◇
夢だったんだろうか、目をこすりながら。
夢なんだと思う。
あのヒトが、旧式の飛行機に乗って私に会いに来てくれた夢。そんなことあり得るはずないのに。わざと謎かけのように和歌を詠んだのは、あの人が和歌の意味を理解するとは思わなかったから。
そのあの人が、硝子越しに何かを叫んでいた。唇の動きを追う。読唇術なんか分からない。でも必死なあの人の目が私を追いかけてくれる。
夢だとしても、私は幸せだった。
――きみが、すき。
そう彼が言ってくれた気がして。彼が追いかけてくれた気がして。ウツラウツラしながら、カバンの中を見る。小さな紅梅が一枝。薫りたつ甘さに抱かれながら。
夢でもいい、そう思った。あの人がこの梅の花を持たせてくれたのかもしれない。さり気ない、本当にさり気なく勇気をくれる。
きっと和歌の意味なんか気付かない、そう思っていた私を裏切って。あの人はいつも私の背中を押してくれる。誰とも話せなくて、勉強しかできなくて。過去の歴史にしか想いを馳せる事しかできなかった私に、こんなにもたくさんの勇気をくれる。
夢でもいい。
勝手な私の思い込みでいい。
待ってるだけじゃムリなのだ、私の気持ちが。
あなたに手を伸ばしたい、そう貪欲に貴方に素直になりすぎて。手をのばす事に躊躇なくて。手をのばしてなお、本音を晒せない臆病な私。
第一次世界大戦の撃墜王はきっと、愛する人の元に帰る為に全力を尽くしたんだろう。私も、フライングエースのように、真っ直ぐな言葉を告げたい。
待っているだけで、俯くのはもうイヤだ。
だから――待っていて。
帰ったら、真っ先にあなたにこの気持ちを伝えるから。
あなたに「好きだよ」って迷いなく伝えるから。
あなたの目に私しか映さないくらいに、素直を曝け出すから。
2週間が長い、と思う。あなたに会いたい、もうそう思っている。
帰ったら、まっすぐに言うから。待っていて。
フライングエースのように、まっすぐにまっすぐに気持ちを伝えるから。あなたを好きよ、って今度こそあなたからもらった勇気を全て使って言うから。
迷いなく、迷いなく、迷いなく――。
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