男女の幼馴染の距離感は、なんだかとても切ないです。 読んでいる読者も、何だかはがゆい気持ちになります。 でも、この余韻に浸る感覚は、何だかとても心地よいです。
幼馴染の男女の一夜の物語です。何気ない会話から、彼女の愛が溢れており、ああ、リアリティがあるなと共感してしまいます。長年連れ添い、距離感が掴めず、あいまいな返事でしか彼に関わることができない彼女。でも、きっと二人が付き合うことになる未来が想定できないのは、短編だからなのか、それともすでに構築されてある関係からなのかはわかりません。もしよければ続きを、といいたくなる作品。声が募れば、と思いたくなる物語でした。
一人称でスラスラと描かれた文章は「私」の人となりをよく活かしている。実らないとは分かっているし、実らせようとは思わない。ただ側にいさせて――大人が楽しむビターな恋の味
サラサラと、幼馴染の口調と、空気で。そこにあるものは、かけがえのないもの。なのに、主人公も、彼も、お互いにそのことは口にせず……きっとそのまま、夜は明けていく。小さな頃から一緒に育った二人。誰よりも近いはずなのに……「運命の相手」には、ならない。なれるかもしれないのに……ならない。さらりとセンス良く描かれる、なんとも言えず切ない空気。甘くないのに、とっても甘い。大人の魅力に溢れた物語です。
眠れない夜に、幼馴染の男からLINEがきた。「いまから、そっち行く」と。気づかれない恋心を抱きつつ、横から見守る、そういう恋の形もあるのでしょう。短い文章の中で、切ない恋心の風景を切り取った短編小説です。