第9話 効用は計り知れない「書き手」宣言

 副題に「鍵は~確定申告かも」と書いた理由は、その効用です。

 前話で、ついケチケチな癖が全面に出て、払い過ぎの税金が戻ってくることを強調してしまいましたが、それは「目に見える効果が大きい副産物の一つ」です。


 確定申告には白色と青色の二種類があり、それぞれの状況に応じて選べばOKですので、どうぞご自身のケースを検索などで調べてみて下さい。


 私の場合は長年白色で申告し、子育てが一段落した後は「開業届」を出して正式に青色申告に切り替えました。

 その最大の理由は、青色であれば控除額が大きいことと、赤字を5年間持ち越せることでした。(開業届を出すと個人事業主になるので、失業保険を受給している人は打ち切りになるのでご用心です。詳細はご自身で調べてね)


 子育てしながら自由業を続けていくには、儲けは度外視でしたから、赤字でない年はありませんでした。とにかく、現場に出て勘を養っておかないと、正式復帰した時に使い物にならないと思い、必死でした。(これはあくまで私のケースで、そんなことない、優秀な方はたくさんいますよ~)


 乳飲み子を抱えて、仕事も勉強も続けたいと考えていた私は、英語を使う仕事を選びました。もちろんそれ相応の修行は不可欠(週末は旦那さんに子どもを託して往復6時間掛けて通訳学校に通った時期もありました)でしたが、家庭での時間を確保しながら勉強もできるのが最大の利点でした。

 それから数年は通訳・翻訳業をメインに据えて働き、現在の本業は別にあります。しかしながら、どの世界でも英語が使えることは大いなる武器になりますので、現在子育て中の方々にはおススメです。英語の御蔭で重宝され、様々な分野でのVIPたちと直接お会いしてお話する機会にも恵まれとても勉強になりました。それは今でも随所に生きています。


 さて、話を戻して、仕事をする上では現場への交通費や準備のための資料代(書籍や辞書が不可欠、ちなみに医療用語辞典は7万円超・涙)、打合わせのための通信費や交通費、食事代など、常に出費が収入を遥かに超えていました。

 子どもの保育園のお迎えまでに都内から帰ってくるには特急を使うしかなかったり、駅からタクシーで駆け付けたりしたこともありました。痛い出費ですが、仕事も子育ても諦めたくないのだから必要経費と思うしかないと、腹を決めました。


 この、腹を決める、という点で、確定申告は非常に大きな効果を持ちます。

 まず、申告作業の際に、何をどれだけ何の目的で使っているかを、領収書等の分類で具体的に数字で示していくことになるのですが、これが、感覚的なものと全く違うのです。私が数字に弱いというのもあるかもしれませんが、はは。


 そして、申告の際は「職業」を明記するのですが、これが最大の効用だと思うのです。

 なぜなら、物書きになりたい、修行したい、と言いながら、実際に宣言することはなかったのです、その申告書以外では。


 言葉には力があります。

 言霊を信じています。

 この「職業」記入欄に初めて「著述業」と明記した時、私は自分の心に「もの書き魂」の錨を下すことができました。

 私にとって、それが最大の効用でした。


 現在は「著述業」を本業と併記しています。

 数年前に初めて本業の著作を世に送り出した年に「作家と書いていいんですよ」と編集者に勧められ、印税の申告もあるので、と併記し始めたのですが、あまりにその本が売れなさ過ぎて自信が持てないままでした。


 しかし、思い返してみると、「著述業」を職業欄に明記するようになって以降は、細々とではあるけれど、なんらかの書き仕事が毎年舞い込むようになりました。

 本人が心を決めると、不思議と周りからそうした運が降ってくるようです。


 今年は申告書の作成と月刊誌の連載開始が重なりました。

 申告書の職業欄に「著述業」を併記ながらも記入したとき、私は改めて「著述業」として生きる自分を強く意識しました。ネット申告になり自著ではなくなったのがちょっと残念でしたが、あはは。


 いまはネットで好きなように好きなことを書ける時代です。

 ここカクヨムも無料で自由に書けるし、さまざまなコンテストにも簡単に応募できます。

 わざわざ宣言しなくても、と思いがちですが、しかし、形のない思いにしっかりラベルを貼って自分に明示していくことは、時に大きな効果をもたらします。


 趣味で書きたい方も、本気で目指す方も、いろいろあると思いますが、

 もし目指す方向が決まっているのなら、ぜひ、宣言してみることをおススメします。そこから、いろんなものが変わっていくと思います。


 言ったもの勝ちです。

 運命も、運も縁も、言ったものには付いてくる、を実感する日々です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る