夢だったんだろうか、目をこすりながら。


 夢なんだと思う。


 あのヒトが、旧式の飛行機に乗って私に会いに来てくれた夢。そんなことあり得るはずないのに。わざと謎かけのように和歌を詠んだのは、あの人が和歌の意味を理解するとは思わなかったから。


 そのあの人が、硝子越しに何かを叫んでいた。唇の動きを追う。読唇術なんか分からない。でも必死なあの人の目が私を追いかけてくれる。


 夢だとしても、私は幸せだった。

 ――きみが、すき。


 そう彼が言ってくれた気がして。彼が追いかけてくれた気がして。ウツラウツラしながら、カバンの中を見る。小さな紅梅が一枝。薫りたつ甘さに抱かれながら。


 夢でもいい、そう思った。あの人がこの梅の花を持たせてくれたのかもしれない。さり気ない、本当にさり気なく勇気をくれる。


 きっと和歌の意味なんか気付かない、そう思っていた私を裏切って。あの人はいつも私の背中を押してくれる。誰とも話せなくて、勉強しかできなくて。過去の歴史にしか想いを馳せる事しかできなかった私に、こんなにもたくさんの勇気をくれる。


 夢でもいい。


 勝手な私の思い込みでいい。

 待ってるだけじゃムリなのだ、私の気持ちが。


 あなたに手を伸ばしたい、そう貪欲に貴方に素直になりすぎて。手をのばす事に躊躇なくて。手をのばしてなお、本音を晒せない臆病な私。


 第一次世界大戦の撃墜王はきっと、愛する人の元に帰る為に全力を尽くしたんだろう。私も、フライングエースのように、真っ直ぐな言葉を告げたい。


 待っているだけで、俯くのはもうイヤだ。


 だから――待っていて。


 帰ったら、真っ先にあなたにこの気持ちを伝えるから。

 あなたに「好きだよ」って迷いなく伝えるから。


 あなたの目に私しか映さないくらいに、素直を曝け出すから。


 2週間が長い、と思う。あなたに会いたい、もうそう思っている。

 帰ったら、まっすぐに言うから。待っていて。


 フライングエースのように、まっすぐにまっすぐに気持ちを伝えるから。あなたを好きよ、って今度こそあなたからもらった勇気を全て使って言うから。

 迷いなく、迷いなく、迷いなく――。

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