゆっくりと宥めた。少女は瞼の裏に漆黒の炎を見た。それは音もなく光もなく天鵞絨びろうどの暗闇の中に爆ぜ、ただその凍てつくような温度だけが心臓を焦がすのだった。キイラは溜息をまた一つ吐き、頤をあげると、ドルムを再び真正面から見つめた。誰にも似ていなかった。

「早く魔術師にならなくては」

  キイラは呟いた。

「今日はありがとう。これで、先に進めるわ」

  ドルムが戸惑ったように頷き、わずかに物言いたげな素振りをしたが、結局は「ああ」とだけ言った。

「なにか分からないことがあったらさ、また僕に言ってくれよ。僕もユタやジストには助けられたんだ」

「そうなの?」

「一人の人間だけから学ぶのは難しい。急いでいるならなおのことだ。きみ、四年掛けずに入団試験を受けるつもりなのだろ?」

  基礎の基礎で躓いていた今となっては到底不可能な、うぬぼれた考えのように思われて、キイラは顔を赤らめた。

「無理だと思う?」

「きみが無理だと思うなら無理だろうさ」

  ドルムがまたしてもレイガンのような言い方をした。

「やってみなくちゃあ分からない。だから、きみのやる気次第さ。ただ、きみがもし十七歳になるより前に魔術師になるんなら、こんなに急いで試験を受けることはなかったな。せっかくあの人の記録を塗り替えたってのにさ」

  零れ落ちていた髪の一房を——それは陽の光の下では金糸のようにも見えた——耳にかけ、ドルムはにやりとした。

「まあ、頑張りなよ」


  ドルムのひょろりとした背中を見送り、上級魔術師の区画へと踵を返しながら、キイラはふとカドへと呼びかけた。

「ねえ、カド、カド」

「なんだ」

  シャツと素肌の間で、指環は眠たげに応えた。

「あんた、そういえば久々に喋ったんじゃない。ここのところずっとおとなしかった……」

  出来なかったことが出来るようになった安堵から、常になく鷹揚な気分だった。キイラは感謝しながら言った。

「最近あまり喋らなかったのは、わたしに気を遣ってくれてたのね」

  返事はなかなか返ってこなかった。やがて、カドは歯切れ悪く言った。

「そういうわけではない。ときどき、意識が途切れることがある」

「なんだ」

  指環の配慮ではないと知り、キイラはがっかりした。

「でも、それって大丈夫なの」

「目覚めたばかりだから、こんなものだろう。他に同じような指環がいれば参考になるのだが」

「あんたみたいなのがそう幾つもあってたまるもんですか」

  軽口を叩きながらも、キイラは突然カドが喋らなくなったら寂しいだろうな、と思った。指環の正体がなんであれ、この風変わりな友人のことが好きになりつつあった。そこで、この指環にもう少し優しくしてやろうと決めた。




  早速成果をレイガンの前で披露すると、驚くべきことに彼はキイラを褒めた。

「上出来じゃないか」

  目を逸らしながら、レイガンは微笑した。数日間修行をすっぽかしたことに関してはなにも言わなかった。

「できるようになってみれば、簡単だったろう?」

  弟子になって以来皮肉げな笑顔以外を投げかけられた記憶がなかったので、キイラはぎょっとした。口をあんぐり開けていると、レイガンの視線はすぐにキイラの顔の上に戻ってきた。訝しげに片眉が持ち上がる。

「なんだ? その顔は」

「なんでもない」

  キイラは慌てて口を閉じた。

「子どもとはいえ、振る舞いには気を遣うべきだな。ユタを見習いたまえ」

  一言多い。キイラは思わず顔を顰めた。そのとき、キイラは彼のガウンからまだ新しい水晶煙草の匂いが漂ったことに気づいた。キイラはすんと鼻を鳴らした。少女の表情を見て、魔術師はきまり悪げに咳払いをした。溜息を吐き、懐から新しい水晶煙草を取り出す。レイガンは弁解するように言った。

「まあ……吸うのをやめない限りは、禁煙には何度でも挑戦できるということだ」

「その通りみたいね」

  興味なさげにそう返すと、キイラは作業台に頬杖をつき、新しい写本の一頁をめくったのだった。

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