第6話 文章を生かす編集 凄腕よ 

 連載原稿の初稿は、いまのところ、提出期限の数日前には送っています。

 前述のように、他の執筆者に比べて私は編集者とやり取りしながら直す回数が多いので、できるだけ時間に余裕をもっていたいことと、編集者が締め切り前に切羽詰まって忙しくなってしまう前に時間を頂いた方が良いと思ってのことです。


 それが功を奏しているかどうかは分かりませんが、お陰様でいまのところは順調です。


 書籍化を経験した皆さんは既によくご存じと思いますが、私の数少ない経験からも、やはり出版や連載は編集者の力に負うところ大です。

 よく印税の話で、作者が1割程度しか貰えないはひどい、と言う方もありますが、これだけ手を掛けて編集してもらったらそれはもう当然と思いますし、編集者個人にはもっとあげてもいいんじゃないかと言いたくなります。

 それくらい、編集者は原稿の隅から隅まで気を配り、作者が伝えたいことが的確に読者に伝わるように精魂込めて原稿の仕上げをサポートしてくれます。


 あまり他の方のやり方は知らないので、ここは私流しか記述しませんが、とにかく一から十まで、私は編集者に全幅の信頼を置いて頼っています。


 初稿の原稿を送ると、ほぼ翌日にはコメント付きで返信があります。

 先方の編集者は、最初こそは非常に遠慮がちでしたが、私が本気で先方のサポートを求めていると分かった今は、具体的で建設的な改善コメント満載の返信となっております。


 そのコメントを受けて疑問点があれば遠慮なく私からも確認の電話をしたりメールをしたりしますが、大体の場合「やっぱりそう来たか」と思うものばかりなので、添削を受けた学生のような気分で改訂に取り掛かります。

 そう思うくらいなら最初からそこを直して送れよ!と自分に突っ込みつつ、でもやっぱり編集者がそう言ってくれるから腹を決めて取り掛かれるというのも正直なところです。


 それを返すとまた、編集者が気付いた点をコメントくれて、第3稿くらいからは完全に印刷と同じフォーマットに落としたもので完成原稿に向かって作業します。

(注:4月号はこのやり方でしたが、5月号以降は最初から掲載フォーマットに切り替えました)


 修正内容は、「てにをは」に始まり「この文章での主語がうまく述語に着地しない」とか、「この接続詞では、意図する関連性と意味が異なってしまわないか」などなど、よくまあここまで気付いてくれるなあと感嘆しきりです。


 また、雑誌紙面では、これまで通常の文面ではOKであった漢字かな使いではないケースも多々あり、「~していただく」は平仮名にするとか、常用漢字かどうかという判定以外にそれぞれの紙面媒体によって規定があるようで、毎回細かく修正を頂いております。


 お陰様で、現在は5月号の原稿まで済んでいるので、6月号以降の原稿はそうした修正を事前に自分の方で行ってから送れるようにしたいと思っています。


 編集者の力添えで仕上がった原稿は、初稿に比べると遥かに密度が濃く、構成も表現も過不足なく、満足の仕上がりです。

 もちろん、最終的な出来栄えは読者が判断することですが、少なくとも入稿の段階では、もうこれ以上はどこも直すとこはない!と胸を張って原稿を送り出せるのは、書き手にとって最高に幸せなことです。

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