外伝 ユーゴのお話
むかしむかし、ある森に囲まれた小さな村に一組の家族が住んでいました。
お父さんとお母さんそしてその子ども、やんちゃで可愛い一人息子のユーゴです。
お父さんは街に出稼ぎに行っているのでなかなか家には帰って来れません。
それというのもお母さんは肺の病の患っているのでお薬のお金がとてもかかります。しかもそのお薬は街にしか売っていないのです。お父さんはそのために頑張って働いています。
お父さんは忙しい仕事の合間にお医者さんの勉強もしています。お母さんの病気のことを少しでも多く知って、出来れば治す方法を見つけようと思っているのです。
お父さんは手紙のやりとりをしながら数か月に一度帰ってきてはユーゴにお土産を買ってきてくれます。そして街で起きたことを話して聞かせてくれました。
ユーゴは嬉しくてお父さんと夜更かししておしゃべりをしました。でもお父さんが街へ行ってしまう日はいつも泣いてしまいます。
ユーゴはお父さんが大好きです。会えなくなるのはとてもとても寂しく、涙がぽろぽろ出てしまいます。
お父さんはユーゴとお母さんをギュっと抱きしめ頭をポンポンとしました。最後にユーゴの目を見つめ「お母さんを頼むよ」と告げて、また街へと行ってしまいました。
お父さんもユーゴとお母さんと離れるのが辛いので別れ際はいつも何も言わずに街へと続く道を歩いて行ってしまいます。
その背中を見るのがユーゴは何よりつらいのです。
お母さんとユーゴは村で小さな畑の作物とお父さんの送ってくれるお金で暮らしています。村の人も気にかけて時々食べ物を持って来てくれます。
お母さんは病のせいで長い時間は働けませんが、休み休みゆっくりと畑を耕して家事をこなし、ユーゴを育てていました。
ユーゴはそんなお母さんを気遣ってたくさんお手伝いをします。
そのご褒美にお母さんの調子が良い日はたまに森に出掛けピクニックをしました。
ユーゴはそれが何よりの楽しみでした。
辛いこともあるけれどユーゴは幸せな毎日を過ごしていました。
そんな暮らしが数年続いたころです。お父さんの帰ってくる日がどんどん減っていました。
お仕事が忙しくなかなか帰って来られないのです。数か月に一度が半年に、そして一年に一度しか返って来れられなくなってしまいました。
お薬の値段も上がったそうです。お手紙の回数も減りました。
そんなある日、お父さんから手紙が届きました。一週間後に帰れそうだと書いてありました。
ユーゴは嬉しくて大喜びしました。ですがその日にお父さんは帰ってきませんでした。
その一週間後も、その次の週も帰ってきません。ついにお薬とお金も届かなくなってしまいました。
お父さんに何かあったのかもしれません。お母さんとユーゴはとても心配しました。
そのせいでお母さんは寝込む日が多くなりました。お薬ももう少ししかありません。
ユーゴは一生懸命お母さんを看病して家のことも一人でこなしていました。
けれどお母さんはついに寝たきりの状態になってしまいました。
村の人達はそんなユーゴを見かねて看病を手伝いに来たりご飯を食べさせたりしてくれました。けれどお母さんの具合はどんどん悪くなって行きました。
それでもお父さんは帰ってきません。
そしてお父さんの帰ってくる日から二か月が経ちました。お母さんはもう限界です。
ユーゴはお薬のことや病気を治す方法をたくさんの人に聞きました。でもこの村ではどうにもならないことばかりでした。
そんなとき旅商人がこんなことを口にしました
「竜の生き血は万能薬で飲めばどんな病も治るそうだ、この村の森の奥、そこには竜が居るそうじゃないか、そいつの生き血を持って帰ればお母さんの病気もきっと治る」
ユーゴはその言葉に耳を奪われました。
村人は「本気にするんじゃない。作り話さ、竜のことだって村に伝わる昔話だよ」とユーゴに言いました。でもユーゴにはもうそれにすがる以外方法がありません。
その日の夜、ユーゴは小さな肩掛けカバンにパンと水とナイフを一本、そして竜の血を入れるための小瓶を握りしめ森の奥へと向かいました。
そこには小さな祠が建っていました。
村人は「呪いの森」と呼びそこより先に踏み入ることを禁じていました。
そこには月の光すら届かない暗い暗い闇が蠢いています。
ユーゴは震える足でゆっくりとその森に入っていきました。ただ一つの希望の光を胸に抱いて・・・。
お母さんのために
ソロの出会い(1) @12-kokoro-24
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