第18話 チーム校正 威力絶大 無事校了
「今回は絶対に第3稿までで抑えるぞ」と意気込んで始めた8月号原稿でしたが、
結果的には新記録樹立してしまいました。
実際のところ、最後の数回はわずかな文字数調整のためだけの改稿ではありましたが、それでも校了までにまさかこんなに回を重ねることになるとは思いませんでした。修行の道は遠い~。
今回は、海外在住の時期と推敲作業が重なることが事前に分かっていたので、ネットアクセスが不安定なことを想定して、日本に居る間に、かなり早めに初稿を送ってありました。
国によりネット事情は様々で、「日本のように自由にサクサク」が当たり前ではない国のほうが多いのですよね。
特に今回は事例を掲載するための各方面との調整や許可取りなどに、編集部にご尽力を頂きました。
その間、編集担当者は根気強くメール等でやりとりを続けてくれ、最後の最後まで気を抜くことなく、校了まで導いてくれました。
その中で特筆すべきは、チーム校正です。
編集者の校正の凄さは、すでにこのエッセイでも何度か書いていますが、今回のチーム校正には、舌を巻きました。
連載もお陰様で第5回目となりまして、優秀な担当編集者は、既に私の文章の意図するところを瞬時につかみ取ってくれます。
しかし、それが諸刃の剣にもなることを、今回、思い知りました。
最後の最後のチーム校正(校了の前日)になって、いくつもの修正案が送られてきたのです。
「え? なんでいまさら?」と正直思いました。
だって、既に10回近く、原稿を読み合って、これ以上ないというくらい
担当編集者と校正は済んでいたのです。
それに、これまでもチーム校正の段階では、出ても1~2つ程度の修正で済んでいました。それくらい、担当編集者が優秀なのだと思うのですが、しかし、そこに落とし穴がありました。
そうです。担当編集者は、私の文章と、私という人間に、慣れてきてしまっていたのです。
だから、「私の意図を汲み取って読んでしまう」癖(いわゆる忖度もその一つですね)が出始めていたのです。
例えば、今回のチーム校正では、時間に関する副詞を置く位置に関して、いくつか修正が出ました。
「現在、○○では~」という文章が、二つの事例にまたがる場合、「現在」をどこに置くかで読者の読みかたは変わります。
それを、私に慣れた編集者は、事情もある程度知っているので、無意識に私と同じ感覚でその時間を示す副詞を読み取っていたようです。
しかし、チーム校正で初めて私の原稿を読む別の編集者は、そこを見逃さず、しっかりと指摘してきました。「この現在という副詞は、どこに掛かるのが正しいのか?」と。
それ以外にも、唸るような指摘満載のメールを海外で受け取り、
私は、悲鳴とも歓声ともつかぬ声をあげていたのでした。
いやあ、参りました。ほんとに、降参でした。
完璧を目指して、一切手を抜かないチーム校正の凄さと、出版に掛ける情熱に胸が熱くなりました。
その一端に関わらせて頂ける経験は、やはり何ものにも変えがたいとの思いを新たにしたのでした。
そして、メール返信では、
「こういう意図でその文章を書いたけれども、ご指摘は納得のいくところであり、ご連絡通りの修正でお願いします」と添えたところ、
担当編集者から、チーム校正に至るまで気付けなくて申し訳ない、とお詫びの言葉が即座に却ってきました。
その姿勢もレスポンスの速さも見事で、ますます担当者のファンになったのでした。この信頼関係もきっと今後の執筆を支えてくれることでしょう。
来月も半分くらいは海外在住になりそうなので、次号の原稿は明日には着手しようと思います。
今年はこんな風にあっという間に過ぎて行きそうですが、幸せな修行人生だと思います。
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